劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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いよいよ紗耶香が達也に接触を図ります


動き出す非日常

 生徒会室で、ほのかと雫が各クラブの部長のプロフィールを見たいと言われ、深雪は疑問に思いながらも生徒会のデータベースを開いた。ほのかも雫も部活を決めているのにおかしな話だと思っていたが、閲覧禁止でも無いし、何か必要な事でもあるのだろうと思って特に追求はしなかった。

 だがその日の夜、達也から聞かれた事で何か繋がりがあったのではないかと思い始めたのだ。

 

「深雪、クラスメイトの光井さんと北山さんの事を教えてくれるか?」

 

 

 このように達也が他人に興味を持つのは珍しい事で、深雪は二人が何か無礼を働いたのではないかと早とちりをした。

 

「その二人がお兄様に何かしたのですか?」

 

「ん? あぁいや、そうじゃなくてだな、如何もつけられてるようだからな。異常な性癖の持ち主とかじゃないよな?」

 

「大丈夫だと思いますが……やっぱり何かされたのですか!」

 

「そうじゃないさ、とりあえず落ち着け」

 

 

 興奮気味の深雪の髪を取り、軽く梳いた。達也がこうする事で深雪は忽ち大人しくなるのだ。

 

「見回りの度に傍に居るからな。いや、異常性癖で無いなら別にいいか」

 

「あの、それでほのかと雫は何をしてるのですか?」

 

「もう一人、確か明智さんと言ったか? その三人で如何やら写真を撮ってるようなんだが」

 

「写真ですか!? お兄様の!?」

 

 

 達也の写真と勘違いした深雪は興奮と羨望が混ざったような感情でソファーから腰を浮かせかけた。

 

「(羨ましい……いえ、許せない……でも欲しい!)」

 

「いや、被写体は俺じゃない。自分が撮られてるのなら分かるからね。如何やらちょっかいを出してきてる連中を突き止めようとしてるらしい」

 

「まだお兄様にちょっかいを出す愚か者が……!」

 

 

 感情がコントロール出来なくなり、室内の気温を著しく下げ始めた深雪だったが、達也が指を回すと下がっていた気温は元に戻り始めた。

 

「落ち着け」

 

 

 そしてこの一言で、深雪は冷静を通り越して反省し始めた。

 

「申し訳ありません……」

 

「気にするな。だが首を突っ込み過ぎなければ良いが……」

 

「お兄様?」

 

 

 達也が考え込んでるのを見て、深雪はこの件がこの程度で済むはず無いと確信した。最愛の兄が高校生レベルの嫌がらせで此処まで考え込むなどありえないと、深雪は分かってしまうのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新入生勧誘週間が終わり、達也は久しぶりに平和な放課後を過ごす事が出来るようになった。昼休みに匿名で風紀委員に襲撃者のタレコミがあったが、あれはほのかたちが送ったものだと、達也も深雪もその場で看破して、達也が放っておいても平気だと言ったためにその場でこの話は終わったのだった。

 

「達也ー、今日も委員会か?」

 

「いや、今日は非番だ」

 

「いまや有名だもんね~、魔法も使わずに上級生をなぎ倒す謎の一年風紀委員って」

 

「何だよ、その『謎の』ってのは」

 

「如何やら達也君は反魔法組織が送り込んだ刺客じゃないかって噂だよ~」

 

「誰だ、そんな噂を流してるのは……」

 

「は~い! アタシで~す!」

 

 

 無邪気に手を上げたエリカを、達也は鋼鉄の視線で貫いた。その視線で貫かれたエリカは、何故だか少し恥ずかしそうに視線を逸らした。

 

「それにしても良く無事でしたね。達也さん、魔法で攻撃されたりもしたんですよね?」

 

「ああ、誤爆に見せかけた攻撃も含めると、相当数されてるな」

 

 

 改めて考えれば、良く無事だったなと、達也は他人事のように考えていた。そんな達也を、美月が心配そうに覗き込んでいた。

 

「如何かしたのか?」

 

「い、いえ! 本当にお怪我は無かったのかなと思いまして……その……」

 

 

 達也に見つめ返されて、徐々に声が小さくなっていく美月を見て、達也は視線を逸らした。別に彼に女性を苛めて喜ぶような性癖は無いのだ。

 

「デバイス携帯制限も復活したし、もう大丈夫だろうな」

 

 

 達也は三人を安心させるようにそう言って席を立った。自分は非番だが妹は今日の生徒会の仕事があるのだ。達也は深雪を生徒会室まで送ってから図書室で入学当初からの目的だった文献に目を通すつもりだったのだ。

 

「あの、お兄様……」

 

「ん? 如何かしたのか」

 

「例の件ですが……」

 

「気にする事は無いだろ。あの三人も危ないと判断したら身を引くだろうし、そこまで愚かでも無いだろ」

 

「だと、良いのですが……」

 

 

 誰がとか、何にとかは伏せても、この兄妹は会話が成立するのだ。話している事はもちろん襲撃者とそれを捕まえようとしている三人の話なのだが、事情を知らない周りの人間には、この二人が何を話しているのか理解出来なかった。

 

「ちょっと良いかな?」

 

 

 背後から声を掛けられて、達也と深雪は同時に振り返った。達也の方には声に聞き覚えがあったし、想像通りの相手だったのだが、深雪の方は完全に初対面だった。

 

「はじめまして、って言った方が良いかな?」

 

「そうですね、直接会うのは初めてです。剣道部の壬生先輩ですよね」

 

「ええ。司波君と同じE組よ」

 

 

 これはつまり、自分は二科生だと言う事を言っているのだと、達也も深雪も理解した。

 

「この前は助けてくれてありがとう。この前のお礼も兼ねて、今から一緒にお茶しない?」

 

「今は無理です。十五分後なら」

 

「そ、そう……それじゃあカフェで待ってるから」

 

 

 提案をキッパリと断られてポカンとしてた紗耶香だったが、達也からの提案に乗る形になったが当初の目的が達成出来たので一先ずその場から去っていったのだった。

 

「それじゃあ深雪、今日も頑張ってな。図書室で待ってるから」

 

「図書室……ですか?」

 

 

 達也が指定した場所に違和感を覚えた深雪は、繰り返す事で達也に質問したのだった。

 

「そのつもりだが……おかしかったか?」

 

「いえ、壬生先輩とのお約束がありましたので……」

 

「ああ、どうせ部活の勧誘かそこらだろ。すぐに終わるさ」

 

「そうでしょうか……お兄様が名声を博するのは嬉しいのですが、それを利用しようとする輩が居るのは確かです」

 

「気にしすぎだろ。それと深雪……たかが高校の委員会で『名声を博する』は言い過ぎだ」

 

「良いんです! お兄様のお名前は私にとって名声なのです!」

 

 

 達也のツッコミに怒ったように身を翻した深雪だったが、達也にはそれが照れ隠しである事はお見通しだった。

 深雪が生徒会室に入った後、達也は誰も居ない廊下で一人つぶやくのだった。

 

「お前が心配しなくとも、俺はお前の為に居るのだから。例え誰が来ようと、俺は靡く事は無い。理想を掲げて魔法師を騙そうとしてる奴等には特にな」

 

 

 もし誰かが聞いていたら、言ってる意味を知ろうと達也に問いかけたのだろうが、幸いにしてこの場には誰も居なかった。

 達也はその場から移動し、約束したカフェへと向かった。人が多いので探すのが大変だと思っていたが、入り口で紗耶香が待っていてくれたのでその心配は杞憂で終わったのだった。




紗耶香はどっちにつけるか迷ってます……
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