劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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不安要素は多そうだ……


リーナの不安要素

 七月十二日、金曜日の朝。自分の部屋で目を覚ましたリーナは、朝食を摂る為に深雪の部屋に向かう準備をする。本来なら部屋にキッチンもあるのだから自分で用意するのが正解なのだが、リーナが自分で用意するとまた爆発が起こるのではないかと不安視されているので、状況が落ち着くまでリーナの食事は深雪かミアのどちらかが用意することにされてしまっている。

 リーナとしてはかなり不本意ではあるが、下手に爆発をさせてこのビルに注目を集めるのは避けるべきだと言われ、渋々納得した。

 

「私だって頻繁に爆発事件を起こしてるわけじゃないんだけどな」

 

 

 巳焼島での爆発は、ストレスがたまって魔法の加減が出来なかった所為であり、料理中に爆発を起こしたのは数回しかない。

 

「リーナ、準備出来ましたか? 今日から正式に学校に通うわけですから、ちゃんと起きてください」

 

「起きてるわよ、ミア」

 

 

 自分が起きられないのではないかと心配したのか、隣室で寝泊まりしているはずのミアがリーナの部屋へと顔を出す。リーナは「自分は小学生か」と心の中でツッコミをしながらミアに顔を見せる。

 

「おはようございます、リーナ。深雪さんがお呼びです」

 

「さすが深雪。準備が早いわね」

 

 

 自分で用意しようとすれば確実にこれ以上の時間がかかると分かっているので、リーナは割と本心で深雪の手際の良さを褒め、ミアと共に深雪の部屋へ向かう。

 

「ハイ、深雪」

 

「おはよう、リーナ。ミアさんもおはようございます」

 

「おはようございます、深雪さん」

 

 

 深雪と挨拶を交わしてから、リーナはこの部屋に達也の気配が無いことに気が付き、キョロキョロと視線を彷徨わせた。

 

「どうかしたの?」

 

「いや、達也の気配が無いから、何処に行ったのかなって」

 

「達也様ならこのビルの地下にあるトレーニング施設にいるわよ。ここ最近はそこで身体を動かしてからお食事にしてるから」

 

「トレーニング施設ね……私も使って良いのかしら?」

 

「別に構わないけど、巳焼島の施設みたいに爆破しないでね?」

 

「しないわよ!? というか、魔法を使わないでどうやって爆発させるのよ!」

 

 

 このビルにある施設はあくまでも魔法無しで出来るトレーニングをメインとした物であり、さすがのリーナも触っただけで機械を爆発させる事は無い。一瞬冗談を言われたのかとも思ったが、リーナが見る限り深雪の表情は本気そのものだった。

 

「そもそも深雪は私のことを爆発魔か何かと思ってるわけ?」

 

「巳焼島での生活を見た限りでは、そう思われても不思議ではないと思うのだけど?」

 

「あれだって私の意思で起こしたわけじゃないわよ! いくら暇つぶしが出来ても、達也がいないだけでストレスがたまるんだから仕方ないじゃない! というか、深雪だってあそこで生活したら分かるわよ」

 

「確かに達也様に会えないのはストレスがたまるかもしれないけども、だからといって施設を爆破していい理由にはならないと思うのだけど? 修理費だってバカにならないのだから」

 

「それ、真夜にも言われたわよ……だから最後の方は大人しくしてたでしょ?」

 

「最初から大人しくしてなさいよ。いくら帰化してUSNA軍と関係ないってこっちが思ってても、向こうは貴女のことを目の敵にしてるんだから、目立ったら面倒になるって分からなかったの?」

 

「あれは向こうの言い掛かりよ! 私は早々に軍を抜けて日本で生活したかったのに、何時まで経っても出国許可が下りずに、挙句に軍はパラサイトに占拠され殺されそうになるし!」

 

 

 スターズ内で何が起こったのか知っているので、深雪はこれ以上リーナを苛めることはしなかった。そもそも深雪にリーナを苛めている自覚は無かったし、そんな意図も無かったのだが。

 

「はぁ……なんだか大きな声を出したら疲れちゃったわ」

 

「あら、そんなので大丈夫なの? リーナはこれから私に変装魔法を掛けて登校して、放課後までしっかりと授業に参加しなきゃいけないのに」

 

「それは深雪もでしょ? まぁ、変装魔法を使うのは私だけどさ」

 

「私は慣れているから大丈夫だけど、リーナは以前交換留学して以降、授業に参加なんてしてなかったのだから、ちょっと心配ね」

 

「平気よ! 授業に参加していなかった分、任務で鍛えてたんだから」

 

「でも達也様の婚約者になってからは、日本で生活してたわけでしょ? 任務もないし、トレーニングもあまりしてなかったって報告を受けてるのだけど?」

 

「そ、そんな事ないわよ? というか、誰がそんな報告をしたのよ!?」

 

 

 四葉の人間に監視されていたことに気付いていなかったようで、リーナは本気で驚いた様子だ。そんなリーナを見て深雪は「これが護衛で大丈夫なのかしら?」という疑問を懐いたが、本家が大丈夫だと判断したのだから――もっと言えば達也が判断したのだから、深雪がそれに不満を言う事はない。ただ少し不安になってしまうのも無理は無かった。

 

「とりあえずご飯にしましょう。達也もそのうち戻ってくるんでしょう? 学校に行かなくてもいいってなってても、食事は摂らなきゃいけないんだし」

 

「もうすぐいらっしゃるから、それまで我慢してちょうだい」

 

 

 小さな子に言い聞かせるような口調になった深雪に、リーナは唇を尖らして無言の抗議をしたのだった。




逆にリーナの何処を信用すればいいんだろうか……
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