劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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犯人は誰だ……


IFショタルート完結編

 翌日の稽古では、達也は一切の容赦なく八雲の命を狙った。死が定着しなければ何度でも蘇らせることが出来るし、何度でも殺すことが出来る達也だから出来る行為だ。

 

「か、勘弁してくれないかな。あれは四葉殿に頼まれてやった事なんだし」

 

「ですが、今回は母上は絡んでいてないと聞いていますが」

 

「あの術の改良を頼まれたんだ。持続時間の調査と記憶を過去に戻す事が出来るかの調査を依頼されて仕方なく」

 

「ですが、母上は今スポンサー様の依頼で、師匠に接触する暇など無いと思うのですが」

 

「今の世の中、少しでも時間が出来れば通信くらい出来るだろ?」

 

 

 些か信じ難いが、八雲が嘘を吐いている様子は見受けられない。達也は視線で八雲を捕らえたまま、端末を取り出して真夜に確認することにした。

 

『はーい、何かなたっくん?』

 

「相変わらずのテンションですね……」

 

 

 端末越しでも分かる真夜のハイテンションに気圧されながら、達也は昨日の一件の事を真夜に尋ねた。

 

『何それ!? たっくん、また子供の姿になってたの! 何で私の所に来てくれなかったのよ!』

 

「師匠が言うには、母上に依頼されたからという事ですが、違うのですね?」

 

『私が依頼するなら、私の許にたっくんがいる状況じゃなきゃしないもん! もしかしたら誰か別の人が依頼したか、彼の独断だったのかもしれないわね』

 

「母上の名代で葉山さんが依頼した、という事らしいですが」

 

『葉山さんが? そういえば昨日、葉山さんの姿は見なかったわね……』

 

 

 恐らく側に控えていたのだろう、真夜が葉山になにかを聞いている声がかすかに聞こえた。達也はその問い詰めが終わるまで大人しく待つ。

 

『どうやら葉山さんが私の為に実験してくれたらしいわよ。でも、私のスケジュールとたっくんのスケジュールを考えて、一日で諦めたらしいけど』

 

「そういう事でしたか。まぁ、葉山さんへの罰は母上にお任せします」

 

『任せておいて! ――あっ、今回は見逃してあげる事にするわ』

 

「……何を貰ったんですか?」

 

『なっ、何にも貰ってないよ? 子供の姿のたっくんの寝顔の写真なんて、貰ってないんだからね!』

 

「……貰ったんですか」

 

『あっ……』

 

 

 見事に自爆した真夜に、達也は盛大にため息を吐いて通信を切った。そして視線で捕らえていた八雲に頭を下げ、けいこを再開したのだった。

 

「だから言っただろ? 僕は、依頼されなきゃ動かないよ」

 

「断ってくれても良かったんじゃないですかね?」

 

「そりゃ君、面白そうな事にはてをかしたくな――って!? さっきから僕の首を的確に狙いすぎじゃないかな」

 

「師匠のその性格は、死ななければ治らないでしょうからね。俺が一度殺してあげますよ」

 

「君が言うと冗談に聞こえないんだけど?」

 

「もちろん、本気ですからね」

 

 

 達也にしては珍しい満面の笑みに、八雲は本気で命の心配をしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 校舎裏に呼び出された幹比古と美月は、いったい何の用だろうかと首を傾げていた。一世紀半くらい昔ならば、校舎裏に呼び出して告白か、カツアゲされるかのどちらかかもしれないが、呼び出した相手がそんなことをするとは思えないし、幹比古に至っては同性だ。彼が「そういう趣味」でない事は幹比古だって十分に知っている。

 

「わざわざすまないな、こんなところに呼びつけて」

 

「それは構わないけど、何かあったのかい?」

 

「いや、昨日はすまなかったと思ってな」

 

「昨日の事、覚えているんですか?」

 

「いや、覚えてはいないが関係者に聞いて二人に迷惑を掛けたことは調べがついているからな。悪かった」

 

「いえ、私は楽しかったですよ。弟が出来たみたいで」

 

 

 美月は昨日の事を思い出したのか、少し顔がほころんでいる。

 

「僕の方も気にしなくていいよ。普段達也には世話になりっぱなしだし、あの程度で恩返しが出来たとは思ってないけど、少しは穴埋めになったんじゃないかな?」

 

「まぁ、もし四葉家の人間に見つかっていたらどうなってたか分からないからな」

 

「そうなのかい?」

 

 

 幹比古は四葉の恐ろしさを噂程度にしか知らない。だから、次期当主が子供の姿をしていたら誘拐や殺害など、そういう事が起こるのではないかと想像したが、達也が彼の表情を見てその考えを否定した。

 

「別に命の危険は無かっただろうが、貞操の危険があっただろうな」

 

「て、貞操!? だっ、だってあの時の君は子供の姿だったんだよ? そんな君を襲う人がいるのかい?」

 

「いるだろうな……母上を筆頭に思い当たる人間が両手の指で収まらない程度には」

 

「四葉って恐ろしい家だね……」

 

 

 噂とはまた違った恐ろしさを感じて、幹比古は思わずそんなことを呟いた。血縁者だけではなく、侍女にも見つかったら危なかっただろうと達也は考えていたので、四葉が恐ろしいというよりは「四葉の関係者」が恐ろしいというのが正解なのだが、わざわざ家の恥を上塗りする必要は無いだろうと考え、幹比古には詳細には伝えなかったのだ。

 

「とにかく、二人には悪かったと思っている。せっかくのデートを邪魔したみたいだしな」

 

「「で、デート!?」」

 

「違ったのか? 葉山さんから聞いた限りでは、二人きりで出かけていたんだろ?」

 

 

 まったく悪意の感じない達也の問いかけに、二人は顔を真っ赤にして口をパクパクと動かすだけで、何も反論出来なかったのだった。




達也だから出来る脅し……
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