劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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ひねくれもの同士


IFルート エリカの要求

 深雪からだいたいの事情は聞いていたし、それが有効な手段だということも理解できたが、それでもエリカは達也に一言言ってやりたい気持ちが抑えられなかった。達也が百山に事情を説明しにきたのを何処からか聞きつけたエリカは、授業を抜け出して校長室の前で待ち伏せ、達也を捕まえて食堂に連れ込んだ。

 

「エリカ、授業中じゃないのか? まぁ、気配があったからなにか用なのだろうとは思っていたが」

 

「相変わらず達也くんの気配察知は凄いわね――じゃなくって!」

 

 

 危うく話を逸らされそうになったと、エリカはさらに怒気を高める。達也としては話を逸らす意図など無かったのだが、エリカはそうは取らなかったようだ。

 

「達也くんの取った作戦が有効手だってことはあたしだって理解できたし、敵の目を欺くにはまず味方からっていうのも分かる。でも、あんなことをするんだったらせめて前以て教えておいてよね! 達也くんの魔法を知ってるあたしたちですら衝撃だったんだから、達也くんの魔法を知らない人間が見たら研究は中止だって思われちゃうわよ?」

 

「俺がいなくてもある程度の成果は残せるくらいには研究は進んでいるし、命に別状はないとすぐに発表したから、出資者たちが離れていく心配もなかったはずだが」

 

「そうかもしれないけど! こういうのは理屈じゃないのよ!」

 

 

 感情論を述べても達也に意味を成さないとエリカも理解しているのだが、それでも感情を抑えることができなかったようだ。

 

「あたしや雫、ほのかたちは深雪から直接説明を聞けたけど、新居で生活してる他の婚約者たちは、暫くお通夜ムードだったんだからね!」

 

「そもそも新居には亜夜子や夕歌さんがいるんだから、その二人から事情を聞きだすこともできたんじゃないのか? わざわざ北山家にヘリを出してもらわなくても、事情説明なら出来ただろうに」

 

「あたしたちは深雪に事情を聞きに行ったんじゃなくて、達也くんのお見舞いに行ったのよ! まぁ、その見舞われるべき達也くんは病院にいなかったから、無駄足だって言われればそうかもしれないけど」

 

「それは悪かったな」

 

 

 一切悪びれた様子も無い達也の態度に、エリカは怒りを通り越して呆れてしまう。達也相手に感情を爆発させても意味は無いと散々思い知らされていたのを思い出し、思わずため息を吐いてしまう。

 

「達也くんに万が一があったら、婚約者以外にもショックを受ける人間がいるって分かってるの? 美月なんて顔面蒼白だったんだから」

 

「そいつは悪いことをしたな。美月には今度直接謝るとしよう」

 

「そもそも達也くんなら、水波がUSNAに連れ出される前に取り戻せたんじゃないの? 何かあったわけ?」

 

「まぁ、いろいろな要因が重なって、日本から出ていく前に水波を取り戻すことができなかったんだ。だからあんなことをしてまでUSNAに出向いたわけなんだが」

 

「それで、光宣は斃したの?」

 

「いや、光宣は何処かに逃げたようだ。水波は動かせる状態ではなかったから置いていかれたようだが」

 

「何それ。水波のことを救いたくて連れ出したくせに、結局水波の容態を悪化させた挙句に捨てていったってこと? 光宣のイメージからして、そんなことをする感じじゃなかったのにね。やっぱりパラサイトになったのが影響してるの?」

 

「さぁな。ただ水波に危害を加えようとしたUSNAの魔法師を片っ端から消し去っていたのを見ると、一応水波のことは心配していたようだがな」

 

「消し去る? 達也くんの魔法みたいに?」

 

 

 エリカは達也の『分解』を直接みたことはないが、原理は説明されているので理解している。だから消し去ると表現されると、達也の魔法みたいに光宣も人体を原子レベルで分解できるのかと勘違いしたようだ。

 

「光宣が使った魔法は恐らく『人体発火』だ。俺の魔法とは違い、分子レベルで人体を破壊する魔法だが、死体も残らない点から見れば、消し去ったと表現した方が良いだろう」

 

「……さすがのあたしでも、そんな話を聞かされて平然としてられないんだけど?」

 

「悪かった」

 

 

 千葉の剣士と呼ばれるエリカでも、死体も残らない殺戮話を聞かされて平然としていられるわけがない。女子高生として死体があれば平気というのも考え物だが、その点は実家のことを考えれば仕方ないだろう。

 

「兎に角、達也くんと光宣の戦いはまだ終わってないってことで良いのね?」

 

「俺に光宣と敵対する意思はない。パラサイトとしての本能に負けて、無関係の人間を巻き込まない限りだがな」

 

「達也くんに無くても、向こうにはあるわけでしょう? 水波を手放したとはいえ、それで諦めるくらいならパラサイトになんてならなかっただろうし」

 

「だろうな」

 

「というわけで、あたしも光宣と戦うから」

 

「エリカも? だがエリカはパラサイトに対して有効な手段を持ち合わせていないだろう? それに、パラサイトの宿主にされかねないからな」

 

「その時は、達也くんが助けてくれるでしょう?」

 

 

 最初から自分任せなのかとため息を吐きそうになったが、エリカは達也がリーナにした「おまじない」を自分にもしろと言っていると理解し、達也はエリカの額に口づけをして、パラサイトに対抗する手段を授けたのだった。




そんなことしなくても、達也はパラサイトを斃せる域に達したからな……
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