劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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ある意味一番仲がいいのかもしれない


修次へのお礼

 新居での用事を済ませ、巳焼島に戻ろうと思っていた達也だったが、ふとある事を思い出して摩利に声をかける。

 

「そういえば渡辺先輩」

 

「なんだ?」

 

「千葉修次さんに伝言をお願いしたいのですが」

 

「シュウに? いったい何だ?」

 

 

 摩利は達也が修次に何の用事があるのかさっぱり見当がつかない。それ程面識もないし、自分がエリカと話す時に間に入ってもらう時に、修次がいることはあるが、その時に二人が会話を交わすことはほとんどないのに、伝言など何があったのかと疑ってしまうのも仕方がないだろう。

 

「いえ、千葉修次さんのお陰で、光宣の計画を狂わせることができたので、そのお礼をと思いまして」

 

「シュウが九島光宣の計画を狂わせた? だがあたしたちは九島光宣と直接会っていないどころか、青木ヶ原樹海に雲隠れしていたヤツを見つけることすらできなかったのだが?」

 

「確かに光宣と直接やり合ったわけではないでしょうが、千葉修次さんが呂剛虎を早めに斃してくれたお陰で、光宣の計画は破綻したのです」

 

「それってどういう……」

 

 

 黙って話を聞いていた真由美が口を挿むと、摩利が窘めるような視線を真由美に向ける。今は黙って達也の話を聞いていた方が早く進むと考えていた摩利にとって、真由美の合いの手は邪魔でしかないのだ。

 

「光宣の計画では、呂剛虎が密入国した隙に樹海から別の隠れ家に移動するつもりだったようですが、俺の目がそちらに向く前に呂剛虎が斃されてしまったので、多少強引でも逃げ出すしかできなくなったようです。まぁ、結局は日本から逃げられてしまい、水波もつれされられてしまったのですが」

 

「だがそれは、達也君の力不足という訳ではないのだろう? 様々な邪魔が入った結果だと、この間真由美から聞いたが」

 

「たとえ邪魔が入ったからといっても、俺に力がなかったから水波に危険な思いをさせたことには変わりはありません」

 

「君は真面目だな。だが君一人が原因という訳ではないのだから、あまり気にし過ぎるのはかえって桜井の精神に負担を掛けることにならないか?」

 

「そのようなこと、水波の前で言うつもりはありません。もちろん、深雪の前でも」

 

 

 それはつまり、自分には本音で語っても問題ないと判断されていることであると理解し、摩利は笑みを浮かべる。特別な感情を懐いている相手では無いが、達也のそういう物事をはっきりいう部分は、摩利にとっては好印象だ。

 摩利の笑みを見て、達也は自分が意図したことを理解してもらえたと認識したが、真由美は別の意図があるのではないかと邪推し、摩利を睨みつける。

 

「なんだ、いったい」

 

「摩利……もしかして達也くんに乗り換えようなんて思ってないでしょうね?」

 

「そんなこと考えるか! というか、ようやくシュウと一緒になれるという時に、何で乗り換えようだなんて思うんだ!」

 

「だって摩利、修次さんにしか見せないような笑みを達也くんに向けてたから」

 

「はっ? 別に特別意識して笑みを浮かべていたわけではないんだが……というか、あたしは達也君のことを異性として好きなわけではなく、人間として好意が持てると思っただけだ」

 

「人間として? 言っちゃ悪いけど、達也くんの人間性が好きって、相当趣味悪いと思うわよ?」

 

 

 婚約者として言うべきではないのかもしれないが、真由美からすれば達也の人間性は好感が持てる部分など無い。むしろ嫌悪感を抱くなら理解できるが、達也の人間性の何処に好感が持てるのかが気になったのだ。

 

「しっかりと人を見て、言って良いことと悪いことをしっかりと判断し、本音を隠さなくてもいい相手には本音で話してくれる部分とか」

 

「まぁ、そういう部分は理解できるけど」

 

 

 真由美にも達也のそういう部分があるのは理解できるのだが、そこに惹かれるような感じはしない。

 

「とりあえず達也君がシュウに感謝していることは分かった。しっかりと伝えておく」

 

「よろしくお願いします。それでは、俺はこれで」

 

 

 摩利に一礼してから新居を後にした達也を見送る真由美だが、自分に一言もなかったことが不満だったのか、達也の姿が見えなくなってから摩利を睨みつける。

 

「な、なんだ?」

 

「達也くんと摩利って、ある意味で仲良しよね。お互い遠慮がないというか、本音で話せてるというか」

 

「まぁ、達也君相手に隠し事をする必要がないからな。向こうもあたしに隠し事する必要がないと思っているんじゃないか? まぁ、日常生活に支障が出ることは隠すんだろうがな」

 

「そりゃそうでしょ。本当なら摩利に達也くんの魔法を話すことはいけないのかもしれないんだけども、摩利なら問題ないって達也くんが判断したんだし」

 

「あたしだって他人に言ってはいけないことくらい理解している。達也くんの魔法は、それくらい世界を変えてしまう恐れがあるんだからな」

 

「まぁ、達也くん以外にもいろいろと世界を変えそうな魔法を持ってる子はいるんだけどね」

 

 

 深雪の実力も知っている真由美と摩利は、揃って苦笑いを浮かべる。やはり四葉家は敵に回してはいけないと、改めて心に刻んだ瞬間だった。




真由美が終始嫉妬してる
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