劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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このメンツなら、普通は摩利なんですけどね


IFOG三人娘ルート その1

 魔法大学のカフェテリアで、達也の婚約者となった三人が顔を合わせていた。

 

「今日は私たち三人が達也くんを自由に出来る日です。何か行き先の希望などはあるかしら?」

 

「そういうのは真由美さんにお任せします。平河さんも、それで構いませんよね?」

 

「ええ……そもそも、何で私も今日なのかが疑問なのですが」

 

 

 七草真由美、市原鈴音、平河小春の三人が話し合いをしている中、集合時間五分前に達也が姿を現した。

 

「さすが達也くん。誰も気にした様子がないわね」

 

「新入生とでも思われたのでしょう。それで、何故この場所に集合したのでしょうか?」

 

「ちょっと大学に用事があったから、ちょうどいいかなって思ったのよ」

 

「そうですか」

 

 

 相変わらず真由美に対して尊敬の念が感じられない達也だが、真由美は気にした様子もなくあっという間に達也の腕に自分の腕を絡めた。

 

「それじゃあ、とりあえず移動しましょう」

 

「真由美さん、抜け駆けは感心できませんね」

 

「交代でリンちゃんや小春ちゃんもすればいいのよ」

 

「私はいいですよ……」

 

 

 未だに達也に負い目を感じているのか、小春はかなり消極的な態度で達也に接する。一方の鈴音は、何時も通りの先輩後輩の雰囲気で達也と接している。

 

「司波くんは私のような武骨な女性など興味ないでしょうし、真由美さんだけが腕を組めばいいのではないでしょうか。平河さんが遠慮するなら、やはり私も遠慮します」

 

「リンちゃんが文句をつけてきたのに、結局誰も達也くんと腕を組みたくないのね? じゃあ、一日中私が腕を組んでても文句はないわね?」

 

「歩きにくいので、少しは離れてください、七草先輩」

 

「達也くん、もう婚約者なんだから、いい加減名前で呼んでくれないかしら?」

 

「呼んだところで、腕は解いてくれないんですよね?」

 

 

 達也の責めるような視線に、真由美は笑顔のまま明後日の方角を向き、吹けもしない口笛で誤魔化そうとした。

 

「別にいいですけどね……」

 

「それじゃあ、しゅっぱーつ!」

 

「まるで真由美さんの方が年下ですね」

 

「リンちゃんは達也くんの隣にいても同い年くらいには見られるでしょうけどね」

 

「それって、司波くんに失礼なのでは……」

 

 

 小春のツッコミには付き合わず、真由美は達也の腕を引いてずんずんと進んでいく。そんな真由美を呆れた様子で眺めながら、鈴音がその後に続き、小春が慌てて三人の後を追いかける形になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼食時になり、真由美は四人掛けの席の隣に達也を座らせ、鈴音が正面、小春が斜め向かいというポジションになるように座らせた。

 

「映画なんて久しく観てなかったけど、面白いものね」

 

「映画は良かったのですが、何故子供向けのアニメ映画を?」

 

「たまには童心に帰るのも悪くないかなって思ったのよ」

 

「真由美さんは常に子供の心を忘れてないような気もしますが」

 

「そう? ……? それって褒めてるの?」

 

「さぁ、どうでしょうね」

 

 

 真由美と鈴音のやり取りをハラハラしながら眺めてる小春とは違い、達也は特に動じることも無くメニューを眺めていた。

 

「どうしようか? 達也くん、何食べる?」

 

「サンドウィッチとコーヒーで」

 

「……それだけでいいの?」

 

「あまり腹も減ってませんし」

 

「男の子なんだから、もうちょっと食べた方が良いと思うよ?」

 

「十文字先輩のような体型を目指してるわけじゃありませんので」

 

「ぷっ」

 

 

 思わず克人のような体型の達也を想像したのか、鈴音が小さく噴き出した。

 

「でも、司波くんも鍛えてるよね? やっぱり十文字くんみたいな人は目標になるの?」

 

「先輩と俺とでは鍛え方が違いますし、先輩は魔法技能でいくらでも補えますからね。俺みたいに細かな筋肉まで鍛える必要が無かったと思うのですが、あの体型は素直にすごいと思いますよ」

 

「十文字くん、確かにすごい威圧感だもんね。達也くんもすごいけど、十文字くんは見た目の雰囲気も相まって、ちょっと怖いくらいよ」

 

「確かに十文字くんの威圧感は、中条さんが泣き出しそうになるくらいでしたからね」

 

「あーちゃん、十文字くんに用がある時ははんぞー君に任せてたもんね」

 

「そうだったんですか? 俺はその光景を見たことは無いですが」

 

「司波くんが入学してくる前の話ですから。半年の付き合いで、辛うじて十文字くんに話しかけられるようになりましたからね」

 

「というか、十文字くんがあーちゃんに怖がられてるって気づいて、ちょっとしょんぼりしたからあーちゃんが頑張ったのよ」

 

 

 真由美の暴露に、黙って話を聞いていた小春が口元を抑えた、恐らくは笑っているのを隠そうとしたのだろうが、達也にも鈴音にもバレバレだった。

 

「十文字先輩って、そう言う事気にするんですね」

 

「意外とって言ったら失礼だけど、十文字くんは繊細なのよ?」

 

「器の大きいところばかり注目されてましたが、確かに繊細でしたね」

 

「そうそう、吸血鬼騒動の時だって、私がちょっと怖いって言ったら、済まないって言ってしょんぼりしてたし」

 

「それは真由美さんが狙ってやった事なのでは?」

 

「怖かったのは本当よ? あの顔で腕を組んで唸ってたんだから、いくら付き合いが長いからって怖いって思っちゃうわよ」

 

「魔法大学でも、十文字くんは周りから一目を置かれてる存在ですし、女子からは遠巻きに見られてる感じは確かにしますね」

 

「ああ、あれは十師族の当主様にどうやって近づこうかって人と、本当に同い年なのだろうかって観察してる子たちでしょ? 十文字くんも気にしてたけど、どうする事も出来ないって言ってたわ」

 

 

 相変わらず年齢詐称疑惑があるのかと、達也は克人に同情するのと同時に、同じ立場になった以上、自分もそういう目に遭うのだろうかと少し憂鬱になったのだった。




摩利はエリカたちの方で出す予定です

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