劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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何たる展開だ……


超IFルート 真夜家出編

 その日の司波家には、朝から思ってもみない来客があった。深雪も水波も、達也でさえも、その人の訪問は驚きを隠せないものであった。

 

「それで、何故このような場所に?」

 

「家出よ」

 

「家出……ですか」

 

 

 他の二人は驚いて口をパクパクさせていたが、受けた衝撃が大き過ぎて平常心を取り戻す事が出来た達也が対応をしていた。

 

「それで、貴女が何故家出などをしたんです?」

 

「だって、来る日も来る日も家の中や車での移動ばっかりで、自由が無いんだもん」

 

「……それは貴女は承知の事だと思ってましたよ――叔母上」

 

 

 突然の来客――家出をしてきたと言い張る四葉真夜に、達也は呆れたのを隠そうとしない視線を向けた。

 

「だって! 自由にたっくんに会う事も出来ないし、電話だって自由にさせてもらえない。葉山さんはある程度大目に見てくれるけど、他の人たちはたっくんの名前を出すだけで顔をしかめたりするんだもん! 私だって自由が欲しい!」

 

「……四葉家の当主はそんなに自由に動ける立場では無いでしょうに。それで、家出したと聞きましたが、何故ここなのです?」

 

「だってたっくんがいるから」

 

 

 当り前な事を聞くな、とでも言いたげな顔で答えた真夜を見て、達也はもう一度ため息を吐いた。

 

「深雪、水波、叔母上にお茶をお出ししてさし上げろ」

 

「「は、はい!」」

 

 

 達也に指示された事で、漸く現実に復帰する事が出来た深雪と水波は、弾かれたようにキッチンへと向かった。

 

「それで、何時まで居るつもりですか? 生憎俺も深雪も色々と忙しいので、叔母上のお相手をしてさし上げる事は出来ません」

 

「大丈夫よ。たっくんの部屋でごろごろするだけでも有意義だから」

 

「……暇を持て余すと思いますが」

 

「本家ではごろごろする事も出来ないし、暇を持て余すなんて事も体験した事無かったから丁度いいわよ。それに、一日中たっくんの匂いに包まれるんだから、暇だなんて思わないわよ」

 

 

 達也の部屋で生活する事を決定事項のように話す真夜に、深雪は少し苛立ちを覚えながらお茶を差し出した。

 

「ありがとう、深雪さん。水波ちゃんもご苦労様ね」

 

 

 労いの言葉を掛けて、真夜は二人に淹れてもらったお茶を一口啜った。

 

「深雪さんが忙しいのは生徒会の作業だって分かるけど、たっくんは何で忙しいの? FLTでまた開発とかしてるのかしら?」

 

「いえ、別件です。パラサイト問題の際に所有権のみを買い取ったP-94のメンテや、新しく開校される魔工科の説明会などで俺も学校に行かなければいけないんです」

 

「そうなの……じゃあたっくんの部屋で大人しく待ってるからね」

 

 

 貴女何歳だよ、とツッコミを入れたい衝動に駆られたが、三人はそのような無駄な事を言うはずもなく、また達也の部屋以外で待ってろ、とも言えない立場の相手なので、深雪と水波は真夜に見えない角度で凄い表情をしていた。

 

「じゃあ水波、叔母上のお世話は任せる」

 

「はい、達也さま。深雪さまも行ってらっしゃいませ」

 

 

 本来であれば深雪の名前を先に呼ばなければいけないのだろうが、司波家に限り深雪よりも達也の方が立場が上だとされている。達也自身は別に深雪の名前が先でも不満は無いし、四葉家ではそのように扱わなければいけないのだから気にもしていないのだが、深雪が頑として自分より達也を上にしたいようで、水波もそれに賛同したために達也の名前が先に呼ばれているのだ。

 

「水波ちゃんも、やっぱりたっくんの虜になっちゃったのね」

 

「ご当主様の仰られた通りで、達也さまに惹かれないようにするのは不可能でした。元々意識していたのですが、同居するようになって完全にドつぼに嵌ってしまいましたね」

 

「仕方ないわよ。たっくんの魅力に逆らえる女なんて存在しないのだから。調べた限りでも、相当数の女子がたっくんに何かしらの好意を寄せているもの」

 

「そのようですね。深雪さまのお話では、過去最高数のチョコレートを頂いたようですし……その中には教員からのものも含まれていたようですので」

 

 

 水波の言葉に、真夜は首を左右に振りながらお茶を啜った。何か仕出かすのではないかと水波は懸念したが、自分の立場では四葉家当主に物申すなど恐れ多いので出来なかったと、後で深雪に泣きついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 達也と深雪が学校から戻ってきてすぐ、異変に気付いた。達也の部屋から何かおかしな声が聞こえてくるのだ。

 

「水波、叔母上はどうした?」

 

「それが……達也さまの部屋に篭られたままでして……」

 

「………」

 

 

 嫌な予感がしていたが、部屋に入らなければ着替える事も出来ないので、達也は自分の部屋の扉を開けた。

 

「あっ、たっくんお帰り―」

 

「……叔母上、その服は確か俺のだったと思うのですが」

 

「そうだよ。たっくんに抱きしめてもらってる気分を味わってたんだー」

 

「「なんてうらやましい!!」」

 

「おい……深雪も水波も違うだろうが」

 

「「はっ! ……いえ、羨ましいです!」」

 

「………」

 

 

 一瞬だけ我に返ったが、すぐに真夜に嫉妬した深雪と水波に呆れながら、達也は真夜を自室から追い出して着替える事にした――のだが……

 

「叔母上、もしかして全ての服に袖を通しました?」

 

「えっ? あたりまえじゃない! 時間の経過とともにたっくんの匂いが薄れちゃうんだから、その都度別の服に着替えるのは当然よ」

 

「………」

 

 

 何を当り前な事を聞くの、とでも言いたげな真夜の表情に絶句し、達也は着替えるのを諦めて地下室へと向かおうとした。

 

「お兄様、お着替えくださいませ。そしてそのシャツを深雪に下さいませ!」

 

「私は上着で構いません、達也さま!」

 

「おい、お前らもなに馬鹿な事を言ってるんだ……」

 

 

 早々に真夜を四葉家へ返さなければ、そう決心して達也は懐から通信端末を取り出し、この事態を収拾出来るであろう人物へ助けを求めた。

 

「葉山さん、早々に叔母上をお引き取り頂きたいのですが」

 

『真夜様は一週間ほど旅に出られると申されました故に、私にはどうする事も出来ません』

 

「……一週間も俺が叔母上の相手を?」

 

『よろしく頼みますぞ。折角の旅故に、真夜様は童心に帰られたのでしょうな』

 

「……楽しんでますよね」

 

『ホッホッホ、私めには真夜様のお考えなど分かりますまい。達也殿もそれくらいは分かっておられるでしょうに』

 

 

 援護が期待できないと理解した達也は、自分の服を狙っている三人の視線を受け、今日一番のため息を吐いたのだった……




箍の外れた真夜がどうなったのか……それは想像にお任せします
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