劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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何故かセットになってしまう二人……
そして七草粥の幟を見て「さえぐさ」と読みそうになる自分はダメなのかもしれない……


強引IFルート 水波&深雪編

 立ち会えなかったとはいえ、水波は達也が十三束と戦った事を知っていた。達也の彼女として、そして傍に仕える者として、彼が纏っている雰囲気で何があったのかをある程度把握できるまでに水波の勘は育っているのだ。

 

「達也兄さま、模擬戦お疲れ様です」

 

「さすが水波だな。何も言わなくても分かってるようだ」

 

「水波ちゃんも立派にお兄様の『従者』ですね」

 

 

 深雪の精一杯の意地なのだが、水波の事を『達也の彼女』として扱わない。あくまで『従者』であると強調するのだ。周りに人がいる時は従妹として扱うが、やはり彼女としては扱わないのだ。

 

「深雪姉さま、私は達也兄さまの『彼女』です。何時までもお認めになさらないのは些か執念深いような気も……ご当主様はお認めに下さったのですから」

 

「深雪、お前も俺と水波が付き合う事は認めてくれただろ? 何故水波を俺の彼女として扱う事を嫌がるんだ?」

 

「それは……」

 

 

 達也の事を敬愛していた事は深雪は本人にも伝えているし、それ以上の感情を抱いていた事も達也にはバレているだろうと思っている。それでも言い淀んでしまうのは、それが彼女にとって言ってはならない事だからに他ならない。

 

「深雪姉さまは、達也兄さまの事を本気で愛していたのですよ。それを後から出てきた私がかっさらうようにして達也兄さまの彼女としての地位を確立したので、それで私に嫉妬なされているのでしょう」

 

「水波ちゃん! 私は別にお兄様を奪われたなんて思ってません!」

 

「そうなのですか? ならそろそろ達也兄さまと私が一緒に入浴するのを許可してくれてもいいのではありませんか?」

 

「それとこれとは話が別です! お兄様とご一緒なんてうらやま――じゃなくてはしたないです! 私だってお兄様とご一緒した記憶なんて無いのですよ」

 

「それは深雪姉さまが昔、達也兄さまに対して苦手意識を持たれていたからでしょう? 普通の兄妹なら――そう深雪姉さまがお考えになっているのは知っていますよ」

 

「お前ら……もう少し仲良く出来ないのか」

 

 

 言葉だけ聞けば怒っているように思える達也だが、表情は若干苦目ではあるが笑顔だ。この二人のやり取りは既に何十回と繰り返されてきたもので、達也も慣れたものなのだ。

 

「ですがお兄様! この深雪を差し置いて水波ちゃんがお兄様とご一緒にお風呂に入ると言っているんですよ! 落ち着いてなどいれません!」

 

「達也兄さまと私の関係は、ご当主様からお許しされたものです。いくら深雪姉さまとはいえ、達也兄さまと私との時間に割って入る権利はありません!」

 

 

 二人が本気で言い争えば達也も仲裁に入るのだが、これはまだ大人しいレベルなので止めには入らない。だが、そろそろマズイという雰囲気が漂っているので、達也は折衷案を模索し、渋々ながらもそれを提案する。

 

「あの風呂は三人でも入れるだろ。水波と一緒に入るのに、深雪が同行すれば良い」

 

「「……成る程、さすがはお兄様(達也兄さま)です」」

 

 

 これで納得されるのは達也としては甚だ不本意なのだが、彼女と妹の両方に納得してもらうにはこれしかないのだ。水波は達也と一緒に入りたい、深雪は達也と二人っきりで水波が入浴するのを許さない。それなら、水波と深雪、二人と同時に入浴すれば、一緒に入浴するという水波の目的も、達也と二人っきりにさせないという深雪の目的も果たせる。

 

「(自己犠牲は今更だしな……)」

 

 

 部屋と風呂くらいは一人でのんびりしたいと思っている達也は、二人に見えない角度でため息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 桃色な空気が漂った入浴を終え、達也は地下室でCADの調整をしていた。本格的なメンテナンスでは無く、深雪と水波のCADの簡単な調整なので本人は同行する必要は無い。無いのだが、この二人が達也の傍を離れるなどするわけも無く、何故か本格的なメンテナンスをする事になってしまった。

 

「今日は私が先に測定させてもらうわね」

 

「仕方ありません……じゃんけんで負けたのですから素直に深雪姉さまに先行をお譲りします」

 

「あのな……昨日もメンテナンスしたんだが」

 

 

 細々とした調整なら兎も角、本格的なメンテナンスなど一週間に一回すれば大丈夫なのだ。それをほぼ毎日行う必要など、達也は感じていなかった。

 だが深雪と水波は毎日のようにメンテナンスを達也に頼み、そして下着姿で達也に抱きつこうとするのだった。測定する時はともかく、普段の達也はその姿を見て何も感じないわけではない。彼にも一応欲はあるのだから。

 

「達也兄さま、深雪姉さまの調整が終わったら私の番ですからね」

 

「分かってる。というか、二人ともそれ程調整する事も無いしな」

 

 

 連日連夜調整しているので、殆ど弄るところが無いのだ。だがこの二人は毎日のように調整を願い、そして測定器に下着姿で横になるのだ。あからさまに目的が別にある事は達也にも理解出来た。

 

「二人とも、もう服を着て良いぞ」

 

 

 測定を終え、一応の調整を始める為に達也は二人に背を向ける。その行動に二人は頬を膨らませてその背中を睨む。そして深雪と水波は互いに視線を相手に向け、同時に頷きその背中に特攻をかけた。

 

「お兄様、私たちを弄んで喜んでいるのですか?」

 

「達也兄さま、私は達也兄さまほど我慢強くありません。そろそろお相手してくれないと暴走してしまいます」

 

「深雪もお兄様にお相手してもらいたいです。さすがに全部は無理でも、少しくらいなら……」

 

「私は最後までお付き合い出来ます。達也兄さまの心にいる叔母さまを、私が忘れさせて差し上げます」

 

「……別に桜井さんが原因では無いぞ。さすがに高校生の内からそういうのはどうかと思うだけだ」

 

「進んでる人は高校生でもいますよ、お兄様」

 

 

 こういった話題は得意ではない達也は、深雪と水波の二人に押され気味で、最終的にはギリギリのところまで押し込まれるのだ。そして今日も、二人と一緒に寝る事で大人しくなると思っていたのだが、本番ギリギリまで付き合わされるのだった。




今までで一番強引かもしれない……

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