劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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本当ならリーナに対するUSNAの訊問なんですけどね……


訊問と処遇

 パラサイトには逃げられたが、当面の敵だったミカエラ・ホンゴウを捕える事に成功したので、真由美は一安心という顔をしていた。これから彼女に訊問するのだが、それは真由美の担当では無いので心の負担が軽くなったのだろうと周りは思っていたのだった。

 

「えっと……皆さん、ワタシに何か用でしょうか?」

 

「ミア……今日までの事、覚えてますか?」

 

 

 同席だけ認められていたリーナだったが、真っ先にミカエラに声を掛けた。それが一番効率が良いと達也が判断して、克人がそれに同意したからだ。

 

「えっと……何故ワタシは日本にいるのでしょう?」

 

「そこから覚えて無いの?」

 

 

 リーナに訊ねられ、ミカエラは恐縮しながらもハッキリと答える。

 

「しょ……リーナと日本に留学する事が決まった事は覚えてますが、何時の間に日本に来たのでしょうか?」

 

「司波、どう思う」

 

 

 ミカエラの証言を聞いていた克人が、その隣で証言を聞いていた達也に問いかける。

 

「嘘を吐いているようには見えませんが、一通り訊問はするべきだと思います」

 

「そうだな。俺もそう考えていた」

 

 

 それならなぜ問いかけて来たのか、と達也は思ったが、余計な事を言う必要は無いので黙ってうなずいた。もう一つ思ったのは、自分では無く真由美に問うべきでは無いのだろうか、と言う事だが、訊問は彼女には不向きだなと思いなおし、そっちも自分の中で処理したのだった。

 

「ねぇ達也君、彼女が例のパラサイトに支配されてた人なの?」

 

 

 リーナに代わり克人が訊問を始めたのを見て、真由美がスルスルと達也の隣に陣取って訊ねて来た。

 

「そうですね。彼女の素性は俺よりもリーナに訊いた方がよさそうですよ。知り合いのようですしね」

 

「別に素性はいいわ。でもいくらパラサイトに支配されていて身体能力と魔法技能が強化されてたとはいえ、西城君があんな女性に負けたとは思えないわね……」

 

「幹比古が言うには幽体――生命力の塊を吸い取られたらしいですからね。いくらレオでも生命力を削られたら戦い様がありません」

 

「それはそうかもしれないけどさ……」

 

 

 妙に真由美の立つ位置が達也に近いのを見て、美月を除く美少女四人はつまらなそうな眼差しを達也に向けているが、それには気づかないフリをして真由美との会話を続ける。

 

「彼女の処分はどうするおつもりですか? 支配されていただけとはいえ、彼女が魔法師数名を襲い、そのうちの殆どを死に追いやったのは紛れも無い事実です」

 

「そうね……どうするかは十文字君と相談しなきゃ決められないけど、身柄は私たちの方で預かる事になると思うわ」

 

「ちょっと、ウチだってその権利はあるはずなんですけど」

 

 

 真由美の言葉にエリカが喰いつく。そのどさくさで真由美とは逆位置の達也の隣に立つ事に成功した。

 

「エリカ、君のお兄さんが身柄を預かるならまだ分かるが、エリカ個人が身柄を預かるのは難しいと思うぞ。いくら千葉家とはいえ、やはり十師族で身柄を拘束した方が逃亡の危険性が格段に下がるからな」

 

「でも……分かったわよ。その代わり、ウチでも訊問はさせてもらいますからね」

 

 

 前半は達也に向けて、後半は真由美に向けての言葉。エリカとしても簡単には諦めきれなかったのだろう。

 

「ところで達也君、私は何があったのか良く分かって無いんだけど、何がどうなってこうなったの?」

 

「カメラで……いや、マルチスコープで見てたのではないのですか」

 

「ううん、私は達也君に言われた通りにカメラの操作とかで忙しかったし」

 

 

 目の前で訊問が行われているのに、自分の周りは何故こうなのだろう……と達也、克人と共にこの場にいるもう一人の男子、幹比古はそんな事を思っていた。

 自分の周り、というか達也の周り、なのだが、幹比古が達也と行動を共にして、その達也の周りには複数の美少女がいるのだから、あながち自分の周りでも間違っては無いのだが……

 

「司波、やはり彼女は何も覚えていないようだ」

 

「そうですか。ですが、彼女が複数の魔法師を襲ったのは事実ですし、このまま自由にするわけにはいきません」

 

「そうだな。だが今の彼女の戦闘力なら、それほど警戒する必要も無かろう」

 

「ですが、一度支配された事のある身体ですし、また支配されないという事も無いでしょう。やはり監視下に置くのが妥当だと思います」

 

「だが、女性を監視下に置くとなると、俺やお前では色々とマズイ状況もあるだろう」

 

「なら、七草先輩に任せてみては如何でしょう。先輩は同性ですし、特殊能力で死角は存在しませんし」

 

「わ、私っ!?」

 

 

 急に名前を呼ばれ驚く真由美。話の流れから自分が関係あるのだろうとは分かっていたが、まさか直接指名されるとは思っていなかったのだろう。

 

「確かに七草が適任だろうが、シールズでも良いと俺は思うが」

 

「リーナは彼女の隣の部屋で生活していたのにも関わらず、彼女がパラサイトに支配されていた事に気づけませんでした。監視任務には不向きかと思います」

 

「グッ……タツヤはワタシの心を抉って楽しいのかしら?」

 

「別に楽しんでるわけじゃない。事実を言っているだけだ」

 

 

 バッサリと達也に斬り捨てられたリーナはその場にしゃがみこんだ。そんなリーナに目もくれずに、達也と克人は話を進めて行く。

 

「場所はどうしますか? USNA軍にちょっかいを出されると面倒ですが」

 

「その点は俺がどうにかしよう。十師族の力でどうとでもなる」

 

「ではお願いします。俺たちが手伝えるのはここまでのようですし」

 

 

 本当なら達也や深雪にもミカエラを拘束・監視下に置く事が可能なのだが、その事を知られる訳にはいかないので達也はあっさりと克人に一任した。

 

「タツヤ、逃げたパラサイトの行方は分からないの?」

 

「俺が撃ち込んだレーダーはあくまでも彼女にだ。パラサイト自体は追いかけられないだろ。それこそ幹比古に頼むんだな」

 

「えぇ、僕っ!?」

 

 

 もう関係ないだろうと美月とおしゃべりに興じていた幹比古だったが、急に自分の名前を呼ばれて少し咽てしまった。

 

「俺にはあの物体を見る事は出来なかったからな。何となくそこにいるとは分かったが、正確な位置は分からなかったからな」

 

 

 そう言いながら達也は窓の外に視線を向けていた。逃げたパラサイトを探しているのだと、深雪にはそう見えたのだった。




所々でミアが出せたらいいな……

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