劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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普通なら報道されている以上の事は知らないんですけどね……


ほのかに説明

 二日続けてほのかの家にやってきた深雪と達也は兎も角として、初めてほのかの家にやってきた泉美と水波は、一人暮らしの部屋が珍しいのかあちこちに視線を巡らせている。

 

「あんまりじろじろと見られると恥ずかしいよ」

 

「申し訳ございません。ですが、光井先輩の歳で一人暮らしというのが、ちょっと珍しい気がしまして」

 

「そんなこと無いと思うけどな……魔法科高校生は割と多いって聞くけど」

 

「私も達也様がいなかったら一人暮らしをしていたでしょうね。あの人と一緒に暮らすなんてありえないもの」

 

「深雪先輩も保護者の方との関係はよろしくないのですね」

 

「いろいろあったからね……」

 

 

 そのいろいろが何なのか、泉美は尋ねたい衝動に駆られたが、あまり聞いてほしくなさそうな雰囲気を感じ取って自重した。

 

「さてと、それじゃあさっそく泉美ちゃんにお料理のあれこれを教えてあげましょう」

 

「達也さんはゆっくりしててくださいね」

 

「そうだ! せっかくですから、泉美ちゃんには達也様に食べていただく物を作ってもらいましょうか。達也様なら忌憚ない意見を仰ってくださいますので、何処がダメだったのかはっきりすると思いますし」

 

「深雪様、よろしいのでしょうか? そのような事が七草真由美様、香澄さんの耳に入ったりしたら……」

 

「誰も言わないから問題ないでしょ? それとも、水波ちゃんが密告するつもりなのかしら?」

 

「そのようなつもりは毛頭ありません。ですが、泉美さん自身が言ってしまう可能性もありますし」

 

「それなら問題ありませんわ。最近お姉さまも忙しそうにしていらっしゃいますので、あまり話す機会はありませんので」

 

「ならいいですが……香澄さんの方は大丈夫なのですか?」

 

「香澄ちゃんはそこまで面倒な性格はしていませんし、もし知られたとしても、香澄ちゃんなら何とでも出来ますので」

 

 

 ちょっと深雪と同じような雰囲気を感じたが、水波は特に追及することなく納得した様子で頷いた。

 

「そういえば、他の婚約者の中にも料理が苦手な人っているんじゃない?」

 

「そうね。特にリーナとかは下手を通り越してある意味芸術っぽい感じがするわ」

 

「なにそれ」

 

 

 深雪の表現に、ほのかは楽しそうに笑う。実際のリーナの料理を見たことがないが、もしかしたら本当にそうなのかもしれないと思ったのだろう。

 

「後は誰かいるかしら……」

 

「あの、とりあえず始めましょう。泉美さんも困っていらっしゃいますし」

 

「あら、ゴメンなさいね」

 

「いえ、問題ありませんわ!」

 

 

 つい先ほどまで困り果てた表情を浮かべていたのにも関わらず、深雪に謝られた途端に泉美は気にしていないというオーラを全開でまき散らした。

 

「じゃあ今日は私と水波ちゃんで教えてあげるから、ほのかは達也様とお喋りでもしてていいわよ」

 

「えっ、私も教えてあげるよ?」

 

 

 深雪の意図が理解出来なかったほのかは、自分もキッチンに向かおうとする。そんなほのかに、深雪は小さな声で耳打ちをした。

 

「昨日のあれだけじゃ満足出来なかったでしょ? それに、風邪をひいていた所為で達也様と二人きりの空間を満喫出来なかったでしょうし」

 

「でも、いいの?」

 

「ほのかになら、別に構わないわよ。抜け駆けしようとはしないしね」

 

「あ、ありがとう、深雪!」

 

 

 これが真由美やリーナだったら深雪もここまで寛容にはならなかっただろう。ほのかは深雪に何度も頭を下げ、そのまま部屋に留まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三人がキッチンに向かうのを見送り、達也はその場に腰を下ろす。その向かいに腰を下ろしたほのかは、自分の部屋なのにどこか落ち着かない様子だった。

 

「なにかあるのか?」

 

「い、いえ……達也さんは退屈ではありませんか?」

 

「こういった時間は貴重だからね。別に退屈ではないよ」

 

「そ、そうですよね。最近の達也さんは特に忙しそうですし」

 

 

 達也が四葉の人間だと知ってから、ほのかは達也が忙しそうにしているのを以前より目にしている。四葉の人間と知る前も忙しそうだなー、とは感じていたのだが、その忙しい理由に合点がいってからは、より一層忙しそうに感じているのだった。

 

「なにか心配事でもあるのですか?」

 

「いや、杞憂に終わればそれでいいんだがな……」

 

「達也さん、何か不安な事があるんですね」

 

「ほのかは風邪をひいていてニュースを見ていないのかもしれないが、ここ最近の世界情勢はいろいろとマズい空気を含んでいる。これが日本にも飛び火してこなければいいが、と思っているんだ」

 

「世界情勢……昨日雫が言っていた戦略級魔法の話ですか?」

 

「聞いていたのか」

 

 

 それだけショッキングなニュースだったので、雫もほのかに愚痴を溢したのかもしれない。どうやら詳しくは聞いていないようで、ほのかは事の重大さに気付いていない様子だった。

 

「あまり目を通したくないニュースだからな。ほのかが詳しくなくても仕方ないかもしれないが」

 

「すみません……」

 

「いや、気にする必要は無い。俺がただ悲観し過ぎているだけかもしれないからな。下手に話して不安を煽るのは避けた方が良いだろう」

 

「達也さんが考えている事が実際に起こったら、私たちにも影響があるんですよね? もしそうならば、教えてほしいです」

 

 

 瞳に強い光を携えて自分を見詰めるほのかに、達也は先日深雪にした説明をするのだった。




いろいろと普通じゃない達也さん……

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