瑠美ちゃんに彼のスケジュールを調べてもらうと面白い仕事があることを見つけてくれた。
なんでも笹原エイトのレギュラー番組に爆薬分隊のメンバーとしてゲスト出演するらしい。
「日程は大丈夫かな?」
携帯端末を取り出す。先日、スケジュール調節をやらかしたマネージャーに確認を取ると問題ない模様。
「なら出るしかないよね」
笹原にサプライズゲストとしての出演が大丈夫か確認の連絡をする。
すると以外にもすぐ返信が返ってきた。
一切問題ないとの返答だった。寧ろ「絶対出て欲しい」とまで書かれている。
いくら大学の先輩だとしても職権濫用が過ぎている自覚はあり、NGと言われても仕方ないと思っていたのだが、彼女も自分のレギュラー番組を守るために必死なのだと改めて感じることが出来る返信であった。
「今度、私の番組の方で呼んであげようかな」
無事交渉は成立である。後はもう一つの許可が必要である。
私のブランドに傷がついてしまうかもしれない危険な切り札が一枚ある。これをきってしまえば、ティーンの憧れである【天音永遠】では無くなってしまうかもしれない。
だがそれはファンから押し付けられた偶像である。例え、それが私が芸能界で売れるために作った最初の嘘だったとしてもだ。
電話をかける。
「もしもし、天音です。ご無沙汰しています。お願いがあってお電話させていただきました」
「それでは最初のコーナー行ってみましょーう!」
【深淵!視聴者参加型質問回答!】
「」
「彗!?」
「初手から質問コーナーって珍しくない?」
「確かに自己紹介から始まると私思ってたわ」
「なんか近いな?天音さん」
「顔隠し君と私の仲じゃないかー!さんづけ禁止!」
「もうお酒とか入ってるんですの?」
「そんな訳ないでしょー?私はお仕事中は絶対飲みません!」
「あのー。司会の私を置いて絡まないでくれます?天音先輩?」
「あーごめんごめん」
「ごほん!それではルール説明をさせていただきます!」
私を除いた四名に視聴者の質問に回答出来るタブレットが配られます!そこで皆さんに回答していただき、雑談していただくほのぼの企画となっております!」
「ま…ともだ…と?」
「良かったわね彗」
「ほのぼの企画と深淵て両立できるのな」
「単に彗君をイジるためにつけたとかじゃないの?」
そんな言い合いをしているとタブレットが配られる。
「それではゲームスタート!」
質問:皆さんが出会ったきっかけを教えてください
「おいこれって…」
「あぁ…天音さん。あんた大丈夫か?」
「さん付け禁止!こんなこともあろうかとこっちの事務所とそっちの方にも確認取ってるから問題ないよ。だからメグちんありのまま書いて良いよ」
「公表するってことね。分かったわ」
「さぁ!すでに私たちが分からない会話が始まっております!いったい何のことでしょうか」
「全員で会ったきっかけってあれだよな?」
「いやー遂に話せるわけだ!今思い出しても良くやったよなー俺たち」
「ここで全員が回答し終わりました!おや?全回答一緒ですね。それでは見ていきましょう!解答オープン!」
慧 【GGC】
恵 【GGC】
顔隠し【俺の隣にいる奴と出たGGC】
永遠 【慧君がゴールドバーグに勝った時のGGC】
「皆さん今や伝説と語り継がれるエキシビジョンマッチに出場した選手ですもんねー。ですが天音さんもその時に出会ったとなると会場に居たということですか?」
「そりゃもういたよ。私抜きであの戦いは語れないぐらいに」
「ほぉ」
エイトが首を傾げながら慧に目で確認を取る。
「もう天音さん、いや天音が隠すつもりないから言っちゃいますけど名前隠しの正体は天音永遠です」
「エッ!」
スタジオの観衆がざわつく。
「遂にバラしちゃったねー。では!ご紹介預かりました、名前隠しこと天音永遠でーす!」
そりゃもうエイト氏は驚きすぎて固まってしまうのも無理はない。
あの悪逆非道の限りを尽くした名前隠しが天音永遠なのである。
明日のニュースTOPはこの話題で確定だろう。
「遂に身バレしちゃったし顔隠し君もいっとく?」
「なんで一杯いっとく?のノリでバラされかけてるの?俺」
「彼は本当にただの一般人なので皆さん気にしないでくださいねー」
珍しく慧からの援護射撃が来る。何が望みだ?
序盤から【名前隠し】の正体という特大ネタから始まったこの特番。
SNSの呟き量は過去一である。
そんな中、俺の正体もバラされたらたまったものではない。
「ちっ、ちなみに何故天音さんがあのエキシビジョンマッチに参加してたんですか?」
「あー元々、慧君と顔隠し君とは一緒にゲームをやるゲーム仲間だったんだよね。んで、急遽エキシビジョンマッチに出るはずだった爆薬分隊のチームメンバー2人が出れなくなったからその代わりに私と彼が頼まれたってわけ」
「ウンウン」
「なるほどー…元から仲が良かったんですね」
「ちなみにめぐちんとはそこで初めましてだったんだけどねー。隣のヴァカが顔合わせの時にガスマスクで顔隠したせいで、インパクト取られちゃったのよね」
「へぃへぃ俺がわるぅございました。けどなぁ!ただの一般人がゲームで知り合いと言えど芸能人×2と顔合わせするんだぞ⁉︎怖いに決まってるだろ」
「そんなこと考えてしまう顔隠し君かわいいねぇ」
「エイト氏に他の悪行全部送って公開処刑してもらうか」
「やってもいいけど君、全ての個人情報握られていること忘れてないかい?」
「クッ」
「凄いわね。いつもの天音さんになったわ」
「そりゃもう猫被らなくて良くなったわけで」
「ンーー?」
「イエナンデモナイデス」
「どんなに猫被ってても私は私だよ。それは変わらない。このカミングアウトでファンの子が減っちゃうのも仕方ない。けどこれが素の私なの。この私でも大丈夫って子に私は全力で応えます」
言いきってこちらに微笑む彼女を見て
「あぁ、本当に…」
好きになって良かったと心の底から思ったのだ。