劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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リクエストがあったのでやってみました。多分違うんだろうけど……


番外編・誕生! ショタ達也 その1

 その日深雪は八雲の電話で目を覚ました。どうやら達也が朝の稽古に顔を見せなかったようなのだ。

 

「お兄様、深雪です。起きていらっしゃいますか?」

 

 

 兄が自分より遅く目覚めるなど、深雪の記憶の中でも数えるほどしかない。それこそ自分が頑張って早起きした時以外では皆無といってもいいくらいに。

 

「失礼します」

 

 

 まだ寝ているのかもしれない。先日の大亜連合の侵略軍を退けた疲れが出たのかもしれない。達也が普通の人間だったのなら深雪もこんな事を考えたのだろうが、達也は疲れで寝過ごす事も無ければ、疲れが長期間残るような体質でも無い。

 

「お兄様?」

 

 

 ベッドには確かに膨らみが見られた。だが普段の達也がどの様に寝ているのかは深雪は知らなかったが、明らかにその膨らみは小さかった。

 

「……え?」

 

 

 毛布をめくり中を確かめた深雪は、絶句する以外の行動はとれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 早朝から話したいとは思わない相手だが、深雪は誰かに相談しなければと思い四葉本家へと連絡を入れた。

 

『どうしたの、深雪さん。こんな時間に貴女から連絡をくれるなんて』

 

 

 葉山執事に緊急と伝え真夜に繋いでもらった。普段では考えられないほど慌てていた深雪を見て、葉山執事もただ事ではないと察したのだ。

 

「申し訳ありません、叔母様。ですが、緊急事態なのです」

 

『ホント、どうしたの? たっくんがいなくなったの?』

 

「いえ……あっ、ある意味ではいなくなったのかもしれませんが……」

 

 

 ハッキリとしない深雪の態度に、真夜も首を傾げる。今まで深雪と話す機会は多くあったが、ここ迄慌てふためく深雪を、真夜は見た事が無かったのだ。

 

「えっと……驚かないでくださいね」

 

『分かったわ』

 

 

 深雪の前置きにそう答えるしかなかった。

 

『……え?』

 

「このような事態でして……」

 

 

 画面に映り込んだ男の子を見て、真夜も今朝の深雪よろしく絶句してしまった。

 

『……その子、もしかしてたっくん?』

 

「はい……間違いなくお兄様です」

 

「? ねぇお姉ちゃん、この人は誰?」

 

『……ホントにたっくんなの?』

 

 

 見た目は間違いなく幼少期の達也だったが、中身はそのころの達也では無かった。彼は子供のころからガーディアンとしての教育を受けていた為、こんなしゃべり方はした事が無い。

 

「この方は私とお兄様の叔母様、本家のご当主様ですよ」

 

「? 本家? ご当主様?」

 

『深雪さん、詳しく説明なさい』

 

 

 画面越しとはいえ、真夜はショタ達也に萌えていた。だが口調はあくまでも何時も通り、威厳あるものを使っていた。

 

「実は、今朝八雲先生からお兄様が何時もの時間になっても顔を出さないと連絡をもらいまして、不審に思いお兄様の部屋に入り確かめたらこのような姿に……」

 

 

 深雪は真夜と会話をしている間も、ショタ達也を抱きしめ頭を撫でていた。何時も自分が達也にしてもらってる事を、深雪は今達也にしているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深雪との通信を終え、真夜は葉山を部屋に呼びいれた。

 

「葉山さん、たっくんの事、如何思います?」

 

「そうですね……一度調べた方が良いかと思いますが。しかし青木たちが何と言うか……」

 

「そうね……じゃあ葉山さん、この件は貴方に任せます。原因を早急に究明なさい」

 

「畏まりました。では今度達也殿を屋敷にお招きしますので」

 

「お願いね。それから、呼んだ時は私も立ち会いますので」

 

 

 一目でも、肉眼でショタ達也を見たいのを隠せてない真夜の態度に、葉山は恭しく一礼をしながら慈愛の目を真夜に向けていた。

 

「何かしら?」

 

「いえ、達也殿もあのように過ごせた可能性はあったのか、と思いまして」

 

「……無理よ。生まれる前から私がたっくんの未来を狭めてたんだから」

 

 

 その事を知っているのはごく一部の人間のみ。もちろん葉山はその事を知っている。

 

「では、私はこれで」

 

「くれぐれも青木さんたちには内緒で。もちろん分家の皆さんにも」

 

「承知しました」

 

 

 もう一度恭しく一礼し、葉山は部屋を辞した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いくら小さくなってしまったとはいえ、今日は平日で学校も普通にある。深雪はどうするか悩んだが、結局達也を学校へ連れていく事にしたのだった。

 

「おはよ、深雪。……あれ? 達也君は?」

 

 

 駅から学校までの道、今日は珍しく早かったエリカに声をかけられた。

 

「おはよう、エリカ……お兄様ならここにいるわよ」

 

「何処? ……ひょっとしてこの子?」

 

 

 深雪の影に隠れている少年にエリカは視線を向けた。

 

「ええ……理由は分からないけど、今朝起きたらお兄様が……」

 

「へー、達也君って子供のころはこんな感じだったんだー」

 

「ッ!」

 

 

 エリカが達也に手を伸ばすと、肩を震わせて反応する達也。その姿にエリカの悪戯心が刺激された。

 

「ねぇ深雪」

 

「何かしら?」

 

「授業とか如何するの? 達也君は二科生だしアタシが面倒みてあげようか?」

 

「……大丈夫かしら。今のお兄様をエリカに任せるのは心配しかないのだけど」

 

「大丈夫よ! ほら、達也君。怖くないからお姉さんと行きましょ?」

 

「ほんと?」

 

 

 怯えながら深雪の後から顔をのぞかせるショタ達也。悪戯しようと考えていたエリカだったが、その姿を見て完全に打ち抜かれた。

 

「(か、可愛い……ちょっと前までのアタシを殴りたい)」

 

「エリカ?」

 

 

 急に悶えだしたエリカに、深雪は先ほどまでとは違う不安を覚えていた。

 

「あら、深雪さんに千葉さん……この男の子は?」

 

「さ、七草先輩……」

 

「何処となく達也君に似てるような……あれ? そういえば達也君は?」

 

 

 タイミング良く(悪く?)二人の許にやってきた真由美。そのせいで達也は再び深雪の影に隠れた。

 

「実は、この子がお兄様なんです」

 

「はい? 如何いう事かしら?」

 

「実は……」

 

 

 真由美に真夜にした説明をしている間、エリカはショタ達也の事を眺めていた。達也の方も警戒心を持ちながらも、エリカに近づいていく。

 

「――と、言う訳でして……」

 

「そうなんだ……」

 

「!?」

 

 

 急に抱きあげられ、達也は足をじたばたとさせる。何が起こったのかと言うと……

 

「七草先輩!? 今の話聞いてました!?」

 

「聞いてたわよ。素直な達也君なんて、かなりレアじゃない!」

 

 

 真由美が背後から達也を抱え上げたのだ。

 

「とりあえず今日は生徒会室で面倒を見ます。三年生は既に授業もまばらだしね」

 

「……くれぐれもお兄様にトラウマを植えつけないでくださいね」

 

 

 一抹どころではない不安を感じながらも、教室に放り込むよりはマシだと考え、達也の相手を真由美に任せた深雪。本心では自分が一日中甲斐甲斐しく世話をしたかったのだがそれは不可能。それならば不特定多数に見られるよりはマシな生徒会室に連れて行ってもらおうという考えに至ったのだった。




あと数回やったらIFに入ります。

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