劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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この二人、原作で全然出てこなくなったな……


IF大人ルート その1

第一高校カウンセラーの小野遥は、同じく第一高校保険医安宿怜美と二人で街をぶらぶらとしていた。

 

「最近、安宿先生と飲みに行く回数が多い気がしますね」

 

「そうでしたっけ?」

 

「だって、昨日も一昨日も一緒にいたじゃないですか」

 

 

 公安の仕事も一段落し、カウンセラーとして一高に戻ってきたのはいいが、その間に達也の婚約者選定は終わり、ライバル視していた響子はきっちりと婚約者に決定したと知り、遥は自棄酒の相手に怜美を選んで街へ繰り出しているのだった。

 

「それにしても、あの司波君がね~」

 

「安宿先生は立候補しなかったの?」

 

「私はほら、年も離れてるし、藤林さんみたいに家柄が良いわけじゃなかったからね」

 

「別に家柄で選んでたわけじゃないんだし、安宿先生なら選ばれたんじゃないですか? お綺麗ですし、司波君ともそれなりに仲よさそうでしたし」

 

「魔法力も技術力も低い私じゃ、四葉家のお嫁さんは務まらないと思いますけどね。お手伝いさんならまだしも」

 

 

 家事スキルには自信がある怜美が、そう呟くと、視線の先に話題の人を見つけた。

 

「あら? あれって司波君じゃないですか」

 

「こんな場所に? あんな見た目だけど、彼は未成年ですよ」

 

 

 遥と怜美がいるのは、いわゆる飲み屋街で、未成年の達也が一人でいるはずのない場所である。遥は半信半疑で怜美が指差す方へ視線を向けると、そこには確かに達也がいた。

 

「エレクトロン・ソーサリス……」

 

「あら、お知り合いだったの?」

 

 

 怜美は面識がないので知らなかったが、達也の隣にいるのは遥がライバル視している藤林響子その人だった。ライバル視と言っても、実力も魔法技能も遥かに響子の方が上で、あくまでも遥が一方的に敵意を持っているだけである。

 

「お久しぶりですね、ミズ・ファントム。最近忙しそうにしていましたが、何かあったのですか?」

 

「白々しい……貴女なら知っているんじゃないですか?」

 

「さぁ、私はただの一軍人ですから、何でも知っているわけではないのですが」

 

 

 響子の返しに、遥は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。響子がただの軍人ではないことは調べがついているし、彼女ならすべての情報を入手する事も可能であると遥は思っているのだから、その反応はある意味仕方なかったのだ。

 

「司波君も久しぶりね~。学校にいるのにあまり会わなかったけど、元気だったかしら?」

 

「安宿先生に会わなかったと言う事は、健康であったと言う事だと思いますが」

 

「それもそうね。一年の時は結構な頻度で保健室に来てもらってたけど、二年生になってからはますます忙しそうで、声を掛ける暇もなかったものね」

 

「まぁ、学校では問題なく過ごしていましたから」

 

 

 達也の言葉に隠された意味を、大人三人はしっかりと理解していた。学外では問題が次から次へと起こり、その解決に奔走していたのだ、多少なりとも疲れや怪我もあっただろう。

 

「そうだ、これから達也君と一緒にお店に行くのですが、お二人もご一緒にいかがですか?」

 

 

 響子の申し出に、怜美は面白そうに、遥は何か裏があるのではないかという表情を見せた。

 

「別に貴女たちの情報を欲してるわけじゃないですよ。いくら大人びているとはいえ達也君は未成年ですから。お酒の相手をさせるわけにはいきませんもの」

 

「教師として、生徒が居酒屋やそういう店に行くのを容認するわけにはいかないのですが」

 

「大丈夫ですよ。そういうお酒専門のお店じゃないですから。それに、そんな固い事言ってるとこの先困っちゃうかもしれませんよ?」

 

「……どういうことです?」

 

 

 そこで響子は、視線を遥から達也へ移し、面白がってるのを隠しきれていない笑みを浮かべた。

 

「どうやら八雲師匠が、弟子の中から小野先生の相手を探してるようですよ」

 

「はぁ!? 何考えてるのよ、あのハゲ坊主は!」

 

「仮にも弟子なんですから、師匠相手にその呼び方は……そもそも、坊主は剃髪しますから、ハゲではないと思うのですが」

 

「いいのよ! それじゃあ司波君、私たちの自棄酒に付き合ってもらうからね!」

 

「はぁ……念のために言っておきますが、俺は酒は飲みませんから」

 

 

 たとえアルコールを口にしたとしても、体内で分解してしまうので検査されたとしても一切数値が出るわけではないのだが、そういう問題以前なので、達也はアルコールを飲むつもりは無い。真由美に勧められた時も、頑として飲まなかったのだから、今回も飲むことはしないだろう。

 

「それで、二人は何処の店に行くつもりだったの?」

 

「あそこですよ。あのお店でしたら、ソフトドリンクも充実していますし」

 

「こんなに大人っぽいのに、司波君は飲んじゃ駄目なんておかしいけどね」

 

「……安宿先生、既に飲んでるんですか?」

 

 

 若干酔っぱらっているような怜美に、達也はため息交じりにツッコミを入れる。

 

「まだ飲んでないけど、司波君と一緒に飲めると思うと、なんだか嬉しくてね~。こんな思いになるなら、私も立候補しておけばよかったかしら」

 

「ねぇねぇ司波君、追加選定試験とかないの?」

 

「なんですかそれ……漸く選び終わったというのにまた募集しろと? それなら母上に直訴してください」

 

「どうやってコンタクトすればいいのか分からないわよ……」

 

「じゃあ諦めてください」

 

 

 達也の言葉に少しがっかりしながら、遥と怜美を加え四人で店へ向かったのだった。




まだ出番あるのかな……

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