劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

35 / 2283
今回は優等生の方のネタが強めです


美少女探偵団結成

 達也が剣術部と剣道部の騒動を処理した翌日、深雪は体育を終えて更衣室で着替えていた。昨日の達也の活躍が嬉しくて、今日一日深雪の機嫌は上々で、クラスメイト相手に愛想よく接してた為に、今日は深雪の周りに居た人間は鼻血を出しまくっていた。

 

「司波さんはこれから生徒会?」

 

「え?」

 

「ブッ!」

 

 

 下着姿だった深雪を見て、ほのかは鼻血を噴出した。同い年とは思えない体型は、ほのかには刺激的だったのだ。

 

「えっと、司波さんは今日も生徒会で仕事?」

 

「ええ、色々と問題があるようで、今日も忙しいと思うわ」

 

「そうなんだ」

 

「そう言えば二人共、もうクラブは決めたのかしら?」

 

 

 さっきから自分の胸と深雪、ほのかの胸を見比べて密かに燃えていた雫も、漸く会話に加わってきた。

 

「うん、バイアスロン部」

 

「SSボード・バイアスロン部? 何か非常識なアクシデントに見舞われたって聞いたけど」

 

「今の部長さんは常識的だったし、面白そうだったから」

 

 

 昨日の事を思い出して、ほのかは少し気分が悪くなったような感じがしてきた。何時もより声に力が無いのだ。

 

「そ、そう言えば司波さん。昨日は達也さんが大活躍だったみたいね」

 

「えぇまぁ。でも、お兄様のお力を持ってすれば、あれくらい当然ですけどね」

 

「見たかったな……」

 

「雫?」

 

「ううん、何でも無い」

 

 

 深雪の幸せオーラに当てられたのかは分からないが、雫が少し残念そうにつぶやいた。

 

「それで、今日はもう大人しく帰るつもり」

 

「それが良いでしょうね。それじゃあ……ほのか、雫、また明日」

 

「えっ!?」

 

 

 急に深雪から名前を呼ばれて、ほのかは焦ったような喜んだような反応を見せた。一方の雫は何時も通りのポーカーフェイスだ。

 

「お兄様が仰られたでしょ? 私の事も深雪で良いのよ」

 

「えっと……深雪、また明日」

 

「バイバイ、深雪」

 

「ええ。それじゃあ」

 

 

 深雪の事を名前で呼んだ所為で、ほのかは力尽きたようにその場に座り込んだ。そんなほのかを支えるように、雫は深雪に手を振っている。

 

「ほのか、帰ろう?」

 

「み、深雪でいいって!」

 

「うん」

 

 

 少々興奮気味の親友を、雫は何時もの冷めた雰囲気で落ち着かせようとしたが、ほのかの興奮は暫く続いたのだった。

 

「二人共、今帰り?」

 

「うひゃ! ……何だ、エイミィか」

 

「如何したの?」

 

「あれ」

 

 

 驚いたほのかに尋ねたエイミィだが、答えをくれたのは隣にいた雫だった。

 

「あれは確かに怖いわね~。そうだ、隠密系の魔法を使って外に出れば良いのよ」

 

「でも、校内での魔法使用は禁止されてるんじゃ……」

 

「大丈夫だよ、ほのか。今回は攻撃魔法じゃないし」

 

「この前のも攻撃魔法じゃないよ……」

 

 

 入学早々の事件の事を思い出さされて、ほのかはテンションが下降した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨日の闘技場での一件で、達也は風紀委員会の中でも一目置かれる存在となっていた。委員長の摩利が大げさに話をするものだから、達也はすっかり期待されてしまっているのだ。

 

「校門付近で揉め事ですか? 分かりました、すぐ向かいます」

 

 

 このように達也に出動要請が来るのも度々で、今日だけでもう五件目だ。幸いな事に、毎回達也が居る近くで問題が発生する為に、移動するのに苦労しないのだが、此処まで来ると狙ってやってると思えてきていたのだった。

 

「そこの二人、風紀委員です! 今すぐ止めてください」

 

「え?」

 

 

 乱闘していた二人のうち、一人が展開中の魔法をキャンセル出来ずに達也の方に向かって発動した。簡単な空気弾(エア・ブリット)だったので、達也は魔法をキャンセルせずにそのままかわした。

