劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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IF甘ルート 深雪の願い

 水波もUSNAから帰って来たので、深雪の心はとりあえずの平穏を取り戻していた。表向きにはまだ達也は入院していることになっているので、せわしなくあちこちに出向くこともないので、部屋で深雪と二人きりの時間が多くなってきている。水波も気を利かせているのか、食事の時間以外は自分の部屋から出てくることもないので、深雪にとってはこの上ない幸せな時間と言えるだろう。

 

「達也様、お身体の加減は如何でしょうか? いくら達也様が他の魔法師とは違う御力をお持ちだからといって、USNAから休憩なしで飛行魔法を行使し続ければ、後々何かしらの影響が出てきても不思議ではありませんし」

 

「あの程度なら問題ないと、なんども言っているんだがな……」

 

「達也様がそう仰るのなら信じたいのですが、深雪は心配なのです」

 

「まいったな……」

 

 

 上目遣いですり寄ってくる深雪を、達也はどう扱えば良いのか分からずに困惑している。無碍に扱うはずはもちろんないと深雪も分かっていてやっているから性質が悪いのだが、達也の方もそれを分かっていながら強く押し返せないのだから、ある意味どっちもどっちだ。

 

「そういえば深雪、リーナはどうしたんだ?」

 

「今後の身の振り方について話し合う必要があるということで、叔母様と通話中だと思われます」

 

「USNA軍内の膿を出し切るには、総隊長であるリーナが出向く必要がある、か」

 

「表向きにはまだリーナがスターズ総隊長であることには違いないですからね」

 

「だが気持ちは既にスターズから離れているわけだし、今更リーナが出向いたからといって、何か変わるとも思えないが」

 

「そうですね」

 

 

 せっかくの二人きりの時間だというのに、達也は他の女子のことを考えているので、深雪は内心面白くない思いを懐いているが、それを達也に覚らせないように表情を取り繕っている。だが達也相手に隠し事ができるわけもなく、達也は申し訳なさそうな表情で深雪を見詰めてくる。

 

「い、如何なさいましたか?」

 

「深雪に不快な思いをさせてしまったようだね。USNAのことはリーナたちに任せておこう」

 

「わ、私は別に何も……いえ、達也様がリーナのことを気に掛けているようでしたので、少し拗ねていました」

 

「すまなかった」

 

「達也様が悪いわけではありません! 私が我慢しきれなかったのが悪いのであって」

 

 

 達也に頭を下げられ、深雪は慌てて立ち上がり達也に頭を下げる。深雪にとって達也に謝らせるなどあって良いことではなく、たとえ自分を気遣ってくれての行動だとしても受け入れられなかったのだ。

 

「深雪に嫌な思いをさせてしまったようだし、今日は深雪の言うことを何でも聞こう」

 

「な、何でも……ですか?」

 

「あぁ。俺にできる限りのことはするつもりだ」

 

「達也様のできる限りのこと……」

 

 

 事前に宣言しているように、達也が正式に高校を卒業するまではそういった行為はできないと分かっているので、深雪もそこは要求しない。だが頭の中で想像してしまうのは、恋する乙女としては仕方がなかった。顔が真っ赤になった深雪を心配そうに見つめる達也。その視線でますます顔を赤らめる深雪ではあったが、すぐに要望を告げた。

 

「では今日一日、深雪のことだけを考えていてください。他の婚約者のことは一旦忘れて、深雪だけを見ていてくださいませ」

 

「それだけでいいのか?」

 

「達也様が宣言しているように、女として抱いてもらうことはできませんので、それ以外で今深雪がしてもらいたいことは、達也様の視線、思考を全て深雪に向けてもらうことですので」

 

「本当なら深雪の一番の願いを聞いてあげたいんだが、深雪一人だけを特別扱いするわけにもいかないからね」

 

「達也様の事情を考えれば仕方がないことですから、そこは望みません」

 

 

 本当は達也に抱いてもらいたい深雪ではあったが、達也が言うように自分だけを抱くなんてことはできない。達也も深雪もそのことを口外するつもりなど微塵もないのだが、深雪は態度に出やすい。そしてその変化をほのかや雫、エリカが見逃すとは思えないので、そこから襤褸が出てしまう可能性が高いのだ。だから深雪もそこまでは望まず、達也が今できる範囲での我が儘を告げたのだ。

 達也の方も、今は外からの襲撃も心配ないので、今日一日視線の全てを深雪に向けても問題は無いと考えたようで、外に向けていた視線の全てを深雪に向ける。

 

「達也様の視線を感じます」

 

「肉眼も『精霊の眼』の視線も全て深雪に向けたからね」

 

「自分で言っておいてなんですが、水波ちゃんのことをよろしいのでしょうか? いつ容態が悪化するか分からない状態ですし……」

 

「水波も近くにいるんだし、具合が悪くなれば自分で言えるだろう。それとも深雪は、水波に視線を向けておいた方が良いというのかい? 深雪が言うのであれば、そうするが」

 

「……いえ、今日一日はこのままで」

 

「分かった。全ては深雪の思い通りに」

 

 

 深雪が望めば世界だって滅ぼすのに躊躇いを懐かない達也だ。もし深雪が本気で望めば抱いてくれたかもしれないが、深雪は達也の視線の全てを浴びるだけで満足し、その日一日は家事の全てを水波に任せたのだった。




これが甘いかは分かりませんが
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