劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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達也の秘密は、驚かずには聞けないですしね……


驚愕の連続

 一つ目の質問の答えを得て小さく頷き、リーナは次の質問を達也に投げ掛ける。

 

「どうやってベンを止めたのかしら? 間違いなく分子ディバイダーは発動していたし、あのまま行けば船ごと顧傑は沈んでいたはずなのに」

 

「さっき言った通り、俺は二つの魔法を得意としている。その一つである分解――ではなく、無系統魔法の術式解体でベンジャミン・カノープスの分子ディバイダーの術式を吹き飛ばしただけだ」

 

「その後は? 交渉するにしても、相手は正式な軍人よ。学生であるタツヤがイニシアティブを取れるとは思えないんだけど」

 

 

 リーナは、達也が四葉の人間であることは知っているが、軍属にある事は知らない。その事に気付いた深雪と亜夜子は、リーナに勝ち誇った表情を見せたのだった。

 

「……何よ? ミユキまでそんな顔して」

 

「いえ。お兄様は国防軍の特務士官なのよ。だから、USNAの軍人相手だろうが、交渉において後れを取る事は無いのよ」

 

「そもそも、達也さんは口が達者ですからね。方便も本当のように感じさせる話術をお持ちですから」

 

「あまり褒められている気がしないのは気のせいか?」

 

 

 達也が視線を向けると、深雪も亜夜子もニッコリと笑みを浮かべながら視線を逸らす。

 

「それだけ達也兄さんの交渉術が優れていると言う事ですよ」

 

 

 深雪と亜夜子の視線の先にいた文弥が、慌てたようにフォローを入れた。

 

「別に気にしてないから文弥が慌てる必要は無いんだが」

 

「あう……」

 

 

 慌てていた事を指摘され、文弥はしょんぼりと俯いた。

 

「さて、まだ正式に決まったわけではないが、婚約者として決まった人間を住まわす場所を母上が用意してくれるようだ。深雪だけ特別扱いするわけにもいかないということで、俺は一日ごとに別の場所で生活する事になると思う」

 

「つまり、四葉家で用意した部屋に、タツヤが泊まりに来ると言う事?」

 

「そうなるな。最終的に何人になるかは分からないので、詳しい周期は今のところはっきりと言えないが」

 

「お兄様、決定しているのはリーナだけですか?」

 

「いや、七草先輩も決定したようだ。今回の働きを受けて、母上が決定したらしい」

 

「そうですか……」

 

「当然、深雪も決定しているようだがな」

 

 

 自分がまだ決定していないと思い込み落ち込んだ深雪に、達也が付け加えるように伝える。その言葉を受けて深雪は一瞬で立ち直ったのだった。

 

「達也さん、私や夕歌さんはどうなるのでしょう?」

 

「正式に決まるのは春休みに入ってからだが、断る理由も無いと俺は思っている」

 

「そう言う事ですので、深雪お姉さまもアンジェリーナさんも、これからは同じ立場としてよろしくお願いいたしますわ」

 

「そうね。亜夜子ちゃんも婚約者として認められるのであれば、今までの関係以上に仲良くする必要があるものね」

 

「ワタシもアヤコとも仲良くしたいわ」

 

 

 言葉だけを聞けば、仲良くするのだろうと思えるが、そこに込められた意志が、相手を見る目が言葉とは裏腹な本音をはっきりと表しており、文弥はますます居心地が悪そうに達也を見る。

 

「別に無理に仲良くする必要は無いが、あまりにも酷いと、婚約が白紙になるかもしれないから気をつけろよ」

 

「「「私たち、仲良しですから!」」」

 

 

 婚約の白紙という恐怖からから、三人はがっちりと握手を交わし達也に宣言する。リーナに至っては片言が抜けてはっきりとした発音でそう告げたのだった。

 

「ところで達也兄さん、その集団で生活出来るような建物のあてが、ご当主様にはあるのでしょうか?」

 

「FLT本社が使っていた研究施設を改装して使うとか言っていたぞ。そこならこの家からもさほど離れていないから行き来も楽だろうと」

 

「ですが、姉さんやまだ正式決定してはいませんが、三高の一色さんや他の三人はどうするのですか? その場所で生活するとなると、今までのように学校に通えないと思うのですが」

 

「何か考えがあるのだろう。それこそ、今回一条が使ったように、カリキュラムはこちらで受けて、採点は向こうでするとか」

 

「実技教科などは一高で受ければ良い訳ですからね。それに、最悪はお兄様が担当して差し上げればよろしいと思います」

 

「確かに達也さんが教えてくださるのでしたら、正式な教員に教わるよりも分かりやすく、また高度な技術が身に付く事でしょう」

 

「……アナタって、いったい何者なの?」

 

 

 四葉の人間であり、軍属であることはリーナも重々理解したが、それに加えて技術力の高さも今の会話から窺えた。普通の高校生ではないと分かっていながらも、リーナは聞かざるを得ない状況に陥ったのだった。

 

「達也兄さんは『トーラス・シルバー』として世界的に有名な技術者でもあるんですよ」

 

「えっ! トーラス・シルバーって、あの飛行魔法の!? USNAでも大量に発注した飛行魔法デバイスは達也が作ったというの!?」

 

「術式は俺が組み立てたものだ。デバイスは共同開発の技術者の手を借りて作ったものだがな」

 

「タツヤ……アナタって凄い人なのね……もう『凄い』って言葉で収まらないくらい驚いたわよ……四葉のプリンスにして国防軍の特務士官、それに加えてトーラス・シルバー……もう何を言われても驚かないくらい驚いたわよ」

 

「じゃあついでに教えると、一年前にリーナが調査していた戦略級魔法の使い手だが、あれは俺だ」

 

「えぇ!? じゃあ、タツヤも十三使徒なの?」

 

「いや、俺の魔法は公にされていないので、十三使徒ではないよ。大体、公にされているのならば、君が調査に来る必要は無かっただろ?」

 

 

 達也に指摘されて、リーナは恥ずかしそうに顔を背けたのだった。既にUSNAとは切れている事を確認してあるからこそ告げられた事実に、リーナは何度目か分からない驚きを感じていたのだった。




怒涛の暴露話だったな……

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