劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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原作にはいないキャラなので、口調が安定しない……


IF三高女子ルート その1

 四月から第一高校で第三高校のカリキュラムを受ける為、愛梨たちは四葉の用意してくれた住まいに引っ越してきた。

 

「さすがは四葉と言ったところでしょうか。私たち一人一人にこのような部屋を用意してくれるとは」

 

「風呂やトイレは共用じゃが、個人のスペースがあるのは良い事じゃ。いくら付き合いが長いとはいっても、やはりプライベートな空間は欲しかったしの」

 

「まぁ、達也様が遊びに来られても、一部屋余ってますから問題は無さそうね。もちろん、抜け駆けは許しませんからね」

 

「抜け駆けって、愛梨は何をするつもりなの?」

 

 

 栞の問いかけに、愛梨は顔を真っ赤に染め上げてそっぽを向いた。恐らく栞も愛梨が何を考えていたのかは理解しているが、あえて問いかける事によって抑止力としたのだろう。

 

「そろそろ達也殿が来る時間じゃし、その顔では出迎えられないじゃろ。わしたちが迎え入れている間に、落ちついておくんじゃな」

 

「いえ、大丈夫よ。達也様を出迎えるのは、私一人で十分です」

 

「気合いで元に戻しましたか……さすが愛梨といったところですね」

 

 

 香蓮の冷静な分析に、栞も沓子も思わず拍手を送ってしまった。何を想像していたのかは、愛梨の名誉の為に伏せておくが、それを気合いでカバー出来るのは、達也に会いたい一心なのだろう。

 

「今日から数日間、達也様はこの場所で生活してくださるそうですので、精一杯アピールするチャンスですわね」

 

「まぁ、愛梨はまず跡取りを生まなければならないからの。一色の家名を存続させるためには、最低二人は産まなければならないからの」

 

「沓子、貴女ストレートに物を言いすぎよ」

 

「これくらいで恥ずかしがってるようでは、先が思いやられる」

 

「仮にも巫女なんだから、はしたない事言わないでちょうだい」

 

「あの、達也様がお見えなのですが」

 

 

 香蓮の言葉で我に返った愛梨は、沓子を置いて玄関へ駆け出して行った。

 

「やれやれ、愛梨は何時まで経っても初心よのぅ……」

 

「同い年でしょうが」

 

 

 しみじみと呟く沓子に、栞が冷静にツッコミを入れた。付き合いの長い四人だから深いツッコミは発生しないが、他の人がいたらまた、別のツッコミが発生していた事であろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この空間に達也がいる、それだけで愛梨と香蓮はぎこちない動きになってしまっている。

 

「達也殿、部屋はあそこを使うとよい。ちょうど誰も使ってないから、達也殿のプライベート空間と言うことになる」

 

「俺は何処でもよかったんだが、そういう場所があるのなら使わせてもらおう」

 

「達也さんは知ってるかもしれないけど、お風呂とトイレは共用だから、入る時は気を付けてね。万が一誰かが入ってたら、悲鳴を聞くことになるから」

 

「共同生活をする以上、その事は常に頭に入れておく」

 

 

 達也としてみれば、気配で誰がどこにいるか分かるのだが、風呂やトイレにいる時に気配を察知されているなど恥ずかしい事なのだろうと考え、その事は言わなかった。

 

「食事はわしらが当番で作るので、達也殿はお気になさるな。多少味は落ちるかもしれんが、深雪嬢に負けないように頑張るからの」

 

「極端にひどくなければ、特に文句を言うつもりは無い」

 

「達也さんは料理出来ないの?」

 

「出来なくはないが、栞たちのように凝った物は作れない。どうしても男の料理になってしまうからね」

 

 

 栞と沓子が順調に達也と会話している横で、愛梨と香蓮は困った顔で互いを見つめていた。

 

「何故栞と沓子は緊張せずに話せてるのでしょうか」

 

「そんなこと私に聞かれても分かりませんよ……栞さんも沓子さんも緊張するようなタイプではないと思ってましたけど、やっぱりそうだったんですね」

 

「達也様が目の前にいるというだけで緊張してしまうのに、数日間同じ場所で生活するだなんて……」

 

「ほれ、何をしておるんじゃ。愛梨も香蓮も準備せぬか」

 

「「準備?」」

 

「達也さん、お出かけするみたいだから、お見送り」

 

 

 今来たばかりだが、達也も暇ではないのだ。一応顔は出しておかなければと立ち寄ったが、所要時間を考えれば、立ち寄らずに直接向かった方が早い。それでも顔を出したのは、数日間お世話になるという意思表示と、長時間もやもやさせるのは悪いという気遣いからである。

 

「すまないな。夕飯は一緒に食べれないかもしれないから、四人で先に食べて構わない」

 

「いえ、お帰りをお待ちさせていただきます」

 

「まぁ、特に食いしん坊もおらんし、達也殿が帰ってくるまで我慢しようかの」

 

「そうか。じゃあ、行ってくる」

 

 

 達也を見送った後、愛梨と香蓮はその場にへたり込んだ。

 

「なんじゃだらしのない……これから数日間、達也殿を出迎え見送る事など多々あろうに」

 

「し、心臓が言う事を聞いてくれないのですわ……」

 

「九校戦以上に緊張しました……」

 

「香蓮は作戦スタッフでしょうが」

 

 

 栞のツッコミに何かを返す気力もないようで、香蓮はその場から這うように部屋に戻っていった。

 

「やれやれ、二人があんな状況じゃから、わしらが緊張する暇がないというのに」

 

「沓子はまだいいよ、私なんかいつバレるかドキドキした」

 

「わしじゃってドキドキしておったんじゃがの」

 

 

 愛梨と香蓮が部屋に戻ったのを確認して、栞と沓子はやれやれと首を振って部屋に戻っていったのだった。




やっぱ沓子は難しいです……

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