劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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いったんこのメンバーは終わりです


IF美少女ルート沖縄編 その2

 思う存分プールで遊んだ雫たちは、そのままの流れで達也たちとお茶をすることにした。もちろん、達也たちにこれを断る理由は無かったので、誘われるがまま三人とも同行する。

 

「私たちが泊まっているホテルとはやっぱり違うのね」

 

「深雪たちが泊まってるホテルも高級だけど、ここは一応超高級って銘打ってるからね」

 

「北山財閥のお嬢様が泊まるようなホテルだもんね」

 

「うん……」

 

 

 深雪は別に嫌味で言ったわけではない。それは雫にも理解出来るが、どうしてもむず痒さは感じてしまうのだった。

 

「今日は私が奢るから、達也さんも気にしないで」

 

「ここ、小父様の会社の経費で落ちるんですって」

 

 

 難色を示した達也に、ほのかがすかさずフォローを入れた。雫に奢ってもらうのは気持ち的に抵抗があったが、そういう事情ならと達也も納得した。

 

「お母さんが散々達也さんに嫌味を言ったっぽいし、遠慮しないで」

 

「お母さんの気持ちも分からなくはないからな。得体のしれない相手が、いきなり『あの』四葉家の人間だと言われれば、嫌味の一つや二つも言いたくなるだろう」

 

「でも、あんなに嫌味ったらしく言わなくたっていいと思うけど」

 

 

 雫はまだ気にしている様子だったが、達也があまり気にしていない様子なので、納得はしていないがとりあえず気持ちは収まったようだった。

 

「水波ちゃんも、遠慮しなくていいからね」

 

「ですが、達也さまや深雪様ならともかく、私は北山様に奢ってもらう権利は――」

 

「そう言うのは気にしなくていいよ。水波も大事な後輩。先輩に奢ってもらうのにそんなに遠慮する必要は無いと思うけど」

 

「私は四葉家の従者ですので。達也さまの婚約者である北山様に奢られるのは――」

 

「水波、素直に奢ってもらえ」

 

「――わかりました。達也さまがそう仰られるのでしたら」

 

 

 なおも抵抗して見せようとした水波ではあったが、達也の言葉には逆らえないので、不承不承ながらも奢ってもらう事を承諾したのだった。

 

「水波ちゃんって、結構頑固なの?」

 

「そうみたいね」

 

 

 ほのかの疑問に、深雪は笑いながらそう答える。実際家事などの分担でも、頑なに深雪の分を減らそうとするくらいなのだから、深雪から見ても水波は結構頑固者なのだ。

 

「それじゃあ、達也さんたちは何にする?」

 

 

 そんなやり取りは気にせず、雫はメニューを達也に手渡し、自分も何を注文するかを決めるためにほのかと一緒にメニューを眺め始める。

 

「深雪も、遠慮しないでね」

 

「それじゃあ、お言葉に甘えようかしら」

 

 

 楽しそうに微笑む深雪に見惚れた店員がコップを落とした音が遠くから聞こえてきたが、達也たちはあえて気づかないフリをしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 楽しそうに話す三人とは違い、水波は少し居心地の悪さを感じていた。もちろん、疎外されているからではなく、単純に歳の差や、立場の違いから場違いではないかと思い込んでいるのだ。

 

「水波ちゃんは、達也さんの事をどう思ってるの?」

 

「あっ、それは気になるかも」

 

「ですって。どうなの、水波ちゃん」

 

 

 突如話題を振られ、水波は飲んでいた紅茶を吹き出しそうになったが、そこはメイドの嗜みとして何とか堪え、少し慌てながら答える。

 

「私はあくまでも従者ですので、達也さまに対して邪な感情を抱くことはありません」

 

「別に邪だとは思わないけど。女の子なんだからさ」

 

「私は四葉家に……その、色々と便宜を図っていただいている身ですので、これ以上を望むわけにはいかないのです」

 

 

 さすがに調整体だとは言えないと判断して、水波はそれらしい嘘で誤魔化そうと努力する。だが、雫もほのかもその程度では満足出来ないのか、更に質問を重ねる。

 

「じゃあ、従者とか関係ないって言われたらどう? 達也さんの事好きになる?」

 

「達也さまの事をもちろん好いておりますが、それはあくまでも人間として。異性として見る事など、私には出来ませんし、達也さまにも出来ないと思います」

 

「何で? 水波はちゃんと女の子だと思うけど」

 

「そう言う事ではないのです」

 

 

 視線を深雪に向けると、小さく首を横に振った。つまり、これ以上は話せないという事だ。

 

「なにか事情でもあるの?」

 

「すみません。これ以上は四葉家の闇に触れることになります。まだ婚約者でしかない北山様や光井様には、これ以上私の口からは申し上げる事が出来ません」

 

「そう言う事よ。あんまり水波ちゃんを苛めちゃ可哀想でしょ」

 

「別に苛めてたわけじゃない。じゃあ、深雪から教えてくれる?」

 

「残念だけど、これは達也様の問題なの。達也様の許しも無く私が話せる事じゃないのよ」

 

「別に話しても良いとは思うが」

 

 

 当事者である達也は、あまり気にした様子もなく、知りたいのなら教えても構わないというスタンスを取っていた。

 

「もしかして、前に言ってた達也さんの初恋の人と関係があるの?」

 

「まぁ、そんなところだな」

 

「そうなんですか。水波ちゃんに似てたんですか、その人」

 

「叔母に当たる人だったからな。似てて不思議はないだろ」

 

「そうだったんだ。達也さん、その人の事、まだ想ってるの?」

 

「どうだろうな。雫やほのかたちのお陰で、その人の事を考える事は無くなってきたからな」

 

 

 好奇心を満たしつつ、二人を喜ばせる事で、達也はこの話題を終わらせることに成功した。だが、深雪と水波は複雑な表情を浮かべていたが、雫とほのかはその事に気付くことは無かったのだった。




また後でやると思います

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