 

「うわぁすご、あれをかわすんだ」

 

 

 近くでそんな声を聞いたような気がした達也だが、今はそれよりも乱闘騒ぎをしていた二人の確保が先決だった。

 

「イテェな、何処見てるんだ」

 

「スミマセン」

 

 

 明らかに向こうからぶつかってきたのだが、そんな事を証明出来るはずも無く達也は素直に相手に謝った。その所為で乱闘騒ぎをしていた二人には逃げられてしまった。

 

「(まさか、今ぶつかってきたヤツらもグルなのか?)」

 

 

 タイミングが明らかに狙ってたとしか思えないほどだったし、乱闘騒ぎをしていた二人も本気で争ってる雰囲気は無かった。

 

「(随分と目の敵にされてるんだな……)」

 

 

 達也が昨日桐原を倒した事は、意外な事に全学年、全生徒に知れ渡っているのだ。その所為で一科生からの嫉妬の視線が後を絶たないのだが……

 

「達也さん! お怪我はありませんか!?」

 

「達也さん、大丈夫?」

 

「光井さんと北山さん? 大丈夫だ、問題無い」

 

「えっと、ほのか、雫、この人誰?」

 

 

 達也の身を案じて飛び出してきたほのかと雫に心配無いと伝えた達也の前に、赤髪の女子生徒が現れた。

 

「新入生総代、司波深雪さんのお兄さんだよ」

 

「えっ!? あの超絶美少女の司波深雪さん! なるほど、それならカッコいいのも頷けるわね。それで、三年生? それとも二年生?」

 

「同じ一年なんだが」

 

「嘘!? それであの体術を身に付けてるの!?」

 

 

 見知らぬ女子にジロジロと見られて動じるほど、達也の神経はか細くは無い。だがあまりジロジロと見られるのは気分の良いものでは無いのだ。

 

「風紀委員、一年E組司波達也だ」

 

「明智英美です。エイミィって呼んで下さい!」

 

「分かった……はい、分かりましたすぐ向かいます。悪い、仕事だ」

 

 

 達也は無線からの知らせに返事をして、ほのかたちに謝罪してその場から移動したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 達也が居なくなった場所で、三人の美少女たちが話し合っていた。

 

「達也さん、忙しそうだったね」

 

「うん、昨日の活躍で更に忙しくなった感じがするね。でも、さっきの空気弾はワザとだよね」

 

「多分やっかみじゃないかな? お兄さんは二科生なのに、一科生を倒しちゃったんでしょ? それで生意気だー! って感じで」

 

「何それ!? 完全にやっかみじゃないの!」

 

「だから、私たちで証拠を見つけましょうよ! お兄さんに攻撃を仕掛けてるヤツらの尻尾を私たちで掴まえるのよ!」

 

 

 エイミィの提案にほのかも頷く。深雪ほどでは無いにしても、彼女もまた達也の身の安全を心配しているのだ。

 

「私も協力する! もちろん雫も手伝ってくれるのよね?」

 

「うん、手伝う……でも今はそんな事言ってる場合じゃ無いと思う」

 

 

 そう言って雫は、ほのかとエイミィの背後を指差す。そこには……

 

「ほのか、隠密魔法は!?」

 

「達也さんが心配で解いちゃった!」

 

 

 姿を現した新入生を掴まえようと、勧誘組がほのかたち目掛けて駆け寄ってきた……いや、迫ってきたと表現した方が良いかもしれない。兎に角襲われそうになったのだ。

 

「詳しい事はまた明日! 今は逃げるのが先決よ!」

 

「分かった! それじゃあエイミィ、また明日!」

 

「ほのか、コッチ!」

 

 

 一緒になって逃げるよりも、それぞれがバラバラに逃げた方が効率的だと考えた三人は、その場で別れて逃げ出したのだった。結局校門から駅に向かうのだから、一緒に逃げても変らなかったと気付いたのは、三人が駅に着いてからだった。




同性の身体を見ても鼻血って出るんでしょうか? 少なくとも男同士ではありえなさそうですがね。あったら嫌ですが……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。