劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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ちょっとずつ本編を進めつつ、またIFに入る予定です


旅行の準備

 沖縄へ行く準備をするために、あずさは紗耶香と待ち合わせをして買い物に出かける事にした。

 

「まだちょっと早かったかな……」

 

 

 待ち合わせ時間の三十分前に到着したあずさは、どこかで時間を潰そうと辺りを見回した。すると、見覚えのある男子二人を見つけ、向こうも自分に気付いたようなので手を振って駆け寄った。

 

「服部君に沢木君、どうしたの? こんなところで」

 

「いや、沢木が準備は早いに越したことは無いと言ってな」

 

「桐原は三十野と、五十里は千代田と出かけるらしいからな」

 

「そうみたいだね。私もこの後壬生さんと一緒にお買い物なんだけど、少し早く来ちゃって」

 

「中条さんもなのか。じゃあ壬生も交えて四人で買い物に行こう。うん、それが良い」

 

 

 あずさの返事を待たずに自己完結した沢木に、服部は呆れた視線を向ける。

 

「相変わらずだな、お前は」

 

「何がだ?」

 

「中条や壬生の意見を聞かずに決めるのはどうかと思うが」

 

「そうか? 中条さんは別行動の方が良いのかい?」

 

「いえ、そういうわけではないけど」

 

「じゃあ決まりだ。壬生が来るまでどこかで時間を潰すとしよう。そうだな……あの店でいいか?」

 

「……好きにしろ」

 

 

 服部の返事に沢木はあずさに尋ねる事を忘れ先に店へ向かっていく。沢木の勢いに押され気味だったあずさも、沢木と服部のコンビに思わず吹き出してしまった。

 

「珍しいな、お前が噴き出すなんて」

 

「ゴメンね。でも、沢木君ってあんなキャラだったんだって思ったらおかしくて」

 

「中条は沢木とあまり関わってなかったからな。知らなくても当然か」

 

「でも、面白い人で良かった。イメージでは十文字先輩みたいに堅物な感じだったから」

 

「十文字先輩のような貫禄を持った高校生がそんなにいるとは思えないがな」

 

 

 自分たちの一個上には克人、一個下には達也と、年齢にふさわしくない貫禄を持った人物に心当たりがあるだけに、同学年にまでいて堪るかという気持ちを込めて服部が答えると、再びあずさは噴き出してしまった。

 

「司波君もですが、沢木君も付き合いがないとそんなイメージなんだよね」

 

「司波は見た目通りだと思うがな」

 

「そうかな? 結構優しいんだよ」

 

「……あの学年の女子に人気らしいしな。男子からもそれなりに信頼されているらしいが」

 

「元一科生の十三束くんとか、現風紀委員長の吉田くんとか、仲が良い男子もいるみたいだけど、それ以上に疎まれたり妬まれたりしてるからね、司波君は」

 

「そりゃ、あれだけの女子から好意を持たれ、挙句の果てが四葉家の御曹司だ。妬みも僻みもあるだろ、そりゃ」

 

「服部君も最初は嫌ってたもんね」

 

「別にそういうわけでは……」

 

「おーい! 服部も中条さんも早く来たまえ」

 

 

 何時まで経っても追いついてこない二人にしびれを切らしたのか、沢木が少し離れた場所から大声で呼びかけてきた。その呼びかけに服部は頭を押さえ、あずさは楽しそうに笑ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二十分弱時間を潰してから待ち合わせ場所に戻ると、ちょうど反対側から紗耶香がやってきた。

 

「ごめんなさい、待たせちゃったかしら?」

 

「いいえ、服部君と沢木君と偶然会って、一緒にお茶してたから大丈夫ですよ」

 

「それでなんだが、壬生も一緒に行かないか?」

 

「何処に?」

 

 

 沢木の説明不足の誘いに、紗耶香は当然の反応を見せた。それを見た服部が補足説明をすべく沢木と紗耶香の間に割って入って口を開いた。

 

「俺と沢木も今度の沖縄に向けての買い物に行くのだが、中条からお前たちも買い物だと聞いてな。こまごまとしたものは違うだろうが、大まかなものは同じ店で買えるだろうからという事で一緒に行かないかと誘っているのだ、こいつは」

 

 

 服部の説明に紗耶香だけでなく沢木も頷いたのは良く分からなかったが、服部の説明で沢木が自分たちと一緒に買い物に行きたいという事を理解した紗耶香は、あずさを手招きして相談する。

 

「中条さんはどうしたい?」

 

「私はどちらでもいいですよ。壬生さんが決めてください」

 

「確かに一緒の場所に行くのに別々に行動する理由はないし、何かあれば魔法無しで助けてもらえるだろうし」

 

 

 紗耶香は武器ありきの闘いを専門にしているし、服部は魔法に頼る部分が大きい。だが沢木は魔法無しでも十分戦える実力を有しているので、何かあれば沢木に頼るのもありだと判断した紗耶香は、あずさが嫌じゃないと確認してから、誘いを受ける事にした。

 

「それじゃあ、一緒に行きましょうか」

 

「よし! それじゃあさっそく行こう」

 

「何だか楽しそうね、沢木君」

 

「旅行というのは、当日も楽しみだが、こういった準備してる時間も楽しいものだからな」

 

「なんとなく分かるわ、その気持ち」

 

 

 はしゃぐ連れ二人を見て、服部は頭を押さえ、あずさは少し恥ずかしそうに視線を彷徨わせる。

 

「時に壬生、司波君とは上手く行っているのかい?」

 

「いきなり何を……まだ婚約しただけで特に何もしてないわよ」

 

「そうなのか。いや、四葉家の御曹司である司波君と婚約したのだから、何か考えも及ばないことがあるのかとも思っていたが、案外普通なんだな」

 

「五十里くんたちみたいには出来ないわよ」

 

「あれは少し過激だと俺も思うけどな」

 

 

 沢木でもそう思っているのかと、少し離れた場所で聞いていた服部は意外感を示していたが、それにかんしては服部もあずさも同意見なので、特にツッコミは入れずに店までの道のりを進んでいったのだった。




沢木って初期のイメージは真面目一辺倒だったのに……

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