劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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気になるんでしょうかね……


IF甘婚約者ルート 香澄編

 姉も同じ婚約者として付き合っているが、香澄は別に婚約者としてどちらが上とか下とか気にしたりする性格ではなかった。だが姉の真由美が最近やたらライバル心を抱いているように感じていて、香澄は双子の妹である泉美に相談したのだった。

 

「何だかお姉ちゃんに敵視されてる気がするんだけど、どうにかならないかな?」

 

「お姉さまは同じ司波先輩の婚約者である香澄ちゃんに負けたくないのでしょうね」

 

「別に勝ち負けなんてないと思うんだけどな……そもそも、そうやって争いが起こるから複数人の婚約者を認めさせたんじゃないの?」

 

「そんなこと、私に言われても困ります。お姉さまに言ってみては?」

 

「お姉ちゃんに言えないから泉美に言ってるんじゃないか」

 

 

 なんとも情けない双子の姉に、泉美は呆れたのを隠そうともしない態度でため息を吐き、興味が無くなった様子で読書を再開した。

 

「姉が相談してるのにその態度は無いだろー」

 

「私には関係ない事ですし、香澄ちゃんが少し勇気を出してお姉さまに聞けば解決するんですから、そうしたらどうですか?」

 

「だから、それが出来たら苦労してないってば」

 

「それか、司波先輩に優劣つけてもらえばいいじゃないですか。恐らくあの人はそんなことに付き合ってはくれないと思いますけど」

 

 

 泉美は達也の事を嫌っているわけではない。なので達也が女性に優劣をつけて楽しむような思考は持っていないことをちゃんと理解している。だから付き合ってくれないと言ったのだが、香澄は別の捉え方をしたようだった。

 

「それって、ボクたち姉妹にはあまり関心がないって事かな……」

 

「少なくとも、どっちが上だなんて事には関心は無いでしょうね。あの人はある意味で平等ですから」

 

 

 深雪を除き、達也はある程度同列視してくれるので、誰かを特別扱いすることは無い。婚約者でない泉美はその事を理解しているのに、何故香澄が理解していないのかと、泉美は不思議でしょうがなかった。

 

「なんでしたら、司波先輩に特別扱いしてもらえるように努力してみては? そうすればお姉さまより上だという事をアピール出来るのではないでしょうか」

 

「そうかな……でも、意識してもらう為に努力するにしたって、何をすればいいのかボクにはさっぱりなんだけどな……」

 

「そこまでは手伝えませんからね。双子とはいえ、これは香澄ちゃんの問題なのですから」

 

 

 相談に乗るのはここまでだと言わんばかりに、泉美は完全に香澄から視線を逸らして読書を再開した。これ以上は相談しても答えてくれないと理解した香澄は、意識してもらえるようになるにはどうすればいいのだろうかと一人で考えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一晩考えても答えは出なかった香澄は、寝不足な頭で校内の見回りをしていた。春休みだろうと巡回のローテーションは組まれていて、運悪く香澄が当番の日の前日に相談してしまってたのだ。

 

「眠い……結局分からなかったし、お姉ちゃんからはじろじろ見られてたし……」

 

 

 寝不足と答えが出なかった事が引っ掛かっているのが重なって、香澄は心ここにあらずの状態で見回りをしていて、角で人とぶつかりそうになってしまった。

 

「す、すみません。ちょっと考え事をしてて……って、司波先輩!?」

 

「珍しいな、香澄が前方不注意なんて」

 

「今言ったように考え事をしてたんです」

 

「そうか。だが、見回りの最中は危ないから止めておくんだな」

 

「司波先輩もちょっと手伝ってくださいよ。どうせ生徒会の仕事が終わって暇なんでしょうから」

 

 

 そう言うと香澄は達也の腕を取って空き教室へと入っていく。普段なら簡単に入れるわけじゃないのだが、今は春休みで鍵の取得も風紀委員ならそう難しくないのだ。

 

「それで、何で俺が香澄の考え事を手伝わなければいけないんだ?」

 

 

 部屋に入るなり、達也は至極真っ当な事を香澄に尋ねる。

 

「だって、ボクの悩み事には司波先輩が大きくかかわっているから」

 

「俺が?」

 

「うん……司波先輩が原因でお姉ちゃんとちょっと険悪な関係になってるんだよ」

 

 

 まったく自覚のない達也は、自分が何をして真由美と香澄の関係が拗れたのかさっぱり理解出来なかったので、香澄の説明を待つことにした。

 

「司波先輩は他の婚約者の人とも特に関係を発展させたりはしてないんですよね?」

 

「いきなりなんだ?」

 

「答えてください」

 

「そう言うことは特にしてないし、気にする事か? 風紀を乱す行為もしてないと思うんだが」

 

「いや~、司波会長や光井先輩、北山先輩の積極性は風紀的に問題ありっぽいけどさ……って、そう言う事じゃないんですよ!」

 

 

 話を逸らされたと受け取った香澄は、物凄い剣幕で達也に詰め寄る。

 

「お姉ちゃんがボクがそう言う事をしてもらってるんじゃないかって目で見て来るから、司波先輩にはっきり言ってもらいたくて」

 

「七草先輩が? あの人には俺がそう言う事をするように見えているのか?」

 

「してもらってないから、他の人にしてるんじゃないかって思ってるのかもしれないよ? 試しにボクにしてみてお姉ちゃんの反応を見てみるってのはどうかな? そうすればボクもお姉ちゃんに劣等感を抱くことも無くなるし、お姉ちゃんの悩みも解決出来るかもしれないしさ」

 

 

 そんなことをすれば余計に真由美に鋭い視線を向けられるという事を失念している香澄を愛おしく思いながら、達也はゆっくりと香澄の唇に自分の唇を重ねたのだった。




あと何日引っ張ればいいんだか……

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