劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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リンちゃん難しいんですよね……


IF甘婚約者ルート 鈴音編

 密室で二人きりだというのに、達也と鈴音の間には色っぽい空気だとか、そういったものは一切感じられない。二人とも自分の研究テーマであるところの熱核融合炉についての情報交換や、問題点の見直しなど、真剣そのものな会話をしているのだ。

 

「――さすが達也さんですね。私にはこれほどの考えは思いつかなかったでしょう」

 

「鈴音さんが協力してくれたから、俺もここまで考えられたんだと思います」

 

「私などが役に立ったのなら嬉しいですが、恐らく達也さんは一人でもこの結論にたどり着いたと思います」

 

 

 あくまでも自分の手柄は無いと主張する鈴音と、鈴音の力があったからこの結論にたどり着いたと主張する達也。互いに相手の凄さを認めているからこそ食い違う意見に、二人は苦笑いを浮かべてしまった。

 

「こんな事で言い争っても意味ないですね」

 

「机上の空論で終わらせないためにも、ここからが重要ですからね」

 

「ここから先は本当に私なんかではお手伝い出来ない次元ですので、私は結果を楽しみにしておきます」

 

「鈴音さんなら、問題なく手伝えると思うのですがね」

 

 

 理論だけなら達也と張り合うくらいの知識がある鈴音だが、実際に作業するとなると、達也ほどの速さは感じない。まぁ達也と他の人間を比べる事自体間違いなのだが、それほど高度な技と素早い動きが求められる実験なので、下手に足を引っ張るくらいなら見学で良いと鈴音は考えているのだった。

 

「ところで、研究所内が暗くなっていますが、他の方はどちらに行かれたのでしょうか?」

 

「帰ったんだと思いますよ。今日は元々大した用事もなかったでしょうし、既に定時を過ぎてますから」

 

 

 少しも慌てた様子の無い達也に対して、鈴音は何処か落ち着きの無さを感じさせる。

 

「どうかなさいました?」

 

「いえ、研究の事になると時間を忘れてしまう癖、まだ治ってなかったんだと思いまして……」

 

「立派な研究者になれる素質があるという事じゃないですか? ここにだって、開発や研究にのめり込み過ぎて時間を忘れる人間は大勢いますし、俺もそういう面はあります。特に深雪の護衛から解放されてからは特に」

 

 

 完全に解放されたわけでもないのだが、その事は鈴音に言う必要はまだない。

 

「達也さんは立派に研究者としてやっていってるからいいんですよ。ですが、私のはただの遊びでしかないのですから、もう少し時間を有効的に使えるようにしなければ……」

 

「大学も春休みなのですから、少しくらい時間を無駄にしても良いと思いますけど」

 

「そう言う考え方が出来ればよかったのですがね……」

 

「さて、時間も時間ですし、何か食べていきますか?」

 

「そうですね。何処が良いですかね」

 

 

 ついさっきまで時間の使い方で悩んでいた鈴音だったが、達也とデート出来ると分かりすぐに切り替えた様子だった。その切り替えが他にも使えたらいいのにと、鈴音は内心苦笑いを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鈴音と夕食を済ませ、先ほどの理論を少し実証してみようという事で、司波家の達也の部屋に案内された。

 

「良かったのでしょうか?」

 

「何がですか?」

 

「いえ、深雪さんが凄い私を睨んでいたので……」

 

「女性客が来た時はだいたいあんな感じですから」

 

 

 特に気にした様子の無い達也であるが、鈴音は実験どころではない心境であった。

 

「(ここで達也さんが生活しているわけですか……私は異性としての魅力に欠けているから達也さんは特に意識してないのでしょうが、私はそういうわけにはいきません……)」

 

 

 周りに色ボケしている真由美や摩利がいたから目立たなかったが、鈴音も年頃の少女であり、そう言うことに興味くらいはあった。そして目の前に、婚約者が普段から使っているベッドがあるのだ、多少意識してしまっても仕方ないだろう。

 

「鈴音さん、聞いてますか?」

 

「は、はい! っと、それが先ほど言っていた?」

 

「本当に実験品ですがね」

 

「これをこのサイズで設計出来れば、恒星炉以上の成果を上げる事が出来るんですね」

 

「理論上は、ですがね」

 

 

 作動させるには専用の魔法式を使える魔法師が必要で、こんな一民家で作動させたら大変な事になるので、達也も鈴音も試作品を眺めながらそれが作動している未来を思い浮かべる。

 

「これが成功すれば、魔法師の地位向上、差別されることも無くなるのですね」

 

「鈴音さんの理想の世界に近づいた、という事ですね」

 

「やはり達也さんは私などとは比べ物にならない技術者ですね。最初シルバーだと聞かされた時、驚きよりも納得が先に来てしまいましたから」

 

「納得?」

 

「超高校生級の調整技術、中条さんが達也さんを見る目が、憧れの相手を見ているような雰囲気でしたので、もしかしたらとは思っていました」

 

「中条先輩には正体を明かしていないのですがね」

 

 

 達也の表情を見て、鈴音は急に胸が苦しくなった。立っている事が出来なくなり、ふと視界に入った達也のベッドに倒れ込んでしまった。

 

「どうかしましたか?」

 

「いえ、急に苦しくなって……申し訳ありません」

 

「いえ、別にそれは構いませんが……大丈夫ですか?」

 

 

 心配そうに顔を覗き込んでくる達也に、鈴音はゆっくりと手を伸ばした。

 

「すみません、どうやら達也さんに見つめられると安心出来るようですので、このままで……」

 

「楽になるならいくらでも見ますが、何時までも見てるわけにはいきませんよ」

 

「じゃあ、私に達也さんを感じさせてくれれば、あるいは大丈夫かもしれません。深雪さんには感じ取られないようにしますので、このままお願いします」

 

 

 結局深雪にはバレて、後で同じことを要求されるのだが、達也は鈴音の為に彼女を抱く決心をしたのだった。




普段がクールですからね……仕方ないのかな

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