天音永遠は日本を代表するカリスマモデルである。
これは世間一般の評価であり、ティーンの憧れを一身に背負いながら尚、躍進する彼女をMs.パーフェクトなんて呼び始める者もいる。
だが、彼女の本当の姿、「悪逆」を知るものはほんの僅かである。
そんな彼女とある放送局の休憩室で
プロゲーミングチーム電脳大隊格闘ゲーム部門「爆薬分隊」のエース、魚臣慧である。
彼と彼女はあるゲーム、ある人間との交流をきっかけに色んなゲームで悪巧みした仲である。
「俺に頼み?明日は槍の雨になるの嫌だよ?」
「もしもしマネージャー?
「ホンッットに勘弁してください...」
傍から見たら漫才にしか見えないやり取りを見ながら、時間的にブランチになる食事を持ってきて慧のほんの少し距離を取り、同じソファに座る女性がいた。
食べているのはフライドポテトとハッシュドポテト、実はケチャップを常に持ち歩いていることをチームメイトである
「慧も何か食べたら?この後も別番組の収録あるでしょ?」
「確かにそろそろ食べないと体もたないな」
そういって取りだしたのは黄色のパッケージに身を包んだスティック型の携帯食(チョコレート味)。
口に含めば最後、ありとあらゆる水分を奪っていくことで知られている物を、飲み物なしにもっそもっそと食べ始める彼の姿を見て少し表情を柔らかくする夏目。
永遠は夏目氏が魚臣慧に好意を持っていることを自ら
(ここまで好意が丸見えなのに気づかないのがカッツォ君なんだよね)
そんなことを考えながら話を続ける。
「最終目的なんだけど」
「ん?」
「サンラク君を表舞台に引っ張り出したい」
「もう名前隠しでプロデビューしたじゃん」
「そうじゃない。彼はまだ大事なものを世間様に見せていないじゃない?」
「それマジでいってる?」
慧自身も何度かサンラクの顔を拝もうとしたことがあるが、あいつは温泉を貸し切って裸の付き合いをした時でさえ、顔に超粘着性のフェイスパックを着けて隠し通すほどに顔を晒すことを嫌っているのである。
ここまで隠し通すのは容姿的コンプレックスなのではと睨んでいるため、これ以上無理やりするのも良くないと考えていたのだが。
「俺はもうサンラクは
「フッ!!聞いて驚け!実は一昨日リアルでばったり会いました!」
「「エッ!?」」
「ウンウン、二人とも反応良くて大変よろしい!」
「でどんな顔だったんだ!?あれだけ隠すってことは相当自信がないのかと思ってたんだけど」
「慧?あまりそういうこと言っちゃだめでしょ?けど私も結構気になるかも...」
「でサンラク君の感想なんだけど」
「おう」
「うん」
「隠す必要なんてないくらいには整ってたよ。流石は私が手塩にかけて育ててるモデル「瑠美」ちゃんと同じ血といったところかな」
「天音さんが確認してその評価なら隠す必要ないわね...」
「だな...ん?ちょっとまて」
「ん?どうしたの慧」
「なんで顔隠してるやつの顔が分かったんだ?もしかしてお前...無理やり...」
「イヤイヤイヤ!別に無理やり剥がしたとかじゃないって。朝のジョギングで寄ったコンビニで偶然ね」
「マジか」
「ほら今、爆薬分隊とライオットブラッドのコラボステッカー出たじゃない?あれ見つけたから写真撮っていじり倒してやろうとメール送った瞬間に前に並んでた彼のスマホがちょうど鳴ってね?」
「朝のコンビニでメールを送信して受取先が同じコンビニにいる確率。サンラクも運がない...」
「本当、凄い確率」
「ぶっちゃけこの事件は神の天啓だと思ってさ。この好機を逃す手はない」
「で俺たちにこの話をしたってことは、何か策があるってことだよな?」
「ええ。だけど、まず2人にリアルサンラク君を見せるべきだと思うの。その策なんだけど、カッツォ君だけじゃパンチ不足で厳しいところなんだけど、夏目ちゃんがいるならほぼ確実にいけるわ。」
「私?」
そういって首を傾げながらも山盛りだったはずのフライドポテトがほとんど無くなりハッシュドポテトにケチャップをかける夏目。
自分に何をやらせようというのかと少し警戒しているが、正直サンラクの顔を見たい好奇心が勝っているように見える。そう永遠は感じ取った。
「瑠美ちゃんのお仕事が長引いた時にサンラク君が迎えに来るの知ってる?」
「そこに直接押しかけるのか?」
「流石にそれは迷惑よ」
「そこらへんは私も弁えてるよ。だから、もし?可愛い妹が近くにあるファストフードを食べたいと言ってきたらお兄様はどうなると思う?」
「あー?そういうこと?」
「???」
「ソユコト」
「?????」
「え?どういうこと?」
「彼には大きな炭水化物の罠にかかってもらいます」
「ちょっと慧?」
「問題はどう座らせるかだよな」
「そこを今から詰めようと思うの」
「あの...」
もう二人は作戦の要となった餌役の声は聞こえない。
この密会が行われていることを、標的の彼は知ることなどできない。
(必ず表舞台に引き摺り出してあげるから…待っててね楽郎君)
無視をされ続け仕方なく食事の続きをしようとした夏目の目に、いつもの悪魔的な笑みではない少女らしい柔らかな笑顔を浮かべる永遠が映った。