劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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普通は疑うな、その事を……


IF婚約者ルート留守番組編 その2

 軽く食事を済ませ、当たり前のように店を出てから、スバルが達也に視線を向ける。

 

「悪いね。なんだか集ったようで」

 

「気にするな。三人に出させてたら俺が白い目で見られてただろうからな」

 

「ごちそうさまー」

 

「ごちそうさま」

 

 

 あまりにも自然に奢ってもらったために、エイミィと千秋はスバルが達也に礼を言うまで奢ってもらったという事に気付いていない様子だったが、ちゃんとお礼を言ったのでスバルも頷いて視線を達也に戻した。

 

「君の事はいろいろと聞いたけど、本当に同い年なのかい?」

 

「随分な言い草だな」

 

「だって、普通は信じられないぞ。あんなこと」

 

「まあまあスバル。普通なら信じられないけど、達也さんなんだから嘘じゃないって分かるでしょ? 九校戦における達也さんの不敗伝説も、そういう事情じゃ納得するしかないだろうしさ」

 

「私がいくらライバル心を抱いたところで、勝てっこないくらいの経歴ですからね」

 

 

 千秋は一時期、達也にライバル心を抱いていたことがあるのだが、婚約者として認められ、達也の秘密を聞かされた完全に負けを認めたのだ。

 

「君に対抗しようだなんて、三高の吉祥寺真紅郎も無謀な事をしてるなと、今では思うよ」

 

「世間的には司波達也より吉祥寺真紅郎の方が知名度が高いからな。仕方ないのかもしれないが」

 

「でも、今では達也さんの方が知名度も高いんじゃないかな? なんていったって四葉の次期当主様なんだからさ」

 

「その他いろいろと発表できるのなら、もっと知名度は高くなるだろうけどね」

 

 

 スバルの言葉に、エイミィと千秋も頷いて同意する。発表されているのは四葉の後継者としての立場だけであり、シルバーであったり軍属であったりということは世間には公表さていない。もちろん、この三人も知らない事はあるが、それを教えるわけにはいかないのだ。

 

「一時期噂になった、達也さんが戦略級魔法師なんじゃないかって話しは、もしかして達也さんの得意魔法の事を言ってたのかな?」

 

「まぁ、あれは公表できないだろうね」

 

「いくら四葉家の人間とはいえ、あの魔法を知られたら大変でしょうしね」

 

 

 婚約するにあたって、達也の得意魔法――特異魔法ともいえるが――を知らされ、三人は大なり小なり違いはあれど驚き戦いた。だが達也だからという理由で納得出来るあたり、恋する乙女は強かなのだろうと達也と葉山は苦笑いを浮かべたのだ。

 

「さてと、次は何処に行く?」

 

「まだ遊び足りないのかい?」

 

「カフェでお喋りしただけじゃん。せっかく達也さんの時間を貰ったんだから、もうちょっと一緒にいたいでしょうが」

 

「まぁ、それは僕も同じ気持ちだがね。悪いけど、もう少し付き合ってもらうからね」

 

「分かった」

 

 

 さすがにあれだけで終わるとは達也も思っていなかったので、スバルの言葉に素直に頷く。再び三人で話し合いが繰り広げられ、達也はそれを暖かい目で見守るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何処か腰を落ち着かせられる場所が良いという結論に至り、四人はカラオケにやって来ていた。

 

「達也さんって歌も上手なんですね」

 

「最低限聞かせられる程度だがな」

 

「そんな事ないと思うけどな。僕は好きだよ、司波君の歌声」

 

「わ、私だって好きです」

 

 

 スバルに張り合うように千秋が声を上げると、エイミィが悪戯を思いついた時の笑みを浮かべながら千秋にマイクを手渡す。

 

「せっかくだから、達也さんとデュエットしたら?」

 

「なっ!? 私はそんなに歌上手くないし……」

 

「気にする必要は無いだろ。誰に聞かせるでもないんだから」

 

「そうそう、司波君の言う通りだ。ここには僕たちしかいないんだし、上手い下手は気にする必要は無いだろ」

 

 

 達也とスバルにも逃げ道を塞がれ、千秋は渋々達也とデュエットすることにした。だがやはりどこかに照れと苦手意識があるのか、歌声は小さいものであった。

 

「せっかく遊びに来てるんだから、もっと楽しまないと」

 

「誰の所為でこんな目に遭ってると思ってるの!」

 

「さて、誰だろうねー? スバルは分かる?」

 

「いや? 僕には皆目見当もつかないが」

 

「この二人は……」

 

 

 少し前までは一科生の二人相手に緊張していた千秋ではあるが、今は普通に付き合っている。たまに容赦ないと思う時もあるが、基本的には魔工科や二科生の友人と変わらぬ付き合いが出来ている事に、彼女は驚いたりもしていたが、こうして気兼ねなく付き合えるのはやはりいいと思っていたりもするのだ。だが、今だけはこの二人との付き合いを考え直したいと思っている。

 

「さて、それじゃあ次はエイミィとスバルが達也さんとデュエットする番だよね? どっちから行くのかな?」

 

「僕は遠慮させてもらおう。エイミィがするといい」

 

「いやいや、私よりスバルの方が美声なんだから、遠慮しないでデュエットすればいいじゃん」

 

 

 千秋からのカウンターを受け、スバルとエイミィが慌てだす。

 

「二人とも遠慮しないで。達也さんもそれでいいよね?」

 

「別に構わないが」

 

「ほら。達也さんもこう言ってくれてる事だし、二人ともしっかりとデュエットしてもらいなって」

 

「千秋、私が悪かったてばー!」

 

「これは確かに恥ずかしいものがあるな……」

 

「別に私は何も含むものは無いですけどね。ただたんに二人にも楽しんでもらいたいだけですから」

 

 

 恥ずかしさを克服した訳ではないが、千秋は強気に攻め二人を撃沈させた。自分の知らないところで繰り広げられていた戦いを見届け、達也はこの後スバルとエイミィともデュエットソングを歌ったのだった。




千秋の逆襲にたじたじですね……

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