劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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駆け足で終わらせました


OGIFルート その2

 摩利たちとの約束を果たす為、達也は早朝に家を出て魔法大学側に来ていた。

 

「おっ、さすが達也君。逃げずに来たな」

 

「逃げ出して何もなければ来ませんよ。ですが、先輩たちの事ですから、何かしらの行動は取るでしょうしね」

 

「相変わらず皮肉屋だな、君も」

 

 

 午前と午後で行動を分ける為、待ち合わせの場所にいたのは摩利のみ。真由美と鈴音はそれぞれの準備の為に遅れて合流する事になっているのだ。

 

「しかし、現十師族の七草家の令嬢と、元数字付き・エクストラの家系の市原先輩にちょっかいを出すなんて、どれだけ無謀なんですか」

 

「あぁ、君は市原がエクストラの家系だって知っていたのか」

 

「横浜の件で、市原先輩の魔法を見ましたので」

 

「あたしや真由美もその時知った。アイツのボディーガードがエクストラらしく、そのついでに市原の事情も聞いたんだが、君は何処からその情報を得たんだ?」

 

 

 摩利は真由美と違い、達也がエクストラなのではないかなどと疑っていない。だから数字付きにまつわる闇の部分を、何故達也が知っているのかなどとは分かるはずもなかった。

 

「まぁ、それは置いておきましょう。そろそろ七草先輩がくる頃ですし」

 

「あ、あぁ……それにしても、君は制服じゃないと本当に高校生に見えないな」

 

「十文字先輩には負けますけどね」

 

 

 摩利の嫌味をサラリと流し、達也は向こうから近づいてきている存在に意識を向けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 摩利と分かれ、真由美に言いよっている男を説得する為に、達也はその男が待っているという場所に向かっている。恋人っぽく見せる為に、真由美は達也の腕に自分の腕を絡めて、より密着する体勢をとっていた。

 

「七草先輩、歩き難いです」

 

「ダメよ、達也君。今は恋人なんだから『真由美』って呼ばなきゃ」

 

「はぁ……真由美さん、歩き難いので離れてください」

 

「この方が恋人っぽいでしょ? それに、女が勇気出してしてるんだから、少しは察しなさいよ」

 

 

 そういう感情に疎い達也は、真由美の行動の裏に、本当にこういう事が出来る間柄になれれば、という密かな野望には気付けなかった。だが、そういう気持ちを抱いてくれているのだろうという事は理解出来たので、それ以上真由美の行動についてとやかく言う事は無かった。

 

「やぁ七草さん、待ちわび――誰だい、その男?」

 

 

 呼びだした男が真由美に気付き笑みを浮かべかけて、隣に立つ――腕を組んでいる――達也の存在を認識し表情を崩した。

 

「(随分とチャラい男だな……こういう男なら、七草家の威光とか気にしないのだろう)」

 

 

 達也は、目の前に立つ男の雰囲気から『普通の』魔力など、あらゆる事を『視た』が、どう頑張っても真由美と釣り合いそうにも無かった。

 

「この人が私の彼氏です」

 

「こ、この僕よりそんな男を選んだというのかい?」

 

「貴方よりこちらの達也さんの方がよっぽどイイ男よ。見た目もだけど、内面も将来性も」

 

「ぼ、僕は○○企業の御曹司だぞ!? その僕より将来性があるというのか!」

 

「こちらの達也さん、FLTの重役の息子さんで、ご本人も開発に携わっているの。貴方より既に稼いでいるし、魔法界の発展にも貢献しているのよ。今の時点で貴方は魔法界にどれだけ貢献してるというのかしら? それに、貴方が欲しいのは私じゃなく『七草』の名前ですよね。友達が貴方の噂を聞いたらしいのですが、相当な下種らしいですね、貴方って」

 

 

 真由美に自分の本性が知られていると気付いた男が、口封じをしようとしたのか指を鳴らして伏せていたチンピラに二人を襲わせようとしたが、体術で達也に敵うはずもなく、あっけなく撃退されてしまった。

 

「な、何故だ……僕は七草の名を手に入れ自由な生活を……」

 

「貴方は十師族を甘く見ていますね。貴方のような人が背負えるほど、十師族の名は軽くありませんよ」

 

 

 見下すように言い放ち、達也は真由美を連れて摩利の許へ戻る事にした。背後からは絞り出すような声が聞こえた気がしたが、振り向く事はしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一先ず摩利と真由美を合流させ、今度は鈴音に言いよっている相手を撃退する為に別の場所へと移動した達也を待っていたのは、またしてもチャラそうな男だった。

 

「鈴音さん、あの人が?」

 

「ええ、最近付き纏われているんです」

 

 

 今回は周りに他の存在は確認出来なかったので、一先ず警戒のレベルを下げた。だがあの男本人の観察がまだなので、完全には警戒は解かなかった。

 

「市原さん、その男は誰ですか?」

 

「こちらが、私がお付き合いさせて頂いている司波達也さんです」

 

「お付き合い? ついこの間まで付き合ってる人はいないと言っていたではありませんか」

 

「最近お付き合いを始めたのです。ですので、これ以上付き纏うのは……」

 

 

 鈴音の言葉が信じられなかったのか、男が急に大声を上げて、懐から刃物のようなものを取り出して鈴音に突っ込んできた。よくある『人に取られるくらいなら殺してしまえ』とかいう展開なのだろう。 

 だが、そんな行動を達也が見逃すはずも、むしろ気付いていない訳もなく、鈴音からかなり離れた時点で達也はその男を沈めた。

 

「後は警察に任せましょう。鈴音さん、これで付き纏われる事は無くなりますよ」

 

「すみません、司波君。わざわざこんな演技を」

 

「まぁ、成り行きでしたからね」

 

 

 後日、鈴音に言いよっていた相手は、警察に捕まり、真由美に言いよっていた相手は、親ごと裏社会との付き合いが露呈し、こちらも警察の厄介になる事になったらしいと、達也は摩利から聞かされ、解放された二人を祝して打ち上げをすると誘われていた。

 

「達也君のお陰で、平穏な大学生活を取り戻せそうよ」

 

「私もです。あれ以上付き纏われていたら、禁じられた魔法を使いそうでしたよ」

 

「お二人の役に立てたのでしたら、あの芝居にも意味があったのでしょうね」

 

「あ……その事なんだけど、どうやら他の人にも見られてたらしくって、達也君の事を本当に私の恋人だって思ってる人がいるのよ」

 

「私も見られてたらしく、司波君との関係を聞かれました」

 

「……普通に後輩だと言ってください」

 

 

 達也の提案は、至極当然のものだ。達也と二人の関係は、高校の先輩と後輩、それ以上でも以下でも無いのだから。だが二人の反応はそれ以上な感じを思わせるものだった。

 

「やはりモテモテだな、君は」

 

「楽しんでますね、渡辺先輩……他人事だと思って」

 

「実際他人事だからな」

 

 

 この日を境に、達也の周囲に真由美と鈴音が現れる頻度が増し、その都度深雪の機嫌が下降するので、さすがの達也も頭を悩ませながら生活する事を余儀なくされるのだった。




続きは皆さんの妄想で……

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