カッツォから誘われた食事会についてとにかく悩んでいる。そう、服だ。
元々服に対しては興味がなく(カワイイ)や(カッコいい)などの単細胞的思考から選んだ服が大半だったことが災いし、先日の身バレ事件で特に痛恨の一撃になってしまった。
スーパーなモデルへと日々邁進し日々味方ではなく敵として俺の前に立ちはだかるようになった妹に頼る手もあるが、それをしてしまうとなけなしの兄の威厳(ミジンコ)が無くなりそうで些か頼みにくいのだ。とはいえアテが一切ないわけではない。
「うーん。俺の周りで服のセンスが◎なのは我が妹ともう1人いるが頼んでいいのか?それこそ色んな噂が立ちそうだが…」
借りを作ったが最後、その借りが天変を地異してしまうほど大きな厄災を招く彼奴に頼むのは出来る限り避けたい。のだが、
「まぁ。たまには頼るか。別にあいつも俺の現状を知ってるし」
何故こんな独り言を言うのかなんて理由はわかっている。
少しでも落ち着こうとしているのだ。「彼女に頼む」という案を思いついた瞬間から起きているこの体の火照りから逃げるためだ。俺はいつからこんな恋愛脳、さらに恋愛弱者になってしまったのか?
「クソほどクソのシュミレーションゲームはやってきた筈なんだがなぁ」
大手出版社の写真撮影が一旦終わり、撮れた写真の選抜を行なってたらプライベートの端末に一通のメールが届いた。少し前まではその着信音が仕事の邪魔になるかもしれないことを嫌がりマネージャーに預けていたが、今では出来る限り携帯するようになった。そう、こういう時のために。
件名:力を貸してください
本文:カッツォの食事会に行く服を一緒に探してくれないか?
報酬は要相談でタノム
なんて簡潔かつなっさけない文章なのだろうか。しかし彼がこのような連絡を寄越すとは彼も私を信じてくれているのだろう。
「いいけど私のコーディネートは高くつくよ?っと」
返信してからものの数分で
「TY」
ふざけてるのか照れ隠しなのか、それとも両方なのか微妙なラインの返信が来たことに苦笑しながらも暖かい気持ちになる。こんな簡単なやり取りすらこんなに楽しいのなら、当日彼に会った時私は私を保てるのだろうか?
「ふー!さーてこの私が写ってるものが世に出回る時に中途半端であってはならないからねー。残りの分も頑張って決めちゃいますかぁ!」
楽郎君に着せる服なんて今までどれだけ想像してきたか。遂にそのイメージたちを活かす場が来たのだ。こんなチャンス逃すもんか