劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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思いっきり風邪を引いてしまった……


図書室での一幕

 鈴音に説得された翌日には、学園中に達也が代表に選ばれた事は知られていた。本人はまだ引き受けた訳では無かったのだが、外堀から埋める作戦に出たのだろうと達也は諦めたのだった。

 

「なぁ達也、論文コンペで発表する内容ってどんなのだ?」

 

「あっ、アタシも気になる」

 

「重力制御魔法式熱核融合炉の技術的問題点とその解決策についてだ」

 

「全然分からねぇな……」

 

 

 達也から聞かされてもレオやエリカにはさっぱりだった。

 

「でも達也、何で急に代表に選ばれたんだい? この間代表三人が発表されたばっかじゃなかったっけ?」

 

「そうですよね。噂ですがサブの先輩が代表を辞退したって」

 

「その通りだ。サブの平河先輩の事情は知らないが、代表を務められるコンディションじゃないって事でな」

 

「まぁ学園側もインデックスに名を連ねる天才を無視出来ないって事だろうよ」

 

 

 レオがこぼしたセリフに、達也が嫌そうな顔をした。

 

「天才って言うのは止めろ」

 

「達也さんってホント『天才』って言われるの嫌いますよね」

 

「都合の良い言葉だからな。褒め言葉のようでそれ以上が無いって言われてるからな」

 

「褒められるのに慣れてねぇんだろ? 普段はバカにされてるからよ」

 

「でもレオよりは十分褒められてるでしょ? コイツは頑丈さだけだもん」

 

 

 エリカの言葉に頷きかけたが、何かが引っかかったのかレオの動きが止まった。

 

「今褒めたのか?」

 

「一応ね」

 

「でも達也、もう少し喜んだら? 九校戦と違って二位以下でも取り上げられるって前にも言ったよね?」

 

「俺はあくまでもサブだ。取り上げられてもさして注目される事も無いだろう。それに本来なら平河先輩が浴びるはずだった喝采だからな。俺には興味も無ければ関心も無い」

 

「冷めてるな」

 

 

 達也は放課後は論文コンペの準備の為に一緒に帰れないと告げ、そのまま図書室へ向かって行った。

 

「相変わらず自分の事になると鈍いわね。達也君が注目されない訳無いのに」

 

「エリカちゃん、ちょっとつまらなそうだね?」

 

「そんな事無いわよ? ただ達也君に奢ってもらえないとね~」

 

「この前奢ってもらったばっかじゃない」

 

「え? 何の話だ?」

 

「レオには関係無いわよ。女の子だけで出かけた時に達也君に奢ってもらっただけよ」

 

「女の子だけで出かけたのに、達也が居たの?」

 

 

 幹比古の質問に、エリカが少しつまらなさそうな雰囲気を増して答える。

 

「深雪を誘ったら漏れなく達也君が付いてくるのよ。てかアタシが誘ったんだけどね」

 

「何でまた……」

 

「だって最近達也君忙しそうで遊べてなかったし、それに急に予定が空いてむしゃくしゃしてたから達也君に奢ってもらおうと思って」

 

「ワリィ女だな」

 

 

 レオがこぼした言葉に、幹比古と美月も頷いて同意したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室でそんな話しが繰り広げられているとは知らずに、達也は図書館へと来ていた。今日は地下では無く地上での調べ物だという事で、達也は空いているスペースを探していると、見知った相手が前から手を振っていた。

 

「七草先輩、読書の秋ですか?」

 

 

 何となく振った内容に、真由美は不満そうに頬を膨らませて達也に迫ってきた。

 

「何でしょうか?」

 

「あのね達也君、私は受験生なんだけど?」

 

「はぁ……しかし七草先輩は推薦で決まってるのではないですか?」

 

「あれ? 達也君知らないの? 成績上位者は推薦を断るのが不文律なのよ」

 

「つまりボーダーラインギリギリの生徒を推薦で入れてしまおうって事ですか」

 

 

 達也の身もふたも無い言い方に、真由美は思わず噴出してしまった。達也としてはそれが普通の言い方だと思っていたのだが、如何やら真由美にはその言い方は思いつかなかったようで暫く腰を折って笑っていた。

 

「そういえば達也君はリンちゃんのお手伝いよね? 使うでしょ」

 

「えぇまぁ」

 

 

 本来は又貸しは禁止されているのだが、別に利用者が列を成している訳でも無いし、又貸しをしたからといってなんらかのペナルティーが科される訳でも無いのだ。

 

「じゃ、入りましょ」

 

 

 出てきたはずの真由美が何故自分と一緒に入るのか、達也には理解出来なかったが、ここで騒ぎを起こすのも面倒になりかねないと判断し大人しく真由美の入室を認めたのだった。

 

「それにしてもいきなりで大変でしょ?」

 

「そうですね。ですが俺にも利益のある話しでしたし」

 

「私じゃ手伝え無いしね。リンちゃんはこのテーマに人一倍強い思いを抱いてるから」

 

「そうなのですか?」

 

 

 達也としては相槌以上の意味を持たなかった言葉だったのだが、真由美は達也が興味を持ったと思い説明をし始める。

 

「リンちゃんは魔法師の社会的地位向上の為にもこのテーマを発表し、何時か本当に重力制御魔法式熱核融合炉を完成させたいんですって」

 

 

 真由美の説明を話し半分で聞いていた達也だったが、鈴音の目的の部分を聞いて目を見開いた。

 

「えっ、如何したの?」

 

「驚きました。まさかこんな近くに同じような思想を持っている人が居るとは」

 

「達也君も?」

 

「まぁ。ですがマイナーな考え方ですので他に居るとは思ってませんでしたが……そうなんですか、市原先輩も……」

 

 

 達也が少し感慨深そうに言うと、真由美はつまらなそうに頬を膨らませた。

 

「良かったわね、リンちゃんと話が合って。もしかして達也君ってリンちゃんのような女性が好みなの?」

 

「なんですかいきなり? それに俺と市原先輩とでは方法も考え方も違いますし、話が合うと言うよりは反発が多いと思うのですが」

 

「でもこんな綺麗なお姉さんと密室に二人きりなのに何もして来ないじゃないの。ゴメンね、お姉さん幼児体型で」

 

「別に七草先輩は幼児体型ではないのでは。それに俺は人前で何かをする趣味はありませんので」

 

 

 達也が視線でカメラの事を伝えると、真由美は少し頬を赤らめながら確認してきた。

 

「えっとそれじゃあ……カメラも人も居ないホテルとかだったら」

 

「そうですね。先輩の据え膳なら遠慮なく頂きますが」

 

「えっ……えぇ!?」

 

 

 達也のテキトーな受け答えは真由美にかなりの衝撃を与えていた。真由美自身も達也がそんな事を言ってくるとは思ってなくからかっていたのだが、相変わらず達也は感情が窺えないので本心なのか冗談なのかは真由美には判断出来なかった。

 だが身の危険は感じたのに個室から出て行こうとしなかったのは、少なからず自分は達也に意識してもらえてるのだと喜んでいたからだった。

 

「ちょっと狭いわね。三人は入れるはずなんだけど」

 

「それって先輩のご友人とですよね? 男が居れば違うと思いますよ」

 

「そうなのかもね。達也君大きいし」

 

 

 少し距離を開けていた真由美だったが、甘えるように達也の腕に絡みつくのだった。一方の達也は、振りほどくのも面倒だったので、そのまま真由美を腕に絡ませたまま調べ物を続けたのだった。




ホントなら小百合が先なのですが、この作品は真由美とのイチャイチャの後で登場させます。
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