劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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三高の四人が完堕ちしたら深雪は如何するのか考えなきゃ…


今更の自己紹介

 試験が済んだからと言って、授業が無くなる訳では無い。そして魔法科高校にも体育と言うものは存在しており、1-Eは現在体育中だ。

 

「オラオラ! 退きやがれ!!」

 

 

 コートを所狭しと駆け巡るレオ、レッグボールと言われるフットサルから派生した競技が今日の内容だ。

 

「達也!」

 

 

 まともに受ければ昏倒するほどの勢いでパスを出したレオ、達也はそれを上に蹴り上げて跳ね返ってきたところを踏みつける。そして味方の一人の動きを確認して壁に向けてパスを出す。思いがけない動きに敵は反応出来なかったが、パスを出した相手はしっかりとその動きを読んでいて、冷静にシュートを放った。

 

「へぇ、アイツなかなかやるな」

 

「動きも良いし読みも悪く無い」

 

 

 一学期も終わりに差し掛かっており、達也もレオもクラスメイトの顔と名前くらいは把握している。だが二人共その相手とは話した事が無かった。

 

「(吉田幹比古、古式魔法の名門、吉田家の次男か……)」

 

 

 レオは彼の素性を一切知らないのだが、達也はある程度調べていた。吉田家は伝統的な修行方法を受け継いでいると聞いていたのだが、彼の身体はそのような修行の形跡が見られないのだ。

 

「(爪を隠した鷹が、随分と近くに居たものだ)」

 

 

 などと考えていたら、横から大声で呼ばれた。

 

「達也!」

 

 

 もう一回もの凄い勢いでレオからのパスが来て、達也はそれを上段回し蹴りでゴールに叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試合が終わり、休憩中に達也とレオは例の相手との接触を図った。

 

「ナイスプレー」

 

「意外とやるじゃねぇか、吉田」

 

「幹比古だ。苗字で呼ばれるのは好きじゃ無い」

 

 

 名門吉田家の直系が、苗字で呼ばれるのを嫌うのに、達也は何となくの心当たりがあった。

 

「おう、分かった。それじゃあ俺の事もレオで良いぜ」

 

「俺も幹比古と呼ばせてもらって良いか? その代わり俺の事も達也で良い」

 

「オーケー達也。実を言うと君とは話してみたかったんだ」

 

「実は俺もだ」

 

 理論分野で一位と三位、お互いが意識していても何もおかしく無いのだが、幹比古は達也が自分の何処を気にして話してみたかったのか不思議に思っていた。

 

「何だか疎外感だな……」

 

「レオとも話してみたかったよ。何せあのエリカとまともに付き合えるんだからね」

 

「何か釈然としねぇな……」

 

「幹比古はエリカと前からの知り合いなのか?」

 

 

 何気無い質問だったのだが、幹比古が顔を顰めたのを見て質問を取りやめるつもりだった。だが横からの割り込みで達也の心遣いは不発に終わる。

 

「所謂幼馴染ってやつ?」

 

「エリカちゃん、何で疑問系なの?」

 

「知り合ったのが十歳の時だからね。幼馴染って呼べるか微妙なところだし、最近は避けられてるからね。ねぇ、達也君は如何思う?」

 

「幼馴染で良いんじゃないのか」

 

 

 いきなり現れてマイペースに物事を進めるエリカに、達也は呆れながらも答える。一方のレオと幹比古は、エリカの格好を見て固まってしまっていた。

 

「え、エリカ、何て格好をしてるんだ!?」

 

「何って、伝統的な女子用体操服だけど?」

 

 

 エリカの剥き出しの太ももを見て顔を真っ赤にしている幹比古に、エリカは気にした様子も無く答える。

 

「伝統!? そんなのが伝統だと言うのかい!?」

 

「そんなに変か? 変ったデザインのスパッツだとは思うが」

 

 

 焦る幹比古を他所に、達也は普段通り淡々と話している。その態度にエリカも安心して話を続けられるのだ。

 

「スパッツじゃないわよ」

 

「でもアンダースコートって訳じゃないだろ」

 

「あのね達也君、いくらアタシだってスコート無しでアンダースコートは穿かないわよ。これはねブルマーって言うのよ」

 

