劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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好奇心は作中一かもしれませんしね


車中での会話

 結局三人は達也にお茶とケーキをご馳走になり、幹比古は自分と美月の分は払うと申し出たのだが、世界で有名な研究者でもある達也と、一介の高校生でしかない幹比古の収入を考えれば、達也が断るのは当然の流れである。

 

「すみません達也さん。私までご馳走になってしまって……」

 

「気にするな。そもそも俺がいなかったら幹比古が美月の分は払っていただろうから、美月はそこまで気にする必要は無いと思うが」

 

「そう言うなら、柴田さんの分くらいは受け取ってよ」

 

「浮いたお茶代で美月に何か買ってやればいいだろ。食べ物じゃなくて、形に残る何かをプレゼントすれば美月も喜ぶだろうし」

 

「達也くんでもそう言うことは分かるんだ。まったく、ミキはそんなことも考えられないなんて彼氏失格じゃないの?」

 

「そ、そんなことエリカに関係ないだろ! というか、何時までついてくるんだよ!」

 

「だって、駅がこっちなんだから仕方ないでしょ? まさか、ここから歩いて帰れとか言うんじゃないでしょうね」

 

 

 エリカが幹比古の脛を睨みながら強い語気でそう迫ると、達也がエリカの肩を掴んで首を左右に振る。

 

「新居による用事があるから、エリカはこっちだ。幹比古と会うから車で来たんだ」

 

「そう言うことだよ。僕は達也がエリカを送っていくんだと思ってたから、店を出てすぐにこっちにきたエリカが不思議だっただけだよ」

 

「達也くん、何時の間に免許を?」

 

「授業免除になって暇だったから、春先には既に取得していたが」

 

「そういえばマスコミの襲撃の際に車で駆けつけてきてたわね……最近会える機会がすっかり減ってきてたから忘れてたわ……」

 

「そういう訳だから、エリカはこっちだ。幹比古、美月、また今度な」

 

「うん。達也も気を付けて」

 

「ご馳走様でした」

 

 

 片手をあげて挨拶する幹比古とと、丁寧に一礼する美月を見送って、達也は駐車場に向かうべく歩を進め、エリカもその後に続く。

 

「まさかこんなところで達也くんに会えるなんて思ってなかったから、ちょっと得した気分。ケーキも奢ってもらったし」

 

「エリカなら問題ないだろうとは思うが、あまり食べ過ぎると身体によくないんじゃないか?」

 

「食べた分運動するから問題ないわよ。それに、甘いものは別腹っていうでしょ?」

 

 

 いくら剣士とはいえエリカは現役の高校生だ。それくらいの年代の女子は甘いものだけは満腹でも食べられるということは、現代になっても変わらない。達也もそのことは知っているので、それ以上は何も言わずに運転席に乗り込み、助手席にエリカを招き入れる。

 

「これってエアカーってやつじゃないの?」

 

「さすがにエアカーで来るわけにはいかないからな。普通の汎用四輪車だ」

 

「なーんだ残念。一回で良いからエアカーに乗って空のドライブを楽しみたかったのに」

 

「機会があればな」

 

「約束だからね!」

 

 

 実はエリカ、深雪から達也とエアカーで空のドライブをした話を聞いてからというもの、一度自分もしてみたいと思っているのだ。だがエリカでは飛行魔法を使いこなすことはできないし、そもそもエアカーを手に入れることすら難しいので、達也が車で来たと聞いて、少し期待していたのだった。

 

「ところで、新居に用事って何さ? あたしたちの顔を見に来たってわけじゃないんでしょ?」

 

「本格的に巳焼島で生活するようになるから、必要なものを取りに行くだけだ。いろいろと邪魔が入った所為で、数ヶ月単位は向こうに腰を据えた方が良い状況になってしまったからな」

 

「まったく。どうして達也くんの邪魔をしたがる人が大勢いるんだろうね。達也くんの研究は世界中の人間に有益だって分かりそうなものなのに」

 

「認めたくない人間がいるというだけの話だろ。そもそも俺の魔法を脅威と判断して、地球上から追いやろうとするくらいだから、ちょっとやそっとのことで認めるわけにはいかないだけなのかもしれないが」

 

「そもそも達也くんに敵対しなければ、その魔法を喰らう心配だってないんじゃないの? 達也くんだって、無差別に戦略級魔法を放つつもりは無いんでしょう?」

 

「当たり前だ。そもそも国が責任を負うという確約がないのに、戦略級魔法を放つつもりは無い」

 

「それを発表できれば問題ないのかもしれないけど、達也くんが戦略級魔法師だって発表されてないから仕方ないのか。一条君みたいに公にできれば良いのかもしれないけど、そんなことしたら達也くんの自由が更になくなっちゃうしね」

 

「そもそも日本政府は『灼熱のハロウィン』を引き起こした魔法は日本の魔法師ではないと言っているわけだからな。今更日本の魔法師だと発表するわけにはいかないんだろうな。幾ら公然の秘密扱いになっているとはいえ」

 

「まったく面倒な話よね。まぁ、たまにしか会えないから、会えた時に嬉しいのかもしれないけど」

 

 

 自分で言っていて恥ずかしくなったのか、エリカは頬を赤らめて視線を逸らす。達也はそのことに気づかないふりをして正面を見詰める。自動運転なのでハンドルを握る必要は無いのだが、エリカが見られたくないと思っているのを感じ取り、あえて正面を見詰めているのだった。




自爆率も高めですし
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