劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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色々と問題が残ってますからね


軍関係の問題

 新居に戻ってきた達也を見て、真相を知っている亜夜子と夕歌は複雑そうな表情で出迎えた。本当なら自分もついていきたかったと思っていたのだろうが、真夜の決定に逆らおうとは思わなかったのだろう。

 

「達也さん、お疲れ様」

 

「夕歌さんも、俺に変わってこの場所の警備、お疲れさまです」

 

「大したこと無いわよ。一時期は物珍しさから屋敷に侵入しようとする輩がいたけども、今ではそんな人もいないし、達也さんが抱えていた問題の殆どが解決したから、マスコミ連中もここに押しかけてくる心配もないしね」

 

 

 表向きの達也の住所は前の家のままなので、普通のマスコミではここにたどり着くことは難しい。だが外国の息のかかったメディアや、他の十師族のお抱えの記者などが何度か達也に取材を試みようとこの場に来た事はあった。もちろん、事前に来ることは分かっていたので、まともに相手をする事なく丁重にお帰りいただいたのだが。

 

「ところで、何で私が達也さんの代理だったのかしら。藤林さんの方が適任だと思うんだけど」

 

「響子さんは軍の方でいろいろとありますから」

 

「もう正式に抜けられる事が決まっているのに、何の問題があるの?」

 

「その抜ける事が問題で、いろいろと押し付けられているらしいです。終わらなければ抜けないのではないかという、ある種の嫌がらせですね」

 

 

 夕歌は独立魔装大隊の内部事情までは詳しく知らないが、亜夜子は知っている。そして響子に嫌がらせをしているのが誰なのかも、だいたいは予想がついている。

 

「あの方は自分が力を持っていると勘違いしているのでしょうか? あの人のここ最近の実績の殆どは達也さんが関係しているというのに」

 

「部下の手柄が上司のものになるなんて珍しくないだろう。まして俺は、正規の軍人ではないからな」

 

「そうかもしれませんが、あの人の手柄になるのはおかしいと思います」

 

「それは私もそう思っているわ」

 

 

 亜夜子のセリフに答えたのは、夕歌でも達也でもなく第三者の声だ。亜夜子がそちらに身体ごと振り返ると、丁度話題に上がっていた響子が帰ってきたのだ。

 

「達也くん、お帰りなさい。今回の案件は大変だったみたいね」

 

「あら、藤林さんは達也さんが巳焼島に行っていた理由はご存じのようですね」

 

「えぇ。襲撃未遂があった事もね」

 

 

 響子の情報収集能力は亜夜子のそれよりもはるかに高い。いくら四葉家が隠そうとしても、軍内部から達也たちに対する襲撃計画が練られていたことを調べており、その襲撃場所が巳焼島ではない事も突き止めていた。

 

「それにしても、まだ彼らは達也くんの事を認めていなかったのね」

 

「自分たちに都合の悪い相手は排除するのが一番ですから、仕方無いのかもしれませんが」

 

「そもそも一度痛い目を見ているというのに、何でまた襲撃なんて考えたのでしょうか」

 

「あの時は俺にではなく、エリカたちにやられただけだと言い訳したのではないですか? あの時は警察の力もあったから負けただけで、魔法師として負けたわけではないとかなんとか」

 

「負け犬の遠吠えにしか聞こえないのですが」

 

 

 亜夜子の容赦のない感想に、響子と夕歌は堪えられず吹き出す。エリカは確かに実力者だが、軍属の魔法師が女子高生に負けたのは事実であり、そこに国家権力が加わっていたとしても、学生に負けたのには変わりはないのだ。そう思っていたところに亜夜子の感想が加わり、さすがの二人も堪えられなかったのかもしれない。

 

「そのお陰で十山家と交渉出来た事ですから、今回の襲撃未遂にも意味があったのかもしれませんね」

 

「その件ですが、さっそく十山家から情報が入ってきています」

 

「何か問題でも?」

 

「情報部の方ではないのですが、一部の幹部たちが自分たちの面目を丸つぶれにした達也さんの事を恨んでいるようでして、秘密工作員が巳焼島のエネルギープラントを破壊する計画が練られているようです。もちろんそんな事をすれば問題になるでしょうから、あくまでも事故として処理しようとしていると」

 

「自分たちがディオーネー計画の実体を見破れなかったからって、達也さんを恨むのはお門違いだと思うのだけど」

 

「役人って言うのは理屈で生きてないのよ。それが上層部となればね」

 

 

 響子の言葉に夕歌も亜夜子も納得してしまい、それ以上何も言えなくなってしまう。確かに今回の襲撃未遂事件も、情報部だけでなく外務省のお偉方の意思が加わって実行されたものなのだから。

 

「達也さん、国防軍の動きは黒羽家が監視しておりますので、達也さんは安心してエネルギープラントの完成に力を注いでください」

 

「あら、黒羽家というよりは亜夜子ちゃんと文弥君が、でしょ? 貢さんは別件で忙しいって聞いてるし、部下の方の殆ども出払ってるって」

 

「別件? まだ問題を抱えているの?」

 

「戦略級魔法師の扱い方を国防軍が計画していると聞きましたので。達也さんの自由を更に束縛されないよう、今から動いているのですよ」

 

「なるほどね」

 

 

 達也はあくまでも非公式戦略級魔法師だが、将輝が公式に戦略級魔法師に認定されてたので、国防軍としても戦略級魔法師の管理を徹底したいと考えている。そのついでに達也の力を縛り付けようと考えていても不思議ではないと、響子はすぐに納得出来たのだった。




自分たちが邪魔してるとは考えない国防軍……

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