劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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今回はエリカ、次回はまたリクエストの中から作ります。


新・IFルート エリカ編

 1-Eの教室では、最早日常的な光景になりつつあるエリカとレオの口論が繰り広げられていた。

 

「だから! 何でアンタはそうなのよ!」

 

「それはお互い様だろうが!」

 

 

 昼休みの間図書室に篭っていた達也は、口論の原因が分からず傍にいた幹比古に事情を聞く事にした。

 

「今日は何でもめてるんだ?」

 

「エリカが飲みたかったものを、先にレオが買って、それが最後の一つだったらしいんだけど……今はもうなんだかとりあえず言い争ってる感じになってる」

 

「なるほど……」

 

 

 二人を何とか宥めようと美月が奮闘しているのだが、これまた何時も通り効果は無いのだ。

 

「しかしよくもまぁ、毎日毎日言い争うネタが尽きないな」

 

「同じ事を繰り返してるからじゃない? この争いは昨日も聞いた気がするし」

 

「……それで、やっぱり俺が止めなきゃいけないのか?」

 

「僕や柴田さんじゃ無理だよ……もうあの二人を止められるのは達也だけだし」

 

 

 他のクラスメイトも達也を見て頷いている。最初の方は他の人たちも何とかしようとしていたのだが、今では達也に任せれば大丈夫という意見でまとまっているのだ。

 

「ほら、エリカもレオもいい加減にしろ」

 

「だって!」

 

「でもよ!」

 

「エリカも飲み物一つでそこまで癇癪を起こす事もないだろ? レオも際限なく付き合ったら大変だって分かってるだろ。たまには自分から折れたらどうだ?」

 

 

 子供を諭すような口調で二人に話しかける達也。自分たちが子供扱いされていると分かってる二人だが、冷静に考えると達也の言っている事も一理ある為に強く反論出来ないのだ。

 

「……達也君、放課後付き合って」

 

「俺が?」

 

「そ、達也君が」

 

「まぁそれくらいなら」

 

 

 実際今日の放課後は風紀委員の仕事も無ければ調べたい事も既に調べ終えているので図書室に行く用事もない。深雪も生徒会の仕事が忙しいらしく、今日は先に帰ってくださいと先ほど言われたばかりだ。

 

「じゃ、そういう事で」

 

 

 レオに鋭い視線を向けてから、エリカは自分の席へと戻っていった。

 

「ワリィ、達也。如何してもアイツとは口論になっちまうんだ」

 

「傍から見てる分には構わないが、仲裁しなければならないとなると面倒だからな。なるべく抑えてくれ」

 

「頭では分かってるんだが、如何しても売り言葉に買い言葉でよ……」

 

 

 達也の中では、エリカとレオのやり取りは痴話喧嘩で済まされる範疇なのだが、二人にとっては真剣そのものなのだろう。レオも分かってるように売り言葉に買い言葉なのだ。

 

「幹比古や美月の胃の事も少し考えてやれ。蒼い顔してるぞ」

 

「ワリィ」

 

 

 見慣れた光景ではあるのだが、何時本気の喧嘩になるかとヒヤヒヤしている二人は、常に胃痛と戦っているのだ。それが分かっていてなお、達也は自発的に二人を止めようとしない。幹比古や美月の泣きそうな顔を見てから仕方なさげに仲裁に入るのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 授業を終え、エリカに引きずられるように学校を後にした達也は、何故かエリカと同じキャビネットに乗っていた。

 

「何処行くんだ?」

 

「買い物。もちろん達也君の奢りで」

 

「おいおい……ま、それくらいで気が治まるなら付き合うが。せめて常識内で頼むぞ」

 

 

 普通の高校生と比べれば遥かに資金に余裕がある達也でも、八つ当たりの買い物で散財するのは好ましくないのだ。最低限の釘だけは刺しておき、あとはエリカの気が済むまで付き合う事にしたのだった。

 

「……達也君ってさ」

 

「なんだ?」

 

「アタシがこうやって八つ当たりしても、何時も優しく相手してくれるよね。普段は冷たいのにこういった時だけは何時も付き合ってくれる」

 

「冷たいとは酷いな。俺だって人並みの温かさは持ち合わせてるぞ」

 

「でも、ミキや美月が泣きそうな顔をするまで仲裁には入らないじゃない」

 

「あの二人で止められるのならそれに越した事は無いからな」

 

「それに、アイツみたいに真っ向からぶつかっても来ないし」

 

「なんだ、俺とも口論したいのか?」

 

 

 冗談だと分かるように、達也は苦笑いを浮かべながらエリカに問い掛ける。するとエリカも苦笑いを浮かべて答えた。

 

「止めとく。達也君相手じゃ口論にならないし」

 

「そうやって冷静な判断が出来るのに、如何してレオに対してだけは感情的になるんだよ」

 

「それは……」

 

「なんだ? もしかしてレオの事が好きなのか?」

 

「違うっ!」

 

 

 達也も冗談で言ったのだが、まさかここまで過剰に反応するとは思っていなかった。

 

「叫ばなくとも聞こえる。狭い空間なんだから反響して余計五月蠅い」

 

「ご、ゴメン……でも、達也君が悪いんだからね」

 

「冗談だろ、あんなの。普段からエリカが幹比古や美月に言ってるのと大差ないと思うんだが」

 

 

 エリカはほぼ毎日のように幹比古と美月の二人をからかう事を言っている。だから達也も軽い冗談のつもりで言ったのだ。だからエリカの反応は達也にとって完全に予想外なものだったのだ。

 

「違うわよ……」

 

「何が?」

 

「ミキと美月は完全にお互いを意識してる。だからアタシはからかったりしてるの」

 

「それで?」

 

 

 結論を急かすように達也はエリカに続きを促した。

 

「でも、アタシとアイツは違う。別にお互いを意識したりはしてない。せいぜい友達って感覚よ。それに、アタシは自分が好きな相手に違うヤツと、なんて言われたくなかったのよ」

 

「………」

 

「……あれ? 今アタシ、言っちゃった?」

 

 

 自分でも言うつもりは無かったのだろう。達也が無言を貫き通したのが恥ずかしかったのか、エリカは一人で慌てだす。

 

「い、今の無し! アタシは深雪と魔法戦争するつもりなんて全くないんだから!」

 

「何故そこで深雪が出てくるのかは知らんが、無しなら別に構わないぞ。応える必要も無くなるのだからな」

 

「……一応、返事だけは聞かせてくれるかしら? 駄目だって分かってるけど、一応ね。振られないと踏ん切りがつかないじゃない。だから……」

 

 

 泣きそうな顔で達也を見上げるエリカ。そんなエリカの髪を、達也は多少乱暴に撫でまわした。

 

「な、何するのよ!」

 

「人の返事を勝手に決め付けるようなヤツには、これくらい乱暴にしても良いだろ」

 

 

 エリカの考えが思い込みだと伝え、達也は視線を逸らした。それが如何いう意味かを理解したエリカは、泣きそうな顔は変わらないのだが、何処か嬉しそうだった。




エリカは声がついてより好きになった珍しいキャラ、逆に真由美はちょっとってなったんですけどね……

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