劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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普段冷静だからこそ、偶に暴走する


IFルート 逸る鈴音

 いくらパフォーマンスと分かっていても、何時本当に達也のプロジェクトに対する破壊工作が行われるかという不安に駆られ、鈴音は大学を辞める覚悟で達也のプロジェクトに参加させて欲しいと申し出る。だが達也は首を縦に振らなかった。

 

「鈴音さんの覚悟は分かりましたし、手伝っていただけるというのはありがたいことです。ですが、大学を辞めてまでする必要はあるのでしょうか?」

 

「達也さんのプロジェクトには、それだけの価値があると思っています。また、魔法師ではない人からも注目されているということもあって、そのことを面白くないと思う輩が大勢います。何時本当に達也さんに対するテロ行為が起こるか分からない以上、すぐにでも手助けをしたいと思うのはおかしなことでしょうか?」

 

 

 鈴音は達也の魔法のことを失念しているわけではない。自分が手伝ったところで、大した力にならないということも理解している。だがそれでも、達也の研究に少しでも貢献できたら、少しでも早くプロジェクトが軌道に乗る手助けができたらという一心から申し出ている。

 達也も鈴音の気持ちは理解できるし、申し出はありがたいと本心から思っているが、鈴音の研究テーマと自分のテーマは、似ているようで違うと知っているので、自分のテーマを投げ出してまでこちらを手伝うことが果たして良いことなのだろうかという疑問が彼の中にあるのだ。

 

「鈴音さんが大学で学んでいる知識は、このプロジェクトにも確かに有益でしょう。ですが、鈴音さん本来のテーマとこのプロジェクトとでは、若干の違いがあります。鈴音さんはご自身のテーマを突き詰めることは止めてしまわれるのですか?」

 

「確かに私と達也さんとではアプローチの方法から何まで違うかもしれませんが、最終的な目的は魔法師の兵器としての運命からの解放です。そこにつながるのであれば、自分のテーマに拘る必要はないと思います。ましてや、私一人では何時まで経ってもそこにたどり着けないでしょうし」

 

「以前にも言いましたが、急いで参加する必要は無いんです。大学を卒業してからでも十分に役に立てるでしょうし」

 

「今回はパフォーマンスでしたが、国防軍内に不穏な空気が流れているのは、達也さんだって知っているはずです。軍との関係が薄い私ですら知っているのですから、達也さんならもっと具体的なことも分かっているのでしょう。ですから、すぐにでも達也さんの力になりたいと思ったんです。これはその場の思い付きで言っているのではなく、しっかりと考えての提案なのです」

 

「鈴音さんなら、その場の思い付きということではないと分かっていますし、じっくりと考えての結果だと言うことも分かっています。ですが、後二年後ではいけないのですか? 国防軍内の一部が企んでいることは、その内頓挫することになるので、鈴音さんが心配していることは起こりませんので」

 

 

 達也が断定口調でそう告げると、鈴音は何かを言おうとして言葉を探す。だが情報が少ないからか、何も言えずに俯いた。

 

「鈴音さんの気持ちは、本当にありがたいと思いますし、もう大学に未練など無いというのであれば、今すぐにでも参加してもらっても構いません。ですが、鈴音さんにはまだ学びたいことがあるのではありませんか?」

 

「学びたいこと……」

 

 

 魔法大学で学べることなど、達也に聞けば大抵のことは教えてもらえるだろうと鈴音は思っている。だが自分の我が儘に達也の貴重な時間を使わせることなど許されるはずがない。ただでさえ余計な横槍の所為で当初よりも遅れているというのに、これ以上の遅れは後々大きなダメージとなって帰ってくるとも限らない。鈴音はそれが理解できるので、達也に聞くという選択などできるはずがなかった。

 

「……分かりました。卒業まで後二年半、しっかりと魔法大学で学び、より達也さんの役に立てるだけの知識を得てからプロジェクトに参加させていただきます」

 

「そうですか。本格的に参加するのではなく、バイト感覚ならすぐにでも参加してもらっても構いませんので。それ相応の給金もお支払いしますので」

 

「私はそれ程お金を使う方ではありませんし、生活費なども掛からないのでバイト代は必要ありません。ですが、お手伝いさせていただけるのなら、時間が取れれば参加させていただきたいと思います」

 

 

 一研究者として、達也のプロジェクトに参加できるというのは非常に魅力的なことであり、夏休みの間などの短い期間ならば、大学を辞める必要なく達也の手助けができる。鈴音はすぐに今後のスケジュール調整を行い、巳焼島へ向かう準備をしようと心に決めた。

 

「意気込んでいるところ申し訳ないのですが、まだ巳焼島の安全が確保されたわけではないので、参加するなら八月の中旬以降にしてもらえないでしょうか」

 

「……達也さんが言うのでしたら、本当に何かあるのでしょう。分かりました、何時でも行ける準備だけはしておきますので」

 

「はい、お待ちしています」

 

 

 もし戦闘にでもなれば、自分はあまり役に立てないということを自覚しているので、鈴音は素直に引き下がり、達也から許可が出る日まで自分のテーマに必要だった知識をおさらいし、何時でも手伝いができるように知識を磨くのだった。




真由美よりは確実に役に立ちそうだ
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