婚約者に決まった事をお祝いする為、雫たちはほのかの家に集まっていた。本来なら雫の家の方が広くていいのだが、潮と紅音が乱入してくるかもしれないという不安材料を取り除くためにほのかの部屋で行うことにしたのだった。
「とりあえず、皆、おめでとー!」
「エリカも、おめでとう」
「まさか僕まで選ばれるとはね」
ほのかの部屋にやって来たのは、雫、エリカ、エイミィ、スバル、千秋の五人だ。一高新三年生だけが集まったのは、偶然でも何でもない。
「他の人は呼ばなくて良かったの?」
「三高の一色さんは呼び出されてたし、他の三人は一色さんを待ってるって言ってたから」
「深雪も見失っちゃったしね」
「たぶん一緒に呼び出されたんじゃないかな? 彼女も魔法師の間でも血筋的に僕たちより上だからね」
「昔の私だったら、血筋がどうのこうのって怒ってたかもしれない」
千秋の発言に、ほのかと雫が一年の時の千秋を思い出した。
「そう言えば、達也さんの邪魔をするように動かされてたんだっけ?」
「お姉ちゃんが挫折したのは、司波君の所為だって思い込まされてたみたい」
「お姉さんもさっき見かけたけど、平河さんのところも姉妹で選ばれたんだね」
「お姉ちゃんは技術力も魔法力も高いから順当だと思うけど、何で私も選ばれたんだろう」
「そんなの、今度達也くんに聞けばいいじゃん。それより、今はお祝いよ、お祝い」
妙にテンションの高いエリカに、エイミィとスバルが首を傾げる。
「エリカ、そんなに選ばれたのが嬉しかったの?」
「君と司波君の関係から考えれば、選ばれるべくして選ばれたと僕は思ってたんだが」
「そうじゃないのよ。あの行き遅れババアに勝ったと思うと、最高にうれしいのよね」
エリカと姉の関係を詳しく知らない五人は、一斉に首を傾げた。もしここに深雪か達也がいれば違う反応をしたかもしれないが、残念ながらエリカが欲しかった反応をした相手はいなかった。
「平河さんと違って、姉妹の仲は良くないのよ。異母姉妹ってのも関係してるんだけど」
「複雑な家庭環境なんだね」
「でももう、あの家ともおさらば出来るわ。バカ兄貴に家の事は全部押し付けて、あたしは達也くんたちと幸せになってやるんだから」
「エリカらしいね。でも、西城くんは良いの?」
雫の質問に、エリカは本気で首を傾げる。何処が自分らしいのかに疑問を覚えた、のではなく、何故このタイミングでレオの名前が出てきたのかが分からなかったのだ。
「あたしとレオはただのクラスメイトよ。それ以上の感情なんて持ったことない。あっ、叩きやすい的って思った事はあるわね」
「それって、クラスメイト以下じゃないの?」
「どうだろうね。アイツの存在理由なんて、あたしに叩かれる以外あったのかしら?」
本人がいたら喧嘩になりそうな事もさらりと言い放つエリカに、五人は引き攣った笑みを浮かべる。
「てか、アイツの話なんてどうでもいいのよ。そんなこと言ったら、エイミィだって十三束くんとはどうなの? 結構仲よさそうだったけど」
「十三束くんとはお友達だよ。エリカと西城君みたいな関係……とはちょっと違うけど」
「同じ関係であることはまずないね。エイミィと十三束君が叩き、叩かれる関係だとは僕も思えないし」
クラスメイトや友達の話で盛り上がったところで、雫が全員に切り出した。
「もう少し落ち着いてからだけど、沖縄に行かない?」
「私たちだけで?」
「もちろん、達也さんたちも誘うつもり」
「婚前旅行ってわけね! あたしはもちろん行くわよ」
エリカが放った「婚前旅行」という単語に、ほのかが顔を赤らめる。
「ほのか、この程度で恥ずかしがってたら、達也さんと一緒に過ごす時に大変だよ?」
「一緒に……」
何を想像したのか、ほのかの顔は真っ赤に染まり、本人もそれを自覚しているのか、両手で顔を押さえる。そんなほのかに、意地悪な質問をする少女が二人、この場にいた。
「ほのかは何を想像したのかな?」
「同じ婚約者として、ほのかがどんな新婚生活を思い浮かべたのか興味があるわね」
「な、何でもない! 何でもないからエイミィもエリカも迫ってこないで!」
「何でもないなら、私たちに教えてくれるよね?」
「それとも、ほのかは何でもないような事で顔を真っ赤にするの? ちょっとそれはおかしいと思うけどな~」
「うぅぅ……」
じりじりとほのかとの距離を詰めるエイミィとエリカに、スバルと雫からツッコミが入った。
「それくらいにしておきたまえ」
「あまりほのかを苛めると、達也さんに報告して二人との婚約を解消してもらうよ?」
「こ、怖い事言わないでよ」
「ほんの冗談だってば」
雫の平坦な口調で告げられた恐ろしい事に、エイミィとエリカが慌ててほのかから離れて引き攣った顔でそう答える。
「ありがとう、雫」
「ううん、私は何もしてない」
ほのかのお礼を不要だと告げる雫に、彼女はもう一度だけお礼を言って話を戻した。
「沖縄旅行って、私たちと達也さんたちで行くの?」
「他にも行きたい人がいるなら誘うけど、あまり大勢で行くと達也さんとの時間が確保出来ないから」
「七草先輩とか、強敵だもんね」
「正直に言って、僕やエイミィが七草先輩に太刀打ち出来るなど思えないからね」
婚約者の中でも、深雪と真由美は別格だと全員が思っている。十師族の中でも頭一つ抜き出ている四葉家と七草家の直系で、更にあの二人は達也との距離も近い。
深雪は長年、妹として一緒に過ごしてきたから当然として、真由美はあっさりと達也との距離を詰め、腕を組むことまでやってのける。
「当面の目標は、七草先輩くらい達也さんと仲良くみえるようになる事かな」
「あたしたちも仲はいいけど、腕組みは出来ないものね」
雫とエリカの言葉に、残りの四人も頷いて同意するのだった。
次回から長きにわたりIFをお送りします。原作に追いついてしまったので、当分先に進めませんし……