劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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基本的に達也のセリフはありません。お好きなセリフを脳内で再生し、彼女たちを悶えさせてください。


番外編・誕生! ショタ達也 その2

 その日の一高生徒会室には、かなり異質な空気が流れていた。

 

「この子があの達也君なのか?」

 

「深雪さんが言うにはそうみたいよ。何となく面影があるじゃない?」

 

「そうですね……ですが、普段より数段素直そうですがね」

 

 

 ショタ化してしまった達也を教室に一人にするよりはマシと考えた深雪だったのだが、どうやら生徒会室の方が危険だったようだ。

 

「しかし、何故達也君が小さくなってしまったんだろうな?」

 

「その辺りは深雪さんが伝手を使って調べてもらってるそうよ」

 

「伝手? こんな怪奇現象とも呼べる出来事を調べてもらえるところなどあるのか?」

 

「そんなの私に言われても知らないわよ。達也君は知ってる?」

 

 

 真由美に問われ、達也は首を振って答える。キャビネットの中で、深雪から実家の事は誰にも話すなと言われていたので首を振ったのだ。

 

「そう……でも、可愛いから許す!」

 

「おい! でもまぁ、確かにかわいらしいがな」

 

「真由美さん、摩利さんも。あまり司波君をからかうと深雪さんに怒られますよ」

 

 

 達也を抱き上げ二人でからかっていると鈴音が冷静なツッコミを入れた。この状態の達也では二人にあらがう術は無く、鈴音まで一緒になっていたら後で深雪に殺されていたかもしれない。

 

「ごめんね、リンちゃん。つい何時もの様に達也君と接しちゃうのよね~」

 

「普段の達也君ならあたしたちのからかいくらいじゃ動じないしな」

 

「はぁ……しかしいいんですか? 次はさすがに授業に出なければ」

 

「そういえばそうだったわね……」

 

「司波に相談するか」

 

 

 次の時間は三年生も授業があり、真由美たちは達也を如何するか決めるために1-Aを訪ねる事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室内がざわついたのを、深雪は不思議に思っていた。普段ならざわつく事も多くないクラスなのだが、この空気は異質だった。

 

「深雪、七草先輩たちが来てるよ。あと、小さな男の子も」

 

 

 廊下での出来事を見てきたほのかが深雪にそう告げる。それだけで深雪は全てを理解して廊下へと飛び出した。

 

「あっ、深雪さん。次の時間私たちも授業なんだけど、達也君を如何したらいいかしら?」

 

「「達也さん?」」

 

 

 深雪の反応が気になったのか、扉の影から覗いていたほのかと雫の声が重なって四人の耳に届いた。

 

「なんだ、司波から聞いてないのか?」

 

「おいそれと話せる内容では無いですし……」

 

「そうでしょうね。今のは真由美さんのミスですね」

 

「なによリンちゃん! まぁ確かに名前を言ったのは軽率だったわね」

 

 

 ほのかと雫がキョトンとしている間も、達也は深雪の後に隠れている。実は摩利や鈴音に苦手意識を抱いており、出来るだけ離れようとしていたのだが、その姿すら摩利たちを喜ばせるだけだったのだ。

 

「しかたありません。エリカに任せようと思います」

 

「……そうね。千葉さんは事情を知ってるしね。教師がいる深雪さんじゃ授業中に達也君の相手をするのは無理だものね」

 

「ではあたしたちが1-Eへ達也君を連れて行こう」

 

「いえ、お兄様は私が……」

 

「深雪! 次の時間は自習だし、私たちで達也さんの相手をしてあげようよ」

 

「それがいい! 少しくらいならサボっても文句は言われない」

 

 

 妙に力の篭った言葉に深雪は困惑する。ほのかと雫が達也に好意を寄せているのを知っているし、今の状況では別の意味でほのかが達也に依存するかもしれないのだ。

 

「僕、お姉ちゃんと一緒がいい」

 

「お兄様……」

 

 

 二人の勢いに負けそうだったが、何とか踏ん張っていた深雪の最後の砦を打ち壊したのは、達也のこの言葉だった。

 普段は名前で呼ばれている事を嬉しく思っていた深雪に、新たな快感が訪れた瞬間でもあった。

 

「でもさすがに生徒会メンバーがサボるのを元会長として看過出来ないわね……カウンセリング室か保健室で休んでもらった方がいいのかもしれないわね」

 

「ですが……お兄様は私と一緒にいたいと言ってくださいましたし!」

 

「う~ん……でもこの状態の達也君なら、深雪さんといたいと思っても仕方ないと思うのよ。唯一の身内ですし、この学園で安心出来る相手ですから。でもね深雪さん、貴女は総代であり生徒会メンバーなの。だから生徒の模範として過ごしてもらいたいのよ」

 

「……分かりました。では安宿先生にお願いしましょう」

 

 

 何故遥ではなく怜美なのかというと、遥は色々と兄に思うところがある相手だからだ。この状況の達也では遥に何をされても抵抗が出来ないのと、色々と弱みを握られると面倒だと深雪が即時に判断したからだ。

 

「お兄様、申し訳ありませんが深雪は一緒にいて差し上げる事が出来ません。ですから、保健室で大人しくお待ちになっていただけますか?」

 

「そうなんだ……でも、お姉ちゃんの言う事なら聞くよ」

 

 

 素直な反応を見せる達也に複数人が悶える。その中には当然深雪も含まれている。

 

「それじゃ行きましょうか……あっ!」

 

「? 深雪、どうかした?」

 

「次の授業で使う資料を職員室に取りに行かなきゃ……ほのか、雫、お兄様をお願い出来るかしら?」

 

 

 本当は資料を代わりに取りに行ってもらいたかったのだが、そっちを頼んでも承諾してもらえるかどうか微妙だと考えた深雪は、断腸の思いで達也の事をほのかと雫に任せる事にしたのだ。

 

「じゃあ行きましょうか、達也さん」

 

「私より小さい達也さんって、なんだか新鮮」

 

 

 ほのかと雫に挟まれるような形で手をつなぎ保健室に向かうショタ達也。その姿を目撃した一科生女子たちの間でまことしやかに囁かれる事になるのだが、その事は特にほのかも雫も気にしなかった。

 

「すみません、安宿先生はいらっしゃいますか?」

 

「はいは~い。何方かしら~?」

 

 

 保健室に到着し中に声を掛ける。すると中から間延びした声と共に怜美が姿を現した。

 

「えっと、この男の子は?」

 

「実は……」

 

 

 さっき深雪から聞かされた事情を怜美に説明し、一時間預かってもらえないかと提案するほのか。少し考えてから怜美は達也を預かる事を承諾したのだった。

 

「じゃあね、お姉ちゃんたち」

 

「はぅ!?」

 

「~~~」

 

 

 声に出して悶えるほのかと、無口ながらも明らかに萌えている雫を見送り、達也は怜美に連れられて保健室へと入って行った。

 それから一時間後、迎えに来た真由美たちが見たのは、妙に色艶が良くなっている怜美と、ものすごく疲れていた達也の姿だった。




リンちゃんを暴走させると終わると思ったので、あえて冷静を保たせました。内心は悶えまくりでしょうけどもね……

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