ここ数日、マスコミは大盛り上がりだった。
【天音永遠 プロゲーマーと密会か?】
なんてふざけた見出しから始まる新聞やニュース番組が乱立する。
当の本人達はこの地雷の上を器用にタップダンスやカウンターで避けていく。
そして避けた分の地雷の矛先は全て俺に向く。
「ダーー!畜生!俺顔隠してるのに世間様にモロバレじゃねぇか!」
瑠美はともかく、爆薬分隊のメンバーと知らない男性が共に行動してたことから【顔隠し】であることが考察されてしまっている。
この地獄を作り出した奴らには各々仕返しするとして、流石にあんまりすぎる。
今日も大学の友人達に詰められた。俺は嵌められたんだって。
そして、自分の奥底に生まれた新しい感情とも折り合いをつけていかなければならない。
「天音永遠か…」
あの密会の帰り道に感じたあの胸の高鳴りは多分、【恋】って物なんだろう。
生まれて初めてこの感情を知った。おかげ様で大学の課題やプロゲーマーのお仕事にも手がつかない。
所謂、恋煩いってやつなのだろう。
冬にあるGH:Cの世界大会に向けてモーションの研究をしなければいけないが、今はゲームに向ける熱量が無い。
「そういえばもうエナドリの在庫ないな。買いに行かないと」
そういって重たい足に電気信号を流す。だが、足に重りがついているかの如く動かない。まるで自分の足ではないように。
「あぁ。クソ。そんなに重症なのか俺は!」
そういってベットが軋む勢いで倒れ込む。
「俺は一体、どんな顔であいつを見れば良いんだよ...」
メールが届いていた。
カッツォ君曰く、最近のサンラク君は調子が良くないらしい。
なんでも、いつものキレッキレな動きが一切無いのだとか。
あれだけ大きく顔バレしてしまったのが不味かったのかも知れない。
カッツォ君も上の方から文句を言われてしまったようだ。
「けど、彼ならすぐ調子取り戻すでしょ」
そういった旨のメールを送信して休憩を終える。
そろそろ覚悟を決めなければ。
外道として彼に立ち塞がるのではなく、彼の横に立つために。
分かっている。一言で良いのだ。「デートしよう」と。その言葉を言えない自分に呆れてしまう。
「私ってやっぱり恋愛下手だなぁ…全然案が浮かばないや」
事務所の休憩室で休憩しながら、気になっていることについて思考を回す。
最近、鉛筆の動きが変だ。いや、昔から変ではあったが最近、サンラク周りのちょっかいが異常に増えはじめた。
「またなんか企んでるのか?」
自分がその企みに参加することが無いように祈ることしかできないが、今回の企みはそんなものではないと感じる。
「もっとド派手にやるはずなんだけどなぁ」
だってあの鉛筆戦士である。人が爆散する瞬間に「た〜まや~」と言えるド畜生である。刹那主義の享楽家ならば、[顔隠し=サンラク]という特ネタをもっと大きな特大花火にしてバラすだろう。
「何言ってるの慧?」
「あぁ、いやなんでもない」
「顔隠しと名前隠しでしょ?」
驚いた。メグにバレるほどに独り言で喋ってしまっていただろうか。
「あの2人のこと考えているとき、慧は凄い顔になるのよ。自覚ない?」
「まじ?」
初耳だった。確かに表情筋が悲鳴をあげていたかもしれない。
「ねぇ慧。もしかしてなんだけど」
「ん?」
「天音さん。多分。サンラク君に恋してるわよね」
「え?」
「少し前にね。彼女がサンラク君の話をしているときにね。態度に出てたのよ。」
「イヤイヤ、メグそれはないよ。だってあの鉛筆戦士だよ?どうやって華々しく散るかしか考えていない奴だよ?」
「そうね。けど私の勘が言ってるの。あの笑みはそんなんじゃないって」
そういって笑うメグ。
[メグの勘はいつも外れるよね]
なんて言いたいところだが、本当にその可能性があることも否定できない。
いったい、どこでそんなフラグが立ったのかよく分からないが、もし本当にそうであれば最高に面白いものが見れるだろう。
「なるほどねぇ。少し様子をみてみるか」
もし本当にそうなのであれば友人として、最大限の協力をしてやろう。そう考え、思考を切り替える。
「よし!メグ。休憩終了!もう10本先やろう」
「えぇ!」
そういって業務用のVRチェアに向かう。もし、サンラクの調子が悪いままだったら、冬にあるGH:Cの世界大会で好成績は残せないだろう。
「このままだと置いてくぞ。サンラク」