劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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二話で収まった


ラブラブIFルート 真由美編その2

 達也の部屋に案内された真由美は、何時もの明るい雰囲気では無く少し落ち込んでいた。その理由は、先ほどから向けられている達也の視線だった。

 

「真由美さん、何故何時も何時も深雪とあのように張りあうのです?」

 

 

 視線とは裏腹に優しい口調で話しかけてきた達也に幾分か安心した真由美は、達也が再び敬称付きで呼んでいる事に不満を感じていた。

 

「達也君、さっきは呼び捨てにしてくれたでしょ? 別にもう遠慮する事は無いのに……」

 

「質問に答えてください。敬称云々はその後で話しあいましょう」

 

 

 バッサリと達也に切り捨てられ、真由美は視線を一旦下に落としてから覚悟を決めたように話し始めた。

 

「だって、私はたまにしか会えなかったのに、深雪さんは毎日達也君に会えるわけでしょ?」

 

「まぁ、妹ですし……」

 

「それよ。達也君の中で、妹と彼女を比べた時、妹の方が上に来ているのが嫌なの! 事情は知ってるし仕方ないとも思うわよ! でも! それでも私は達也君の中で一番になりたいの! だからつい……」

 

 

 そこまで言って、真由美は再び顔ごと達也から視線を逸らした。泣きそうな自分の顔を見られたくないという真由美の思いは達也にも伝わったようで、彼は顔を背けた真由美を抱きしめ、万が一泣いても自分には見えないようにした。

 

「別に俺は、真由美さんと深雪を比べたりはしてませんよ。大事だと思うベクトルが違うんですから」

 

「それでも! やっぱり達也君は私より深雪さんの方を大事にしてるのよ! さっきもだけど、止める時だって深雪さんを先に止めてから私の事を見るでしょ? あれって達也君の中で深雪さんの方が大事だからなんじゃないの?」

 

「深雪の方が、暴走されると厄介だという事も多分に含んでいるが、付き合いが長い深雪からの方が止めやすいし、深雪が大人しくなれば真由美さんだって冷静になれるでしょうし」

 

「そりゃ……そうかもしれないけど……」

 

 

 顔を合わせられなくて助かったのは、やはり真由美の方だったのかもしれない。もし今の達也の表情を見てしまったら、真由美は更に達也に嵌ってしまったかもしれない、それ程今の達也は優しく、そして真由美の見た事の無い表情をしていた。

 

「別に張りあう事が悪いとは言いませんが、毎回毎回魔法戦争ギリギリまでヒートアップされたら困ります。真由美さんは年上であると同時に、俺の彼女という立場なんです。少しくらい深雪に寛容くらいでちょうどいいんではないでしょうか?」

 

「それって、私が子供っぽいって言ってるの?」

 

 

 漸く涙が引いてきた真由美は、何時ものように頬を膨らませて達也を睨んだ。自分の方が大人っぽいとは真由美も思ってはいないが、子供扱いされるのはさすがに耐えられないのだろう。

 

「そんな事はありませんよ。真由美さんは立派に大人の女性です」

 

「でも、達也君と並んでも私の方が年下に見られるし……もしかしたら響子さんが隣にいても、達也君の方が年上に思われるんじゃないの?」

 

「……さすがに藤林少尉と一緒で年上に見られる事はありませんよ」

 

 

 同年代には見られますが、という達也の自虐は真由美の耳には届かなかった。彼女が気になったのは、藤林と一緒に行動して、あまつさえ他人に見られる場所にいた事が気になったのだった。

 

「達也君、何で響子さんと一緒にお出かけしてるの? もしかして二股?」

 

「作戦行動上、あまり軍人らしくない方がいいとの事でしたので、年少の俺と、見た目は軍人らしくない藤林少尉が選ばれたんですよ」

 

「まぁ確かに、響子さんは普通にしてれば何処かのOLっぽいものね……」

 

 

 古式魔法の名門だとか、九島烈の孫娘だとかは、知らない人間にはそんな事で見る目が曇る事は無いのだ。藤林響子という女性をそのような目で見れば、確かに軍人とは思えないだろうなと、真由美は一応納得したのだが、それでも響子と二人きりだったという事実は見逃せないのだ。

 

「それって私と付き合う前? それとも付き合ってから?」

 

「前ですよ。もう一年以上も前の事です」

 

「なら良いけど……いや、良くないけど」

 

「どっちなんですか」

 

 

 納得しかけたがやはり気にいらないのか、真由美は達也にしがみつく力を少し強めた。その結果、自分の身体が達也に密着する個所が増えるわけで、真由美の胸は先ほどから潰れるのではないかという勢いで達也の腹の辺りに押し付けられていた。

 

「達也君ってちゃんと反応するんだね。感情が無いって言ってたからてっきりコッチも無反応かと思ってたわ」

 

「我を忘れるような強い衝動が無いだけで、一般的な感情は一応ありますよ。それに、真由美さんのように美人が自分に抱きついているんです、反応しない男子高校生はそれこそ感情が無いか、別の趣味の人間でしょう」

 

「そっか……達也君にも欲はあるのね……」

 

 

 何か閃いたような表情をした真由美に、達也は呆れながらも諦めた表情を浮かべた。今の体勢では真由美から逃げ出す事は不可能だし、例え可能だったとしても逃げるような事はしなかっただろうと、客観的に分析していたのだった。

 

「何だかこの部屋、熱くない?」

 

「熱いのでしたら離れてください。多分それで熱く感じてるだけだと思いますから」

 

「そんな事無いわよ」

 

 

 そう言って真由美は、抱きついたまま器用に着ていた服を脱ぎ始めた。少しはしたないと感じながらも、達也は真由美の行動を止めはしなかった。

 

「あれ? 達也君何で服を着てるの? ほらほら、達也君も脱ぐの」

 

「………(この人は暴走すると厄介だな)」

 

 

 一度暴走してしまった真由美を宥めるのは、深雪を宥めるのより大変かもしれないと理解し、達也は一種の諦めを持って服を脱ぎ始める。その後で何が行われたのか、達也は一切口を割る事は無く、真由美は自分の行動を恥じてか顔を真っ赤にするだけで何も答えなかったという……




年内はIFかなぁ……

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