劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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勉強会最終日です


見慣れた光景

 いよいよ試験も直前となり、勉強会も本格的なのはこれが最後と言う日、突如エリカが提案した。

 

「この中で理論分野で誰がトップで誰がビリか賭けようよ」

 

「賭け事とは感心しないな」

 

「いいじゃん! 賭けるのはお茶代くらいだからさ」

 

「でもよ、トップは達也で決まりなんじゃないか?」

 

「そうね。それにビリはアンタで決まりでしょうし、賭けにならないか」

 

「んだとコラ!」

 

「だってアンタなんか如何考えても二十位以内には入ってこないでしょ」

 

 

 エリカの言う通り、この勉強会に参加しているメンバーで、レオだけが校内に張り出される上位二十名には入りそうに無いのだ。エイミィも若干危ういところではあるのだが、レオと比べれば可能性は大いにあるのだ。

 

「それじゃあ賭けは不成立ね。エリカももう少し賭け甲斐のあるものを提案したら如何?」

 

「何よ深雪、さすがに達也君には勝てないって言うの?」

 

「当たり前じゃない。お兄様は去年は私の家庭教師だったのだから」

 

 

 達也が勉強を見てやら無くとも、深雪の魔法力なら筆記試験の点数など関係無く合格しただろうが、達也は深雪に筆記の方も疎かにはしてほしくなかったので自分が家庭教師役を買って出たのだった。

 

「うへぇ、深雪に教えられるのは達也君だけだもんね。よく考えたら当たり前か」

 

「そう言うオメェだって此処最近は達也に教わりっぱなしなんだぜ」

 

「アンタもでしょ。大体深雪やほのかたちが分からない問題がアタシに分かる訳無いじゃないのよ」

 

「エリカちゃん、それは威張って言うような事じゃ無いと思うんだけど……」

 

「でも、美月も結構お兄様に質問してたじゃないの」

 

「此処に居る皆が、達也さんに教えてもらってばかりでしたものね」

 

「達也さんには頭が下がる」

 

「ホント、達也さんが居なかったら私も結構ヤバかったかも」

 

 

 口々に達也の事を褒めるメンバーに、達也は呆れたのを隠そうともせずに言う。

 

「感謝を言うのは終わってからでも良いだろ、始まる前から終わった気分で如何する」

 

「達也君、せっかく息抜きしてたんだから、そんな事言わないでよ」

 

「息抜きって、まだ始まって二時間も経ってないだろ」

 

「お兄様、エリカはお兄様と違って二時間も集中力が持たないんですよ。もちろん私もほのかたちもそうですけどね」

 

 

 普段から集中して作業する事が多い達也にとって、二時間ぶっ通しで集中する事など容易いのだが、それを他の人に求めるのは酷だったようで、達也は自分のズレを実感した。

 

「仕方ない、お茶でも買ってくる。皆は何が良い?」

 

 

 達也のおごりと言う事で、エリカとレオは飛びついたが、他の面々は申し訳無さそうに俯いた。

 

「気にするな、息抜きを邪魔したせめてものお詫びだと思ってくれれば良い」

 

 

 達也のこの言葉に申し訳無さそうにしていた面々も、自分に言い訳をつけて自分自身を納得させた模様。次々に希望を言っていく。

 

「それじゃあレオ、悪いが荷物持ちで付き合ってくれ」

 

「俺かよ! ……まぁ女子ばっかの場所に男一人ってのも気まずいしよ」

 

「それじゃあ達也君、レオ、よろしくー」

 

 

 エリカが二人を送り出す言葉を言い、二人の背中が見えなくなってからガールズトークのネタを振った。

 

「あの二人ならどっちが良い?」

 

「あの二人って、お兄様と西城君?」

 

「そ、アタシは達也君が良いな~」

 

「わ、私も達也さんの方が良いです!」

 

「私も」

 

 

