劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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結婚してないので愛人も何も無いですがね……


IF愛人ルート その1

 入学式の打ち合わせのために学校にやってきた達也ではあったが、深雪に休んでいてくれと生徒会室から追い出され、校内をぶらぶらとしていた。

 

「あら、司波君じゃない。どうしたの、こんなところで」

 

「小野先生……いや、ちょっと手持無沙汰でして」

 

「生徒会役員は入学式の打ち合わせじゃなかったの?」

 

「そうなのですが、深雪に追い出されまして」

 

「司波さんが? 何かあったの?」

 

 

 達也は沖縄で起きた事件の概要をかいつまんで遥に説明し、その疲れがあるからだろうと決めつけたのではないかと説明する。

 

「その事は公安にも報告はきてたわね。そっか、また司波君が片づけたんだ」

 

「今回は俺一人で、ではありませんし、敵兵はしっかりと身柄を拘束していますので」

 

「分かってるわよ、それくらい。それじゃあ、今暇なのね」

 

「まぁ、暇と言えば暇ですが」

 

「それじゃあ、ちょっとカウンセリング室に来てちょうだい。お茶くらいなら出せるわよ」

 

「はぁ……」

 

 

 また何か厄介ごとでも押し付けられるのかと警戒した達也ではあったが、すぐに遥が笑いながら手を左右に振ってその警戒は無用だと告げる。

 

「安宿先生も貴方に会いたがってるし、ちょっとしたお茶会でもしようかなってだけよ。別に司波君にお願いする事は特に無いしね」

 

「そもそも、俺が小野先生の仕事を手伝う理由が何処にあったのでしょうね」

 

「あの時は、私からだまし取った無頭竜のデータを国防軍に流したでしょ!」

 

「だまし取ったとは人聞きが悪いですね。あれは買い取ったデータです。そのデータをどう使うかまで制約は受けてませんし、足りないのなら追加しますが」

 

 

 達也の言っている事が最もであると、遥も頭では分かっている。だが気持ち的には納得できない部分が大きく、未だにこうして文句を言っているのだ。

 

「そもそも、私からデータを貰ってすぐ、エレクトロン・ソーサリスに渡したらしいわね」

 

「協力者ですからね」

 

「何だか納得いかない表現ね」

 

 

 何時も通りこれ以上話してくれない達也に、遥は頬を膨らませる、ライバルというにはおこがましい程の差があるが、何故か遥は響子の事を敵視しているのだった。

 

「同年代だからといって、そこまで意識しなくてもいいのではないでしょうか」

 

「何でも出来る彼女に比べて、私は諜報くらいしか出来ないからね。劣等感から張り合っちゃうのよ」

 

「そんなものですか」

 

 

 自分には無縁の世界だと割り切り、達也はさっさとカウンセリング室に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すぐ隣の保健室から怜美がやって来て、カウンセリング室ではお茶会が開かれていた。といっても、参加者は達也と遥と怜美の三人で、四葉真夜から愛人として認められている二人とのお茶会となっている。

 

「何だか久しぶりね~」

 

「俺は普通に学校に通っていたので、すれ違ったことくらいはあったと思いますが」

 

「そんな事ないわよ~。最近保健室に遊びに来てくれないし」

 

「それだったら、カウンセリング室にも来てくれてないわよ」

 

「保健室もカウンセリング室も、用のない人間が訪れる場所ではないと思いますがね」

 

 

 遥の淹れたお茶を啜りながらジト目を二人に向ける達也と、その視線を受けて明後日の方を向く遥と怜美。この話題では不利だと理解した二人は、アイコンタクトで別の話題を決めて達也に振る。

 

「いよいよ最終学年だけど、司波君は卒業したらどうするの? そのまま大学に進むの? それとも、四葉家に入ってお仕事の手伝いとかをするのかしら?」

 

「まだ何も決めてませんが、とりあえず進学すると思いますよ。深雪たちも進学でしょうし」

 

「そうかしら~? 司波さんたちなら、君の奥さんになる為とかいって、そのまま卒業したらずっと側にいそうだけどね」

 

「ありえそうですね、それ。特に、光井さんとかは司波さんと張り合ってそうなりそう」

 

「ここにいない人を話題にあげて盛り上がるのはどうかと思いますよ。褒めているならともかく、貶してるとも取れるような話題ですし」

 

「そんなこと無いんだけど」

 

 

 遥も怜美もほのかの依存癖は知っているし、深雪と張り合っているのも知っている。だからありえそうだと思ったのだが、どうやら達也は不快に思ったらしい。

 

「まぁ、君が進学するなら、司波さんも進学かしらね。どうせ魔法大学なんでしょ?」

 

「どうせ、とは?」

 

「防衛大学に進んだとしても、君より優れた学生がいるとは思えないし、指導者も同じでしょ」

 

「確かに、司波君の戦闘力は学生のレベルではないらしいですからね~」

 

 

 達也が実際に戦っているところを見たことが無い怜美は、冗談半分でそう言っているが、彼の実力の一端を知っている遥は、冗談では済ませられなかった。

 

「えっと……魔法大学には七草さんや市原さんがいるでしょ? その二人に君を取られないように、司波さんも進学するかもって思ったのよ」

 

「何を慌てているのかは知りませんが、まだ時間もありますし、母上が何時気まぐれで隠居するか分かりませんからね。十文字先輩ならともかく、俺は学生をやりながら当主をやれる自信はありませんよ」

 

「十文字くんもだけど、君だって高校生とは思えないほどの貫禄があると思うけどね」

 

「私は~、十文字くんよりも司波君の雰囲気の方が好きだけどね~」

 

 

 何を張り合ったのか分からないコメントに、達也も遥も首を傾げたのだった。




克人と比べちゃ駄目だろ……

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