劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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分かりにくそうで分かりやすい


IFルート 真由美の心の裡

 達也が水波を連れて巳焼島に戻ってきたと連絡を受け、真由美は表向きは達也のお見舞いということで巳焼島にヘリを飛ばした。関係者以外立ち入ることが難しい状態の巳焼島に出向けたのは、達也の婚約者という立場と同じ十師族の直系ということが影響している。

 真由美が巳焼島に出向くということを聞いて、雫やほのかたちも付き添いたいと申し出ていたのだが、大勢で出向けば怪しまれると真由美に言われ、今回は真由美一人だ。

 

「お待ちしておりました、七草様」

 

「貴方……確か達也くんの執事とか言ってた――」

 

「花菱兵庫と申します。本日は我が主の為にご足労戴き、誠にありがとうございます。本来であれば直接達也様がいる部屋へ案内するべきなのでしょうが、マスコミの目を考えてまずは病院へ足を運んでいただき、そこで深雪様と合流していただきます」

 

「深雪さんと?」

 

「はい。深雪様と合流し、旧知の中である七草様を深雪様が生活されている部屋へご案内するという名目で居住エリアへと向かい、そこで達也様が隠れている部屋へ案内させていただきます」

 

「結構面倒ね……まぁ、それだけ達也くんが世間から注目されているってことなんでしょうけども」

 

 

 トーラス・シルバーの片割れであり恒星炉プラントプロジェクトの総責任者、それに加えて新戦略級魔法の共同開発者なのだから、話題になることこの上ない人物なのだ。少しでも情報を得られれば、それはスクープとして扱われるので、新聞記者だけでなく映像関係者や軍関係者が達也の動向を監視しているのも仕方がないと、真由美は現状をそう理解している。

 

「それじゃあ、病院までお願い出来るかしら」

 

「かしこまりました」

 

 

 兵庫は真由美の従者では無いが、達也の婚約者ということで兵庫にとっても目上の相手となる。客人に対する態度とは違った対応で真由美を車に案内し、病院までの道のりを無言で進んだ。その後達也の部屋までの道のりでは深雪も加わったので無言ではなかったが、それでも兵庫は一言も発することはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マスコミの目を気にしなくてもいいエリアまでやって来たので、真由美は深雪に現状を尋ねる。

 

「達也くんはUSNAで一暴れして水波さんを連れ戻してきたって認識で良いのかしら?」

 

「達也様は暴れたくてUSNAに出向いたわけではありません。任務として必要だったから基地を襲撃しただけであって、達也様の意思ではございませんので」

 

「その点も詳しく達也くんに聞くわ。それじゃあ深雪さん、案内ありがとう」

 

 

 真由美は最初から達也と一対一で話すつもりだったので、深雪に先んじてお礼を言って部屋の中へ入る。入ってすぐ達也の姿を確認して、真由美は小走りで駆け寄って頬を膨らませて抗議する態で話しかけた。

 

「達也くん! お姉さんに心配をかけるなんて、随分と偉くなったじゃないの」

 

「先輩は俺の魔法のことは知っていましたよね? 何故そのような心配を懐いたのか、具体的に説明してもらえますか?」

 

「えっ? そりゃその……さすがの達也くんでも間に合わなかったのかもって思って……」

 

 

 自分が詰問するつもりが、思わぬ切り返しを喰らって早速出鼻を挫かれ、真由美の勢いは見る見るうちにしぼんでいった。

 

「ご心配をお掛けした結果になったのは申し訳なく思いますが、俺の魔法を知っている先輩や他の婚約者たちは、そこまで衝撃を受けるとは思っていなかったものでして」

 

「達也くんが襲われたってだけならそれだけ驚かなかったかもしれないけど、深雪さんの泣き顔を見たからね……まさかあれも四葉家の計算の内だったなんて思わなかったし……深雪さんの演技力の高さに騙されたって感じかしら」

 

「深雪は演技ではなく本気で泣いていたと言っていましたがね」

 

「まぁ、深雪さんだしね」

 

 

 いくら達也が無事だと分かっていても、世間に見せる為にある程度の傷は残していたのだ。その姿を見ただけで深雪には十分すぎる衝撃だっただろうし、世間の目を同情の方向へ持っていくには十分な破壊力があった。

 

「あの映像も四葉家の息のかかった人間が流したんですってね。ウチもマスコミ関係には強いパイプがあるけども、あそこまではしないわよ?」

 

「反魔法師集団を煽って自分の利益に繋げようとした人の娘の言葉とは思えませんね」

 

「あんな狸親父のことなんてどうでも良いのよ! というか、無事なら無事って連絡くらいしなさいよね! それくらいできたでしょう?」

 

「電波は傍受される可能性もありましたので、外部と連絡するのは避けるべきでしたからね。それに、あの後すぐ俺はUSNAへ向けて出発しましたので」

 

「そうだったわね。とにかく、今後は達也くんに何かあっても心配しないからね」

 

 

 頬を膨らませてそっぽを向く真由美の姿は、年上というよりは年下の雰囲気が醸し出ているが、達也は感情を伺わせない視線を真由美に向けるだけだった。

 

「な、なによ……」

 

「いえ、そんなことを言いながら、先輩のことですから心配してくれるんだろうなと思っただけです」

 

「なっ!?」

 

 

 自分の心の裡を見透かされたような気がして、真由美は顔を真っ赤にする。そんな反応を見て、達也は珍しく笑い、真由美に抗議されるのだった。




達也相手に隠し事は不可能だろうな……
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