劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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モテる婚約者だと大変なんだろうな……


深雪の不安

 普段ならとっくに帰宅している時間になっても深雪たちが帰ってこないのを、ミアは心配になり電話するかどうかで悩んでいた。達也は今日も克人や真由美たちとミーティングなのでいなくても仕方ないが、深雪や水波は生徒会の業務で遅くなる時以外は、とっくに帰宅している時間なのだ。

 万が一何かがあったとするなら、自分はどう動けばいいのかと頭を悩ませていたら、玄関から音が聞こえてきた。

 

「ミアさん、ごめんなさい。遅くなってしまったわね」

 

「いえ、ご無事でなによりで……あの、その荷物は?」

 

 

 水波が持っている荷物が気になったミアは、出迎えの挨拶を切り上げ、質問してしまった。主に対する態度としては問題ありと判断されそうな行動だが、深雪は特に気にした様子は無かった。

 

「これは明日の為の材料よ。ミアさんの分も用意しておきましたので」

 

「明日……なるほど。それで帰りが遅かったのですか」

 

「お買い物だけじゃなくって、明日の事を話していたら結構時間が経ってたのよね」

 

 

 アイネブリーゼでお喋りしていた事もあって、深雪たちが帰宅したのは何時もより一時間も遅い時間だった。ミアが心配しても仕方ないと反省し、深雪と水波はそろってミアに頭を下げた。

 

「連絡くらいしておけばよかったわね。ごめんなさいね、ミアさん」

 

「い、いえ! 私が勝手に心配してただけですから……それに、深雪様は達也様の婚約者候補、他の候補の方とお話しして時間が経ってしまうのも仕方ないと思いますし、それくらい私が理解してなければいけない事でしたから、深雪様が頭を下げる必要はございません」

 

「それじゃあさっそく、明日の用意をしてしまいましょうか。お兄様はまだお帰りにはならないでしょうし」

 

「その事ですが、達也様は本日、ミーティング後に寄るところがあると連絡を受けております。ですので、食事の用意はいつもより遅くて構わないと」

 

「そうなの? 寄るところってどこかしら」

 

 

 少し考えたが、深雪の頭には複数の候補が浮かんでおり、一つに絞り込むには判断材料が少なすぎた。よってどこに寄るのかを特定する事を諦め、遅くなるなら幸いと明日の用意を始めるのだった。

 

「いざ本命チョコを渡そうと考えると、なんだか緊張するわね」

 

「何故です? 去年も達也様にはチョコをお渡しになっているのですよね?」

 

「去年までは、妹としてお兄様に渡していたから。婚約者候補となるとまた、感情とかの整理がつかないのよね」

 

「そういうものですか……私は去年、達也様に助けていただいたお礼としてチョコを渡しましたから」

 

「私は四葉本家にいたため、渡す事は出来ませんでした」

 

「そう言えばそうだったわね。もう水波ちゃんも長い事この家にいるように思ってたけど、去年の四月からここで生活し始めたんだっけ」

 

 

 正確には三月末からだが、そんな細かい事にツッコミを入れる事は水波もしなかった。

 

「リーナから聞きましたが、達也様は一高内でも大変人気だそうですね」

 

「入学したては二科生であることが原因で、いわれのない侮辱を受けておられましたが、お兄様の実力の一端を垣間見た後は、お兄様を侮辱する輩は減りましたから」

 

「達也様の実力というと、九校戦以降ですか?」

 

「水波ちゃんもテレビで見てたんだっけ?」

 

「正確には、真夜様がご覧になっておられたのを、私も一緒になって見ていたのですがね」

 

「叔母様も見ておられたのね」

 

「何せ真夜様は、達也様のご活躍を楽しみにしておられましたから」

 

 

 選手として参加するとは真夜も思っていなかったが、エンジニアとして十分な働きはするだろうと思い、一昨年の九校戦の中継を見ていた。様々な思惑が絡み合った結果、達也がモノリス・コードに参加する事になったと決まった時には、真夜は水波の手を取って喜んだらしい。

 

「九校戦でのご活躍もさることながら、その後のご活躍も、真夜様は大層喜んでおられましたから」

 

「お兄様の手に掛かれば、犯罪シンジゲートなど相手になりませんから」

 

「犯罪シンジゲート? それってもしかして、無頭竜ではありませんか?」

 

「あら、ミアさんも知っていましたか」

 

「これでもUSNA軍所属でしたから。突如壊滅したと聞かされた時は、何があったのかと不思議でしたが……そうですか、達也様が」

 

「分かってるとは思うけど、この事は他言無用だからね」

 

「心得ております。リーナにも内緒にしておきます」

 

 

 スターズ総隊長とはいえ、リーナは達也本来の魔法を知らない。再成を間近で見たとはいえ、彼女はそれを精神干渉魔法だと勘違いしているのだ。

 

「参考までに、昨年達也様が頂いたチョコの数をお聞きしても?」

 

「そうね……百は無かったと思うけど、今年はそれくらい行きそうよね」

 

「一年の間でも、達也様の人気は高いですからね。九校戦で担当してもらった女子は、既に達也様の虜ですから」

 

「今年は魔工科生と言う事もあって、一科生の女子も遠慮しないでしょうからね」

 

 

 もう補欠と罵る人間はいないし、ましてや達也は次期四葉家当主としての地位も確立している。婚約者候補にはなれなくても、チョコを渡すくらいなら出来ると考える女子が多くいたとしても、深雪は仕方ないと考えているのだ。

 

「それに、お兄様の人気は、一高だけにとどまりませんからね」

 

「三高のエリート女子集団、一色家のご令嬢や十七夜のご令嬢なども候補に挙がってますし、国防軍内にも達也様のファンは多いようですからね」

 

 

 まさか「大黒竜也」として同じ隊にいるとは思っていない女性士官も多く、達也と面識のある響子にチョコを託す女性士官も少なくない。加えて、開発第三課に属している女性からも、達也はチョコを貰うだろう。そう考えた結果、少なく見積もっても百は下らないだろうと深雪は判断し、水波やミアも、それを大げさと笑い飛ばす事が出来なかったのだった。




また色々と出番が無かった人たちを出さないとな……
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