劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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すっかり忘れてたキャラ


IFデートルート 紗耶香編

 防衛大学のカリキュラムの都合でデートの順番を決めるくじに参加できず、またそれぞれの日程では参加できなかった紗耶香は、個人で達也とのデートができないか真由美に相談し、事情を鑑みて深雪に相談してみるとの答えを貰ったのが数日前。そして今日、真由美から部屋に来てほしいと言われ、紗耶香は不安と期待の半々なのを隠して真由美の部屋に入る。

 

「そんなに緊張しなくても、何も無いわよ?」

 

 

 紗耶香の表情が強張っているのを見て、真由美は『十師族直系の娘の部屋』に緊張していると勘違いをした。ただでさえあまり交流の無かった先輩後輩の間柄なので、気軽に部屋を尋ねるなどということもなく、七草家も十師族の中では力を持っている部類だ。部屋に何かしらあってもおかしくないと思われているのかもしれないと勘違いしたのだろう。

 

「早速だけど、先ほど深雪さんから電話をもらいました」

 

「はい……」

 

「深雪さんの本心としては認めたくないのかもしれないけども、壬生さんも婚約者であり、達也くんとデートする権利はあるということで、今回は認めてもらえました」

 

「良かった……」

 

「まぁ本当なら、深雪さんの許可なんて必要ないのだけども、あの子もいろいろと規格外の魔力の持ち主だからね……もし壬生さん個人が達也くんとデートしたなんて、後から知ったらどうなるか……」

 

 

 深雪の魔法がどのような結果をもたらすかは、紗耶香も重々知っている。自分個人の感情で動いて、達也の研究に支障が出る可能性があるから、真由美を介して深雪にお伺いを立てたのだから。

 

「日程は今週の土曜日。そこしか達也くんの都合がつかないらしいわ」

 

「その日で問題ありません。私も今週末は予定がありませんでしたので」

 

 

 過密なスケジュールで動いているのは達也だけではなく、防衛大学に通っている紗耶香も忙しい日々を送っているのだ。今回のデートは、奇跡的に予定があったということで実現できたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 待ち合わせの十分前に到着した紗耶香だったが、既に達也が店の中でコーヒーを飲んでいる姿を見付け、慌てて店内に入る。

 

「ゴメンなさい、遅れたかしら」

 

「いえ、まだ時間前です。俺は近くに用事があったので早めに着いただけですから、気にしなくても大丈夫ですよ」

 

「用事?」

 

「例の件で呼び出されたり、質問を受けたりと、まぁいろいろです」

 

「達也くんも大変ね……まぁ、抜刀隊の皆さんが見つけられなかった九島光宣を見つけて、挙句の果てに国外に追いやった達也くんの所為で、防衛大学のカリキュラムはますます過密になってるんだけどね」

 

「それは申し訳ないことをしました」

 

「ううん、達也くんが悪いんじゃなくて、国防軍の人たちが嫉妬したのが原因だから」

 

 

 その嫉妬の原因は自分ではないかと達也は思ったが、そんなことを指摘しても意味はない。そもそも達也には国防軍と争ったなどという覚えはないので、嫉妬されてもどうすることもできないのだから。

 

「でもそのお陰で、こうして二人きりのデートができるわけだけども」

 

「わざわざ七草先輩を介して深雪に尋ねなくても良かったのではありませんか?」

 

「いやいや、私の気持ちだけで達也くんの時間をもらうのも、それが深雪さんにバレて達也くんの研究施設を凍らせるのも悪いし」

 

「深雪は先輩が知っている時よりも魔力の制御が出来るようになっていますし、凍らせられたとしても問題はありませんし」

 

「あの魔法のことは知っているけど、達也くんだって無傷で使えるわけじゃないんだし……」

 

「神経の通わない物なら問題ありません。それに、深雪だって俺の邪魔をする結果につながることをするとも思いませんし」

 

「相変わらず深雪さんのことに関してはよく理解してるのね。七草先輩や渡辺先輩が『重度のシスコン』って揶揄してたのが良く分かるわ」

 

 

 達也もそのことは知っているので、今更気にした様子も無い。そもそも達也個人の考えとして、家族のことを心配することがシスコンと評されることなのだろうかと思っているくらいである。

 

「渡辺先輩と言えば、達也くんが間に入らないとエリカちゃんとまともに会話できないんだっけ? 学校ではあれだけ後輩女子たちから羨望の眼差しを浴びていた人とは思えないわね」

 

「婚約者の修次さんも、エリカに頭が上がらない部分があるようだしな。渡辺先輩曰く、魔法無しではエリカに勝てる気がしないらしいし」

 

「エリカちゃん、純粋な剣道の腕は相当だからね。以前本気で勧誘しようかとも思ったくらいだし」

 

 

 実家があの『千葉家』なのだから、エリカが剣道・剣術に精通しているのは当然である。だから学校レベルの部活ではエリカが身に着けることはないので剣道部には入らなかったのだと、後に紗耶香は本人から聞いている。その時はムカッとしたが、実際エリカと手合わせをしたことがある――ある意味真剣勝負だが――紗耶香は、何も反論出来なかったのだ。

 

「さて、それじゃあ行きましょうか。せっかく二人きりでのデートなんだし、今日は目一杯楽しませてもらおうかしら」

 

「意気込むのは良いですが、俺に世間一般のデートを期待されても困るんですけどね」

 

「まぁ、達也くんだしね。とりあえず、私は二人でいられるならそれで満足だから、テキトーにぶらぶらしましょうか」

 

 

 せっかくの二人きりだというのに、紗耶香は高望みはしなかった。それをしたところで、達也が応えてくれることはないと分かっていたから。




達也に世間一般は無理だな……
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