劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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ほのかは二回で終わりです


激甘ラブラブIFルートpart2 その2

 ナンパから助けてもらった事で、ほのかはますます達也に依存していた。怖い思いをしたところをカッコ良く助けられたのだから仕方の無い事かもしれないが、今まで我慢していたはずの外ですら、ほのかは達也にベッタリになっていた。

 

「達也さん、次は何処に行きましょうか?」

 

「ほのか、少し歩き難くないか?」

 

「いえ! 達也さんが歩幅を合わせてくれてますから」

 

「……気付いてたか」

 

 

 さりげなくではあるが、達也はほのかの歩調に合わせて歩いている。こういったさりげない優しさも、ほのかが達也に惚れた理由の一つだったりする。

 

「そう言えば達也さん、ピラーズ・ブレイクの練習の時、雫の頭を撫でようとしてましたよね? 深雪が割って入って撫でることはしませんでしたけど、あんまり他の女の子に優しくしてる場面は見たくありません!」

 

「そう言ってもな……あの目で見上げられると断り難いんだが……」

 

「確かに雫は可愛いですし、上目遣いも上手です。でも、達也さんの彼女は私なんです! 深雪は仕方ないにしても、達也さんに撫でてもらえるのは私の特権なんです!」

 

「分かった。今後は気をつける」

 

 

 依存癖というよりは独占欲な気もするが、達也はその事は指摘しない。これは全てほのかが自分の事を本気で想ってくれているからだと理解しているから。

 

「あれ? ほのかと達也さんはっけーん!」

 

「こらこら、あまり邪魔するものじゃないと思うが?」

 

「エイミィにスバル……二人もお買いもの?」

 

「寂しい女子高生同士、慰め合ってるのさ」

 

「達也さんはほのかが勝ち取ったしね」

 

「勝ち取ったって……俺は景品だったのか?」

 

 

 自分でほのかの事を選んだはずなのに、何故か周りからはほのかが勝ち取ったと思われている事を知り、達也は首を傾げエイミィに訊ねた。

 

「達也さんは一科生の中でも人気が高かったしね。二科生でも人気だってエリカから聞いたし、上級生も達也さんの事を気にいってる人は多いみたいだしね。七草元会長とか市原先輩も達也さんの事を気にいってたし」

 

「渡辺先輩も司波君の事は気にいってるようだったしね。あの人は彼氏持ちだったから、恋愛感情には発展しなかったようだが」

 

「もう! 達也さんは私の彼氏なんだから、エイミィもスバルもあまり変な事言わないでよ! そもそも、達也さんに告白したのは私なんだから! 勝ち取ったとかじゃなく、勇気を出したの!」

 

「ほのかから告白したんだ。まぁ、達也さんが告白するなんて思えないしね」

 

 

 エイミィの放った言葉に、達也は苦笑いを浮かべた。自分でもそんな光景は想像出来ないとでも思ったのだろう。

 

「さてと、それじゃあ邪魔者は去ろうかな。エイミィ、行こうか」

 

「そうだね。じゃあね、ほのか、達也さん」

 

 

 現れた時同様、二人はあっという間に去って行った。

 

「何がしたかったんだ、あの二人は?」

 

「達也さん、あんまり他の女子の事を考えないでください。九校戦の時、達也さんはお仕事だって分かってても他の女子を担当してるのを見てるのがつらかったんですから」

 

「そこまでなのか? ……依存癖が強まってるのか?」

 

「分かりません。でも、達也さんの事を考えると苦しくなって、達也さんが他の女子と話してると悲しくなるんです」

 

「そんなモノなのか、恋愛って……」

 

 

 達也には我を忘れる程の強い感情が無い。辛うじて残ってる恋愛感情も、ほのかが言うような事になる前に思考から切り離されるだろう。だからあえて、達也はほのかの気持ちが分かるとは言わなかった。

 

「達也さん、帰りましょう」

 

「別にいいが、帰ってどうするんだ?」

 

「何もしません。とにかく、達也さんと二人っきりになりたいんです」

 

 

 余程心配なのか、ほのかは達也の腕を引っ張って駅までの道のりを進んでいく。ほのかの力では達也を引っ張れるはずもないのだが、彼女はそんな事を気にしていられない程焦っているようだ。

 

「そんなに引っ張らなくても自分で歩けるんだが……」

 

「良いんです! 少しでも達也さんを他の女性の目から遠ざけたいんです!」

 

「言ってる事が過激になってきてないか? それって俺を外に出さないと言ってるようにも聞こえるんだが……」

 

「理想はそうですけど、さすがに監禁なんてしたくないですし……」

 

「(これが、レオが言ってた『ヤンデレ』というやつなのだろうか?)」

 

 

 夏休み前、レオが見つけてきた昔の雑誌に載っていた「ヤンデレ」の話題で幹比古と盛り上がっていたのを、達也は話し半分で聞いていたのだが、今のほのかがそれに当てはまるのではないかと、ふとそんな事を思っていた。

 

「達也さん? もしかして痛かったですか?」

 

「ん? いや、そうじゃないが……どうかしたのか?」

 

「い、いえ……何か考えてる風でしたので、もしかして私が鬱陶しくなったんじゃないかって……」

 

 

 勝手に思い込んで勝手に落ち込むほのかの頭を、達也は優しく撫でる。多少過激な事をされても、達也を「本当の意味」で傷つける事が出来る人間など存在しないのだ。

 

「ほのかがそこまで想ってくれてるのは、俺はありがたいと思ってる。こんなつまらない男にそこまで想えるなんて、凄いと思うぞ」

 

「達也さんはつまらなくないです! それに、私は自分がこんな性格だから、落ち着いた男の人と付き合うのが丁度いいんですよ。雫にも言われましたからね、『達也さんは依存するのに丁度いい相手』だって。まさかその雫が達也さんに惚れてるなんて思ってなかったですけど」

 

 

 駅の側まで来ているので、周りにはそれなりに人はいる。そんな中でも、達也もほのかも周りの目を気にせずに思いを伝えている。達也には照れる、という感情は存在しないのだが、ほのかには当然その感情は存在している。つまり何が起こるかと言うと――

 

「あっ……あうぅ……」

 

 

――周りの目に気付いたほのかの顔が真っ赤に染まったのだった。

 

「帰るか。二人っきりなら、ほのかも安心するんだろ?」

 

「は、はい……達也さん、意地悪です」

 

 

 人の悪い笑みを浮かべている達也に、ほのかは形だけの抗議をするのだった。そんな二人を見ている周りの人々がどう思おうが、達也とほのかには関係ないのだった。




次回はまたちょっと違ったIFをやります

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