劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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今回は二科生の初日です。


授業初日 二科視点

 深雪と校門で別れた達也は、自分のクラスである1-Eを目指した。二科である事を気にしている生徒ばかりかと思っていたが、昨日あった四人は特に気にしてる様子もなかったので、気にするだけ無駄だと分かってるんだと達也は解釈した。

 

「司波君、おはよー!」

 

 

 クラスに入ると真っ先にエリカが挨拶をしてきた。そんなに目立つ顔立ちではないと思っている達也は、良く気付いたものだと思っていたが、クラスに居た女子全員が達也の事を見ていたので当然エリカも気付くのだ。

 

「おはよう千葉さん。柴田さんはまた隣だな、よろしく」

 

「よろしくお願いします」

 

「何か私だけ仲間外れな気がするなー」

 

 

 口調から冗談だと分かった達也は、この流れに乗ることにした。

 

「千葉さんを仲間外れにするのは難しそうだ」

 

「何よそれ~!」

 

 

 達也の冗談に、笑いながら抗議をするエリカ。周りは初対面なのに随分と仲の良い二人だと思っていたが、真横に居た美月はかなり焦った。

 

「二人共、喧嘩は駄目ですよ!?」

 

「ん?」

 

「ちょっと美月? 冗談だからね?」

 

「え……も、もちろん分かってますよ?」

 

 

 しどろもどろになった美月を、達也もエリカも生暖かい目で見ていた。

 

「何ですかその目は~!」

 

「美月が怒った~」

 

 

 楽しそうにしている二人を横目に、達也は再び生暖かい目を向けていた……訳では無く、端末にIDを差し込んでいた。

 

「ん? 司波君、何してるの?」

 

「受講登録を済ませておこうと思ってね」

 

 

 そう言ってもの凄い速さでキーボードオンリーで受講登録をしている達也を、エリカも美月もあんぐりと口を開けて見ていた。

 達也の操作方法に関心してたのは何も二人だけではなかった。

 

「スゲー!」

 

「ん?」

 

「あ!」

 

 

 達也の前に座っていた男子が、達也の打ち込みの速さと珍しいキーボードオンリーのやり方に感嘆の声を漏らしたのだ。

 

「別に見られて問題のある事では無いんだが、あまりジッと見られるのは気分の良いものじゃないな」

 

「おっとすまねぇな。今時キーボードオンリーなんて珍しいからな」

 

「そうか? 慣れるとこっちの方が楽なんだ」

 

「そうなのか……おっと自己紹介がまだだったな。西城レオンハルトだ。親父がハーフでお袋がクォーターなんでな。レオって呼んでくれ」

 

「司波達也だ。俺の事も達也で良い」

 

 

 今の時代、レオのような外国の血が混じってる魔法師はそう珍しくない。能力開発の為に様々な血を混ぜ合わせるのは当然だと思ってる集団だって居るくらいなのだから。

 その後エリカとレオがちょっとしたイザコザを起こしたのだが、達也と美月に諌めらて二人は渋々席に着いたのだった。

 オリエンテーション開始直前、ドアが開き女性が入ってきた。二科生に担任は居ないのに、この女性は何をしにきたのだろうか……クラス中がそんな疑念を抱いてる中、女性が話し始めた。

 

「皆さん入学おめでとうございます。当校の総合カウンセラーを務めています、小野遥です」

 

 

 随分と明るい女性だが、何か裏がありそうな雰囲気だと、達也は思っていた。簡単に彼女を信じるのは危険かもしれないと……

 

「それでは皆さんの端末にガイダンスを送るので、その後で履修登録をしてください。既に終わっている生徒は退出しても構いませんが、ガイダンス開始後の退出は認められませんので、希望者は今のうちに退出してください」

 

 

 そう言われて、達也は外にでて一息入れようかとも思ったが、目立つ事はしたく無いのでその場に止まる事にした。

 達也が止まると決めたと同時に、誰かが立ち上がる気配を感じ取った。

 

「(やはり目立つな)」

 

 

 見られてる事を気にもせず出て行った男子生徒を、達也はぼんやりと眺めていた。そしてそんな達也の姿を、ジッと見ている人間が居るのだった……

 

「(見られてる……終わってるのに出て行かないからか?)」

 

 

 カウンセラーの小野遥に見られているのに気付いた達也は、彼女の意図を測りかねていた。まさか新入生に色目を使ってる訳では無いだろうし、彼女は何をしたかったのだろうと、達也は終了時間まで考えていたのだった。

 

「達也、昼までどうするよ?」

 

 

 登録を済ませた後は、昼まで自由にしていて良いのだ。見学に行こうが端末から資料を読み漁っても別に誰も咎めない……咎める人が居ないと言った方が正確だが。

 

「特に決めてないんだが…付き合おう」

 

「それじゃあ工房見学に行こうぜ!」

 

「工房?」

 

 

 レオの見た目からならば、工房より闘技場の方が似合ってるように思えた達也は、つい言葉を漏らした。

 

「硬化魔法は武器術との組み合わせで力を発揮するからな」

 

「なるほど」

 

 

 さっき聞いた得意魔法を最大限に生かす為に、武器の手入れの仕方などを学びたいのだろうと達也は納得した。

 

「あの、それでしたらご一緒しても良いですか?」

 

「柴田さんも工房に?」

 

「私、魔工師志望なので……」

 

「俺もだ」

 

「司波君って魔工師志望なの!? ちょっと意外ね」

 

 

 エリカが割り込んできて、レオは面白くない顔をしている。

 

「おめぇは如何見ても闘技場だろ。さっさと行ったら如何だ?」

 

「アンタに言われたく無いわよ!」

 

 

 再びにらみ合った二人を見て、美月はオロオロとしてしまい、泣きそうな目で達也に縋っている。

 

「いい加減にしとけ。柴田さんが困ってるぞ」

 

「え! い、いえ…私は別に……」

 

 

 無意識だったのか、達也に縋っていた事を自覚して美月は顔を赤らめた。

 

「工房に行くなら早く行こう」

 

 

 美月の反応を完全に無視して、達也は廊下に出た。

 

「おい達也! 待てっての!」

 

「待ってよ!」

 

 

 慌てて達也の後に続いたレオとエリカだったが、反応したのが同時だったのが気に食わないようで、移動中もにらみ合っていた。

 

「如何して二人はこんなに仲が悪いのでしょうか?」

 

「さぁな。でも、仲が悪い訳では無いと思うぞ」

 

「そうだと良いのですが……」

 

 

 美月は二人を心配そうに見ていたが、工房に着いたらそんな事を忘れて熱心に見学していたのだった。

 そして昼、食堂で昼食を摂っていた時に問題が発生したのだった。




レオと遥が初登場。次回は一科と二科がもめます

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