劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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問題の叔母が登場。
そう言えばアニメしか見てない人は達也の事情とか知らないんですかね……ネタバレになるかもです


叔母上

 叔母から呼び出された達也は、指定された日本魔法協会関東支部に到着した。普通ならこんな大それた場所に達也のような若者は入れないのだが、呼び出した叔母が普通では無いので問題無く入る事が出来るのだ。 

 達也を呼び出した叔母、『四葉真夜』はその苗字からも分かるように、十師族である四葉の当主である。

 では何故達也や深雪が『四葉』では無く『司波』の苗字を名乗っているのかと言うと、これまた色々とあっての事なのだ。

 達也と深雪の母親は現四葉家当主の姉にあたるのだが、当主を継いだのは妹の真夜だったのだ。しかし真夜は未婚で後継者が居ないので、親族で次期当主を争っているのが四葉の現状なのだ。

 だが達也が呼び出されたのはそんな跡目争いとは関係無い、全くの別件なのだ。

 

「司波達也様ですね。上でお待ちしております」

 

「分かりました」

 

 

 一介の高校生(正確にはまだ入学してないが)相手に恭しく対応するのは、達也が普通では無いと知っているからだ。もし事情を知らない人が見れば、何故受付が達也をあそこまで丁寧に扱うか疑問に思うのだろう。

 呼び出された側ではあるが、達也はあまり気が進まないのだ。別に呼び出された内容が何であろうと気にしないのだが、呼び出した相手に達也は嫌気がさしているのだ。

 

「失礼します」

 

「時間通りですな、達也殿」

 

「葉山さん、ご無沙汰しております」

 

 

 部屋で待ちうけていたのは、四葉家執事にして、叔母である真夜の筆頭執事でもある葉山だった。

 

「葉山さんが屋敷を離れても平気と言う事は、今回の仕事はかなり重要なのですね」

 

「何時も通りの勘の良さ、さすがは達也殿ですな」

 

「葉山さんが来るほどと言う事は政治的……防衛軍絡みですか」

 

「その通りよ!」

 

「ッ!?」

 

 

 達也が推測を進めていると、隣の部屋から女性の声が聞こえてきた。その声に達也は身構え、葉山はやれやれと首を左右に振った。

 

「……葉山さん、何とか出来ませんか?」

 

「そんな恐れ多い事は出来ませんよ」

 

「ハァ……」

 

 

 声の主が誰だか、この2人には良く分かってるのだ……いや、葉山は隣に彼女が居る事は知っていたので驚かないが、達也はまさかこんな場所に彼女が居るとは思って無かったのだ。

 

「たっくん、久しぶりー!!」

 

「……ご無沙汰しております、叔母上」

 

「相変わらず硬いな~たっくんは、何時も言ってるように『真夜ちゃん』で良いのに」

 

「……それで葉山さん、今回の資料は?」

 

「おおそうでしたな。これが今回の資料です」

 

「紙ですか……厳重ですね」

 

「あれ? たっくん、何だか怒ってる~?」

 

 

 達也に抱きついて来た女性、四葉真夜の事を居ないものとして話を進める達也と葉山。その態度に首を傾げる事しか出来ない真夜を見て、ついに葉山が耐えられなくなった。

 

「失礼……」

 

「せっかく流したんですから、もう少し我慢してほしかったです……」

 

 

 自分が仕えている主の行動に耐えられなくなり、葉山が噴出してしまったのだ。こうなっては達也も無視を続ける訳には行かなくなってしまった。

 

「叔母上も此処に来ると言う事は、この相手の目的が近いと言う事ですか? 資料には何も書いて無かったですが」

 

「そうだよ~! さすがたっくん、何でも分かっちゃうんだね!!」

 

「……それで葉山さん、この英雄になり損ねた実験体は何時何処を襲うんですか?」

 

「………」

 

「葉山さん?」

 

 

 老執事が笑いを堪えてるのを見て、達也は思わずため息を吐きそうになったが、そんな事をしたらこの叔母が何をしてくるか分からないので堪えた。

 

「この出来損ないはね~、今日此処を襲うんだよ~」

 

「何ですって?」

 

 

 達也は別に聞き取れなかった訳では無い。ただ叔母が言った事が信じられなくて聞き返したのだ。

 

「だから~、今日この建物を襲うつもりなんだよ~! 人間発火装置だから、ひょっとしたら何か燃やすのかもね~」

 

「真夜様の言う通り、件の男は自分の人生を破壊した魔法協会をターゲットにして示威行動を行うと予想されます」

 

「………」

 

 

 葉山に無言で礼をして、部屋から飛び出して行く達也。このビルには妹の深雪も来ているのだから、達也が慌てないはずも無いのだ。

 そんな慌てた達也の姿を見て、真夜はつまらなそうにため息を吐いた。

 

「あ~あ、たっくん行っちゃった……」

 

「真夜様、達也殿にも色々と事情があるのですよ」

 

「そんな事分かってるけど、もう少し一緒に居てくれても良いじゃないのよ」

 

「はぁ……」

 

「まぁ良いわ。葉山さん、お茶」

 

「畏まりました」

 

 

 達也には甘えまくっていた真夜だが、それはあくまでも相手が達也だからで、普段はこのように冷めた態度で接するのだ。

 四葉家内でもこの事を知っているのは葉山くらいなもので、後は当事者の達也と妹の深雪以外にこの事を知っている人間は居ない……それくらい葉山は真夜に信頼されている証拠なのだ。

 

「それにしてもたっくん、また一段と逞しくなってたな~。今度はゆっくりと会えると良いな」

 

 

 深雪が達也の事を真夜に会わせたく無いのは、達也が真夜に取られてしまうのでは無いかと心配しているからなのだが、とある事情で達也は深雪の傍から離れられないのだから、それは深雪の杞憂に過ぎないのだが、この叔母はその杞憂すら現実にしてしまう可能性を秘めた相手なのだ。 

 一方真夜も、深雪の事を自分の後継者として認めているのだが、あまりにも深雪が達也に溺愛しているのではっきりと後継者にすると言えて無いのだ。もし公言すれば深雪と自分は簡単に会えなくなる。そうなると必然的に達也とも会えなくなってしまうので、真夜は自身の後継者を誰にするかの公言を避けているのだ。

 

「真夜様、お茶が入りました」

 

「ありがとう……何?」

 

「いえ、相変わらず達也殿にだけは甘えるのだなと思いまして」

 

「いけない? たっくんは私の可愛い甥っ子なのだから」

 

「そうですが、それですと普通甘えてもらいたいのでは?」

 

「たっくんが甘えてくれないから私が甘えてるのよ」

 

「左様ですか」

 

「深雪さんが羨ましいわね。何時でも何処でも甘えられるのだから……」

 

 

 とても叔母が姪に思うような事では無いのだが、そんな事を指摘するほど葉山も老いぼれてはいない。主の機嫌を損ねるような事は言わないのが、執事の常識なのだ。




登場機会は多くないですが、これから更にキャラ崩壊が進みます……双子の姉のCV.が井上喜久子さんだったから、真夜も喜久子さんなのかな……想像するとちょっと鳥肌が……

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