劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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感動したかは定かではないですけどね……


感動の再会

 ミカエラ・ホンゴウは、七草家で生活している。行動に制限は無いが、何処へ行くにも監視は付き纏うのだ。それを不自由だとは思わないが、時折逃げ出したいと思う事はあった。

 そんなミアだが、今日は真由美と行動を共にしていた。理由は、リーナが面会を求めてきたので、その付き添いとして真由美が選ばれたのだ。

 

「ミア、久しぶりね」

 

「少佐……お久しぶりです」

 

「今はリーナで構わないわ」

 

 

 目の前で繰り広げられる、感動的な再会を見ながら、真由美は何故この場所で会せるように弘一が言ったのかが気になっていた。

 

「あれ? リーナと七草先輩?」

 

「光井さん。それに北山さんも……」

 

「どうしてリーナが日本に? 雫と入れ替わりでアメリカに帰ったはずだよね?」

 

「ちょっと用事があってね」

 

 

 雫とほのかがその場に現れたので、真由美はついつい達也を探してしまった。必ずしもこの二人と行動を共にしてるわけではないのだが、真由美の中では達也も一緒にいると思い込んでいたのだった。

 

「達也くんは?」

 

「達也さんは、まだ仕事が残ってるって。深雪もそれに付き合ってます」

 

「そう……」

 

「ですが、達也さんの事ですから、すぐに終わらせてくると思いますよ。私たちも近くで待とうって話になってますので、先輩たちもご一緒にどうですか? リーナは雫と初対面だし、色々と話そうよ」

 

「そうね。ミアもそれでいいかしら?」

 

「構いません」

 

 

 ほのかが積極的に動いたお陰で、真由美もリーナも気まずい空気にせずに済んだと安堵していた。一方の雫は、リーナの事をじーっと見て、これが深雪にライバルと言わせた交換留学生なのかとリーナの事を吟味していた。

 

「そう言えばホノカ、アナタもタツヤの婚約者候補なんだってね」

 

「アメリカでも達也さんの事は話題になってるんだね」

 

「実は、ワタシが日本に来た理由も、タツヤ絡みだから」

 

「あら、シールズさんももしかして?」

 

「マユミも候補だって聞いてたから、七草家が一高前を指定してきた理由はそうなのかなって思ってたけど、マユミは気づいてないみたいね」

 

「何がよ」

 

 

 年下のリーナが気づいて、自分が気づかないと言う事が気に入らないのか、真由美は少し不機嫌そうにリーナに問いかけた。

 

「偶然を装ってタツヤと対面させ、そのままあわよくばデートでもさせようと考えたのではないかなと思っただけですよ」

 

「あのタヌキオヤジ……」

 

 

 後輩の前だと言う事を忘れて、真由美は悪態を吐いた。真由美の本性を見たほのかと雫は、少し驚いた表情を浮かべたが、達也から真由美は猫被っていると聞いていたから、これが本性なのかと納得したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほのかたちが達也を待つこと数十分、店の前を達也と深雪、そして水波が通りかかったので合図を送った。それに気づいた達也は、二人を連れてほのかたちと合流したのだった。

 

「二人は分かるけど、何でリーナと七草先輩まで? それと、ミカエラさんでしたっけ?」

 

「昨日話したじゃない。ミアと会う場所が一高前だって。ミアと会ってたらホノカとシズクと会って、ここでお喋りしてただけよ」

 

「リーナの事情は分かったけど、七草先輩までご一緒なのは何故でしょう?」

 

「私はミアさんの付き添いという名の監視よ。偶々私しか時間が空いてなかったのよ」

 

 

 そう仕組まれたのだろうとさっき気が付いた真由美だったが、こうして達也と会えたことで、さっきまで感じていた弘一への恨みは、一先ず忘れたようだった。

 

「そう言えばタツヤ、貴方魔工科に転籍したんだってね」

 

「今更だな……昨日会った時にでも聞けただろ」

 

「すっかり忘れてたのよ。それで、来年は一科生に転籍するのかしら?」

 

「そのつもりは無い。というか、なるべく会わないように気を付けるとか言ってたのに、昨日の今日でさっそくとは」

 

「仕方ないでしょ! まさか本当にホノカと会うなんて思ってなかったんだから」

 

 

 達也が言外に相変わらず抜けていると指摘すると、リーナはその指摘を正確に受け止め反論する。その二人のやり取りを見ていたミアが、思わず吹き出してしまった。

 

「どうかしたの?」

 

「いえ……リーナが楽しそうだなと思っただけです」

 

「楽しくないわよ! タツヤにはいつもいつも意地悪されて」

 

「ですが、ステイツではそのような相手はいませんでしたよね?」

 

「それは……まぁ、そうだけど」

 

 

 彼女の役職を考えれば、同年代の友人がいなくても仕方ないだろうし、ましてや達也のようにからかう事が出来る異性などもってのほかだった。だがミアは、リーナがそのような相手が欲しいと思っていたのを知っていたので、今のやり取りを見て噴き出してしまったのだ。

 

「良かったですね、リーナ」

 

「ええ、ありがとう」

 

「ねぇ達也くん、何時までミアさんを七草で保護してればいいのかしら?」

 

「何時まで、というと?」

 

 

 リーナとミアのやり取りを見ていた達也に真由美が話しかけた。話しかけられた事で、達也の視線はリーナたちから真由美へと移る。

 

「あの時は達也くんたちが四葉だって知らなかったからウチで保護したけど、同じ十師族なら四葉で保護した方が良いんじゃない? このままだと、タヌキオヤジが交渉の道具にしかねないんだけど」

 

「そうですか。では、一度母上と相談してみます」

 

「そうして頂戴。もし決まったら連絡してね」

 

「分かりました」

 

 

 微妙に近い距離で話す二人を、ほのかと雫、深雪と水波、リーナとミアがつまらなそうに眺めていた。その事に気付いた真由美は、より一層達也との距離を詰めようとしたのだが、自然な動きで達也が離れてしまったので、不貞腐れたように頬を膨らませて席に戻ったのだった。

 

「さて、そろそろ帰るか」

 

「そうですね、お兄様」

 

 

 達也たちは合流しただけで何も頼んでないのだが、伝票はしっかりと達也の手に握られていた。

 

「あっ、ここは私が」

 

「気にしなくていいですよ」

 

 

 最年長の真由美が達也から伝票を取ろうとしたが、達也との身長差を考えれば、手を伸ばしても届かない位置に上げられてしまって取るに取れなかった。結局達也の奢りになり、真由美以外は素直に達也に頭を下げたのだった。




何もたのんでなくても全員分を払う達也……
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