劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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表現が直接的になってきたな……


IF四つ巴ルート その5

 水波に唆された四人は、扉一枚隔てた向こう側に裸の達也がいると思うと、興奮が抑えられなくなっていた。とくに、真由美とリーナの息遣いは危ないものを感じさせる。

 

「こ、この向こうに達也くんが……」

 

「フィアンセの全てを受け入れるのが務めですからね……たとえ小さくてもワタシは気にしません」

 

「達也くんのが小さいとは思えないけどなー」

 

 

 相槌として適当だったかは分からないが、エリカも二人の会話に加わる。そんな中、深雪だけが余裕を感じさせる笑みを浮かべていた。

 

「深雪は見たことがあるの?」

 

「あるわけないでしょ? でも、達也様のものならきっと立派に決まってるじゃないの」

 

「まぁ、達也くんだしね」

 

 

 何の根拠があっての事だか、エリカも分かってはいないが、達也だからという理由だけで納得出来る人間しかこの場にはいなかった。

 

「それじゃあ突撃するわよ」

 

「マユミ、抜け駆けはズルいわよ」

 

 

 まず真由美とリーナが先陣を切って突撃し、その二人にエリカと深雪が続いた。こういう時エリカが先陣を切るものだと思っていた深雪は、ちょっと意外そうな顔でエリカを見ていたが、エリカにその視線に気付けるだけの余裕は無かった。

 

「お邪魔しまーす! 達也くんの背中を流しに来たわよー!」

 

「何ですか、騒々しい……しかも、深雪まで」

 

「申し訳ございません、達也様。ですが、この三人に好き放題させるわけにはいかなかったものですから」

 

 

 タオル一枚の三人とは違い、深雪はしっかりと水着を着用している。それでも恥ずかしいのか、深雪の頬は赤みを増していた。

 

「達也くん、気配で分かってたのに止めなかったって事は、あたしたちの行動を止めるつもりが無かったって思われても仕方ないと思わない?」

 

「止めたところで大人しくしなかっただろ」

 

「まぁね」

 

 

 ニヤリと笑うエリカに、達也は呆れた視線を向ける。

 

「まぁまぁダーリン、何も交わろうとはしないから安心して」

 

「相変わらず下品だな、リーナは」

 

「何でよ! マユミだってさっきからタツヤの下半身を凝視してるじゃないの!」

 

「そ、そんなことしてないわよ! てか、リーナさんが一番見てるじゃないの!」

 

 

 エリカは自然に、深雪はチラチラと視線を逸らしながらだが、真由美とリーナはあからさまな視線を達也の下半身へ向けている。

 

「達也くんならそうじゃないかなって思ってたけど、全然恥ずかしがらないんだね」

 

「ここで俺が大声を上げたところで、エリカたちは逃げ出さないだろ?」

 

「他に人もいないしね。精々水波が達也くんのそれを見ちゃう結果になるだけだし」

 

「達也様、お身体を清めさせていただきますので、そちらにお座りください」

 

「あぁ、頼む」

 

 

 さっさとこの状況を終わらせた方が良いだろうと考えたのか、達也は素直に深雪の申し出を受けた。勝ち誇った笑みを浮かべた深雪ではあったが、横からリーナが割り込んできた。

 

「タツヤの事はワタシが洗うから、ミユキは大人しくしてなさい!」

 

「いやいや、達也くんの事は私が綺麗にするから、他の人はそこで見ててちょうだい」

 

「うーん、相変わらずモテモテね、達也くんは」

 

 

 一人この状況を客観的に見ている感じがするエリカは、少し同情的な笑みを達也に向けていた。

 

「三人が背中を洗うなら、あたしは達也くんの前を洗うわよ」

 

「エリカ、貴女さっきから抜け駆けが過ぎると思わない?」

 

「そうかな? てか、あたしだけ達也くんのを見るのは不公平だし、お風呂にタオルは無粋だもんね」

 

 

 そういってエリカは自分の身体に巻いていたタオルを外し、達也と同じく生まれたままの姿に――

 

「「「させるか!」」」

 

 

――なることは出来なかった。

 

「エリカ、貴女何をするつもりだったのかしら?」

 

「なにって、達也くんと同じ状況にしようとしただけじゃん。てか、あたしは達也くんに見られても恥ずかしいとは思わないけど、他の人は違うのかしら?」

 

「エリカ、煽るのは止めろ」

 

「えーっ! 達也くんは見たくないのかしら?」

 

「そういう事は言ってるんじゃない。この場をこれ以上ややこしくするのは止せと言っているんだ」

 

「達也くんがそういうなら仕方ないか……でも、あたしは何時だって達也くんに見せる覚悟は出来てるからね」

 

 

 ウインクしながら達也に気持ちを伝えるエリカを見て、三人は自分の身体へと視線を落とす。エリカがやろうとしたように、真由美とリーナはタオルの結び目(?)を解けばすぐにでも達也と同じ状況になる。だがそんなこと出来るわけがないと思っていた二人は、エリカの度胸と行動力を羨んだ。

 一方の深雪は、何故自分だけしっかりと水着を着こんできてしまったのだろうと、水波の配慮に対して恨み言を心の中で呟いていた。

 

「(淑女として当然だと思ってたけど、一人の女としてこの場に来ればよかったかしら……)」

 

 

 そもそも、異性が入っている風呂に突撃する事自体、淑女としてあるまじき行為なのだが、深雪にはそんな考えはなかった。もちろん、達也以外が入っているのであれば、突撃したいとすら思わないのだが。

 

「とにかく、この状況をさっさと終わらせよう」

 

「そうね。達也くん、洗ってあげるから座って」

 

「あぁ」

 

 

 当事者であるはずの達也とエリカは、何事も無かったかのように作業を進めていく。出遅れた真由美とリーナは、口を大きく開けてエリカが達也の背中を洗っているのを見詰め、深雪はその事に気付けないくらいに自分の格好を気にしている様子だった。




周りが盛り上がると素に戻るエリカ……

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