「ブルマー? (ブルーマー)みたいな名前だな。昔はそんな格好で掃除してたのか?」

 

 

 達也のボケとも取れる発言にエリカは興奮したように答える。

 

「そんな訳無いじゃん! てか、女子用体操服だって言ったじゃん!」

 

 

 エリカが怒鳴ったおかげか如何かは分からないが、此処でレオが現実に復帰した。

 

「ブルマーって言うとあれか、昔のモラル崩壊時代に女子中高生が小遣いほしさに親父共に売っていたと言う……」

 

 

 だが復帰しなかった方が彼の為だったかもしれな。

 

「馬鹿! 最低!!」

 

 

 顔を真っ赤にしたエリカに脛を蹴られ、ゴロゴロと悶絶するレオ。そしてレオの脛を蹴ったエリカもピョンピョンと跳ねている。

 

「信じられない、アンタの頭の中は如何なってるのよ!」

 

「前に読んだ雑誌にそんな事が書いてあったのよ」

 

「ふ~ん、何の雑誌を読んだんだか……そう言えばミキもそんな目で見てたし、男子ってこんなのが良いの?」

 

「エリカちゃん、やっぱり普通のスパッツに戻した方が良いんじゃない?」

 

「そうね、あんまり動きやすくないし元に戻そうかな」

 

「それが良いよ……あれ?」

 

 

 頷いた美月だったが、聞いた事の無い名前に首を傾げた。

 

「エリカちゃん、『ミキ』って誰?」

 

「幹比古だからミキ」

 

「何でそうなるんだよ! 女みたいな名前で呼ぶなよ!」

 

「じゃあヒコが良かった?」

 

「そうじゃないだろ!」

 

 

 幹比古の気持ちも分からないでも無いと言う感じで、達也が助け舟を出した。

 

「エリカ、そろそろ戻った方が良いぞ」

 

「へ? ……ヤバッ! それじゃあ達也君、また後で」

 

 

 背後を指差す達也に疑問を感じながら、振り返ったエリカは慌てて去っていった。

 

「エリカちゃん、待ってよ!」

 

 

 置いて行かれた美月も慌てて去っていき、幹比古は達也に頭を下げた。

 

「すまない、ありがとう達也」

 

「気にするな。余計なお世話だったかもしれないがな」

 

「そんな事無いよ……それにしても達也は落ち着いてるね」

 

「何がだ?」

 

 

 エリカの格好を見れば健全な男子高校生は少なからず興奮を覚えるだろうし、彼女と近しい間柄のレオや幹比古の反応は当然だっただろう。しかし達也は顔色一つ変えずにエリカと会話していたのだ。その事を幹比古は不思議に思ってたのだ。

 

「それはしょうがないぜ幹比古。何せ達也の妹はもの凄い美少女だしな」

 

「ああ、新入生総代の司波深雪さんか。初めて見た時はこんな綺麗な子が存在するのかと思ったよ」

 

「おい達也、可愛い妹が狙われてるぜ」

 

「冗談はよしてくれよ! あんな人と付き合えるとしても、緊張しちゃって会話すら出来ないよ」

 

「まあそうだろうな。それ以前に彼女はかなりのブラコンっぽいし、付き合うには難攻不落のお兄様を倒さなきゃいけないしな」

 

「……レオ、今度ゆっくりと話し合おう」

 

「おお怖、俺はまだ死にたくねぇぜ」

 

 

 幹比古は、達也が自分の何処に興味を持っているのかは分からないが、自分が達也の何処に興味を持ってるのかは分かっている。魔法無しで並み居る上級生を薙ぎ払い、テロリストを撃退するだけの力を如何やって手に入れたのかを知りたいのだ。

 だから幹比古は、達也とレオを戦わせてみたかった。そして自分も達也と戦ってみたいと思っていた。

 

「幹比古?」

 

「え?」

 

 

 そんな事を考えていたので、急に名前を呼ばれて幹比古は身構えてしまった。

 

「おいおい、随分と物騒だな」

 

「ゴメン……」

 

 

 達也とレオに苦笑いされ、幹比古は気まずそうに謝ったのだった。




幹比古登場。これで主要キャラは全員ですかね

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