劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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子供ならではの特権ですかね……


おねだり攻撃

 家に帰っても達也の災難は続き、深雪が一緒にお風呂に入ると言って駄々をこね始めたのだった。それを見た真夜も便乗し、三人で入るのが一番だと提案してきたのだった。

 

「ですから、小さくなっていようと母上も深雪も女性なのですから、異性の俺と入るより水波と一緒に入った方が良いと思うのですが」

 

「おにいちゃん、深雪、むずかしいことわからないよ。おにいちゃんといっしょがいい!」

 

「深雪さんもこう言っているわけですし、私も達也さんなら気になりませんし」

 

「一応俺が気にするのですが」

 

「達也さんだって、こんな幼児体型より普段の私たちの方が良いのではなくて?」

 

 

 真夜の質問に、達也は睨むことで回答を拒否した。真夜も達也が答えてくれるとは思っていなかったのか、すぐに別の切り口から達也を攻め立てる。

 

「達也さんにとって、私たちはちゃんと異性なのですね」

 

「当然だと思いますが」

 

「でもね達也さん。私も深雪さんも家族なのですから、それほど意識する必要は無いと思うのですけど」

 

「母上たちがどう思おうが自由ですが、俺からしてみれば家族でも異性です」

 

「別に子作りするわけじゃないのだから、異性の家族だろうと気にする必要は無いと思うのだけど? ましてやこのような身体なわけですし」

 

「母上、少し下品ですよ」

 

「別に達也さんしかいないんだし、下品だの上品だの関係ないわよ。それとも、たっくんは私たちの事が嫌いなの?」

 

「おにいちゃん、深雪のこときらいなの?」

 

 

 真夜につられるように深雪も問いかけてきて、達也は困惑気味に首を横に振った。間違っても嫌いだと答える事は出来ないし、答えるつもりもなかったが、深雪の表情を見て達也は素早く否定したのだった。

 

「じゃあすき?」

 

「あぁ、いい子な深雪は好きだよ。だから、今日はこっちのお姉さんと一緒にお風呂に入ってくれるか?」

 

「おにいちゃんとがいい……」

 

 

 好きと言われ満面の笑みを浮かべた深雪ではあったが、やはり達也と一緒がいいと言ってきかないようで、達也はますますどうしたものかと頭を悩ませた。

 

「この際ですし、水波ちゃんもご一緒に如何かしら? もちろん、水波ちゃんが達也さんと一緒でも構わないというのであればですが」

 

「私は問題ありませんが、達也さまが困るのではないでしょうか」

 

「民主主義よ。多数決で決めちゃえば文句も言えないでしょ?」

 

「母上、それは民主主義ではなく数の暴力です」

 

「どっちも同じようなものよ。さぁ達也さん、いい加減覚悟を決めて私たちと一緒にお風呂に入りましょう」

 

「わーい。おにいちゃんといっしょ!」

 

 

 どうやら深雪の中では既に達也と一緒に入ることが決定事項になっているようで、今更何を言っても覆せないだろうと達也には思え、盛大にため息を吐いて水波を見据えた。

 

「な、なんでしょうか?」

 

「世話は水波に任せる。俺はあくまでも『一緒に入る』だけだ」

 

「かしこまりました」

 

 

 先に真夜の思惑を潰し、身体を洗わせるなどの行為を全て水波に任せる事にして、達也は風呂の用意を始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お風呂では大人しく達也の言う事を聞いた真夜ではあったが、彼女のたくらみはあの程度では終わらず、深雪を引き連れて達也の部屋へとやって来ていた。

 

「どういうおつもりですか?」

 

「もちろん、たっくんと一緒に寝る為よ」

 

「おにいちゃんといっしょがいい」

 

「深雪? この人に何を言われたんだ?」

 

 

 優しく尋ねる達也に、深雪は真夜に言われた通り首を横に振って何も答えなかった。

 

「母上」

 

「私は何もしていないわよ? 深雪さんも一人で寝るよりもたっくんと一緒が良いって思ってたから一緒にお願いに来ただけです」

 

「では何故深雪は母上の顔色をうかがってから首を横に振ったのですか?」

 

「さぁ? それは深雪さんにしか分からないのではなくて? なんでしたらこの部屋に水波ちゃんを呼んで四人一緒に寝る方がたっくんは嬉しいかしら?」

 

「何でそうなるのですか……」

 

 

 達也が頭を押さえて首を左右に振ると、深雪が心配そうな表情で達也の頭を撫でる。

 

「おにいちゃん、あたまいたい?」

 

「いや、平気だ」

 

 

 心配してくれた深雪の頭を優しく撫で、達也は真夜に視線を戻した。

 

「深雪の純真さを利用してご自身の欲求を満たそうとしていませんか?」

 

「一緒に寝るだけで満たされるんだから安いものでしょ? 本当なら元の姿でたっくんと一緒に寝たいけど、そんなことしたら他の婚約者の人や、四葉家の人間にどんなことを言われるか分からないもの。だからこの姿で我慢しているのよ。たっくんも少しくらい譲歩してくださらない?」

 

「一緒に風呂に入ったのが精一杯の譲歩だったのですが?」

 

「それに、そろそろ深雪さんが限界のようですし、今日のところは大人しく一緒に寝てくださらないかしら」

 

「……大人しくの意味が良く分かりませんが。どちらかと言えば、大人しく部屋に帰っていただきたいのですが」

 

「そんな眉間に皺を寄せていると、跡になっちゃうわよ?」

 

「……分かりました。今日だけですからね」

 

 

 深雪を抱きかかえベッドに寝かせ、その隣に真夜を寝かせる。達也はまだ作業が残っているからとベッドには入らず、少し不満そうな深雪はすぐに眠ってしまい、真夜もつられるように眠ったのを確認して、達也はリビングのソファで休む事にしたのだった。




子供の深雪を使い、真夜が良い思いをしたいだけ……

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