 エリカにつられるようにほのかと雫が答える。美月とエイミィも頷く事でその会話に参加する。

 

「深雪は? って聞くまでも無いか」

 

「私が選べる訳無いでしょ? 西城君はお友達だし、お兄様は血の繋がった家族なんだから」

 

「でもさ~、もし達也君と血の繋がりが無かったとしたら如何? どっちを選ぶ?」

 

「もしもの話はあまり好きじゃ無いのよ。ゴメンなさいね」

 

 

 笑顔なのにただならぬプレッシャーを放つ深雪に、エリカは戦慄する。千葉の剣士としての勘で、これ以上は本当にマズイ事になると察し咄嗟に話題を変えた。

 

「それにしても誰もレオを選ばないんだね~。っま、当然ちゃ当然か」

 

「エリカちゃんがレオ君を選ぶと思ってた」

 

「アタシ!? 何でアタシがあんなヤツを選ぶのよ!」

 

「一番お似合い」

 

「雫まで何言うのよ!」

 

 

 さっきまで深雪をからかって遊んでいたエリカが、今度は周りからからかわれている。雫は冗談めかした言い方だったが、美月は幾分かマジそうで、エリカは何となく居心地の悪さを感じていた。

 

「大体、何でアタシがあんな野蛮な男とお似合いなのよ!」

 

「でも、エリカは西城君と良く話が合ってるようだけど?」

 

「確かに、良く同じ事を同じタイミングで言ってるね」

 

「ちょっと! 深雪もほのかも冗談言うのはやめてよね!」

 

「で、そこのところ如何なんですかね?」

 

「エイミィ! 悪乗りは止めてってば!」

 

 

 エリカをからかって盛り上がってたところに、達也とレオが戻ってくる。

 

「何だ? 随分と盛り上がってるじゃねぇか。いったい何の話だ?」

 

「アンタの所為でアタシがからかわれたじゃないの! 如何してくれるのよ!」

 

「な、何だいきなり……俺は何もしてねぇじゃねえかよ」

 

「うっさい!」

 

「おい、今は洒落にならねぇ……」

 

 

 両手がふさがってる所にエリカからの一撃を喰らい、レオは後ずさり転んだ。持っていたお茶類は宙を舞ったが、達也の尋常では無い動きで全て回収された。

 

「エリカ、照れ隠しにレオを巻き込むのは良く無いぞ、ほれ」

 

 

 エリカがリクエストした飲み物をエリカの腕に滑り込ませ、達也は他のメンバーにも飲み物を配る。照れ隠しだと言う事がバレていて、エリカは何となく頬を赤く染めたのだった。

 

「達也君は何を話してたのか検討がついてるんだね」

 

「あれだけ大きな声で話してたら普通聞こえるだろ」

 

「おい達也、飲み物は庇って俺は庇ってくれないのかよ」

 

「あれくらいでやられるなら、お前の腕がその程度だと言う事だ。人を怨む前にもっと鍛えたら如何だ?」

 

「そうそう、達也君の言う通りよ。軽く殴ったくらいで倒れるなんて、アンタ貧弱なんじゃないの?」

 

 

 達也の冗談を利用して何時もの流れに持っていくエリカ。レオもすぐにエリカの挑発に乗って揉めだす。

 

「達也さん、エリカちゃんとレオ君は止めなくて良いのでしょうか?」

 

「あの二人はあれが普通なんだから良いんじゃないのか? 深雪たちは如何思う?」

 

「私も放っておいて良いと思います」

 

「私もそう思う。あの二人はあれが普通」

 

「そうですね。達也さんの言うようにあの二人はあれが普通ですよね」

 

「私は判断しかねるよ。だってそこまで付き合いが無いんだから」

 

 

 結局達也たちが勉強を再開するまでエリカとレオを揉め続けたのだが、美月だけがオロオロと二人を見つめていたのだった。

 そして運命の試験が幕を開ける……




次回から漸く原作に突入します
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