浅野学秀の双子の妹がエンドのE組に入った話   作:あるふぁせんとーり

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本筋とは全く関係ないしキャラ崩壊もしてます
あと本編ではこの先それなりの意味を出していくつもりの転生ですが、こっちではそういうの無いです

本編でも空気ですけどね


Q(クエスト).1 志御とバグと魔王サマ

「は?追放?私が?」

志御は困惑した!

 

 法王(父親)からの命令に浅野志御は酷く困惑した。魔王に立ち向かう勇者に力を貸すという正義の女神「カラナ」を加護を受けた世界最大の教団「カラナ教」のトップである法王、浅野學峯の娘にして双子の兄にその騎士団である「聖騎士」の中でも選りすぐりの「五英傑」、そこにおいてなお最強と言われる浅野学秀を持つ彼女は、それなりに不真面目であるものの兄と同じように聖騎士業務に勤しんでいた。

 そんな中で突然父から直々に言い渡された追放。彼女は「どういうことだよ?」と法王に尋ねかける。法王は人類の頂点に相応しい圧倒的なオーラ、それこそオーラの密度とかが凄すぎて椅子に座っても浮いてしまうくらいの感じで大仰な法王専用席に座りながら口を開いた。

 

「そうだね。逆に聞くけれど何か心当たりはあるかい、志御さん?」

「……?牢屋の盗賊に1日中話しかけて不眠症にして遊んだとか……?」

志御は罪を白状した!

「いいや、違う」

「じゃあ兄さんの選んだ入浴剤こっそりすり替えてめっちゃ悲しい顔にさせたとか……?」

志御はさらに罪を白状した!

「いいや、それも違う」

「実は洗濯物洗う時こっそり父さんと分けてるとか……?」

志御はもっと罪を白状した!

「いいや、それも違……。っていうかそれ初めて聞いたよ。父さん悲しい」

 

 「ふう」と小さくため息を吐くと同時に、法王は切り出した。

 

「残念ながら、志御さん。君は「バグ」だ」

「……は?」

志御は困惑した!

「そうであると分かった以上、娘といえど放っておくことは出来ないからね」

 

 バグ。それは神の想定外。極稀に発生するそれは「秩序を乱す歪んだ力」としてこの世界、特にカラナ教においてはとても忌み嫌われる力だった。それをよりにもよって法王の娘が持ってしまった、そんなことが表沙汰になれば右へ左への大騒ぎになりかねない。だが納得の行かない志御は「意味分かんねえ」と不機嫌そうな顔をする。

 

「っていうか私のどれがバグなんだよ?至って正常だろうが」

志御は抗議した!

「それだ」

 

 法王は志御が掲げている「『志御は抗議した!』」と書かれたメッセージウィンドウを指差した。

 

「は?何言ってんの?」

志御は呆れている!

「だからそれはバグなんだ、志御さん」

「いや、これくらい誰だって出来るだろ」

志御は舐めている!

「では聞こう。君は一体どうやってそのメッセージウィンドウを出してるんだい?」

「そりゃあその……。……あー……バグだなこれ……」

志御は観念した!

 

 かくして「メッセージウィンドウに干渉するバグ」を持っていることが判明してしまった志御は法王の計らいによってそのことを隠されたまま、クヌギガオカ魔法学校の落ちこぼれクラス、E組に編入することになったのだった。

 

志御の冒険が始まった!

 

◇◇◇

 

 E組は魔法が上手く使えない落ちこぼれが集められたクラス。それ故に、過去に何人もの勇者を輩出した超名門校、クヌギガオカ魔法学校で彼等だけは尋常ではない差別を受けていた。校舎はE組だけ山奥で、本校舎の最新鋭の設備などはまともに使わせてもらえず、本校舎の生徒達からは日々嘲笑の嵐。モチベーションが下がり、モチベーションが下がるため結果も出せず、また差別されモチベーションが下がる。志御はそんな負のループを目の当たりにしていた。

 だが、そんなある日のこと。E組に突然の来客が現れた。

 

「E組の諸君!席に着いてくれ」

「え?!」

「うそ?!」

「私あの人見たことあるー!」

E組は驚いている!

 

 何人かの部下を引き連れてそこに姿を現したのは、大陸最強の剣豪と謳われる宮廷騎士長、烏間惟臣。なんでこんなすごい人が、と困惑するE組へ向けて烏間は「今日は君達にお願いがあって来た」と告げる。そしてその後ろを何か大きい人影が入ってきた。

 

「これは人類の敵、魔王だ」

「皆さんはじめまして」

「……」

「……」

「……?」

「……?!」

「……?!!!」

「……ま、魔王だー?!!!」

E組はもっと驚いている!

 

 事態に頭が追いつかず、驚愕に驚愕を重ねる生徒達。しかしにわかに冷静になった志御が「待てよ」と口を開き「『志御は訝しんでいる!』」とメッセージウィンドウを掲げた。

 

「そもそも魔王ってもっと強そうな奴だろ。あいつパッと見ならデカ目の序盤モンスだぜ?」

「確かに言われてみれば……」

「なんかショボいよな……」

 

 そして少しの落ち着きを取り戻した生徒達はもう一度目の前のモンスターに目を遣った。

 黄色くて丸い頭、わざわざ「魔」と書かれたショボい角のついた角帽、アカデミックドレス、太くてヌメヌメしていてウネウネしている沢山の親しみやすい感じのポップな触手。見れば見るほど魔王感のないその見た目に生徒達は「ほんとに魔王か?」と首を傾げるが、烏間は「見た目で侮るな」と釘を刺す。

 

「コイツは今までの魔王でも最強クラスだ。なんといってもダントツで「すばやい」」

「魔王のくせに?!」

「ラスボスは鈍足重戦車って相場が決まってるじゃない?!」

「ああ、よく見ておけ」

 

 そう言って烏間は腰に提げたはがねの剣を抜くと隣の魔王に見事な太刀筋で斬り掛かり、そして目にも止まらぬ連撃を放つ。しかし魔王はその全てを難なく避けきり、呼吸の一つも乱さない。それどころか顔に緑色のしましまを浮かべ、なんとも人類を舐め腐ったかのようにニヤニヤと笑っている始末だった。

 

「すげえ……!全部避けきってる……!」

「それどころじゃない。見ろ、コイツの手によってはがねの剣が鍛え直されて攻撃力が5も上がっている」

「相手舐めすぎだろ……」

「いや、コイツはこの程度に収まらない。勇者が入ろうとしているダンジョンはすぐにマッピングと攻略情報まとめを作り、村人の頼みは勝手にバンバン進め、挙句の果てに世界中に散らばる魔王弱体化の鍵となるオーブでさえ見つけ次第綺麗に磨いて勇者の枕元へ添えておく始末だ」

志御は混乱している!

 

 「それ本当に人類の敵か?!」とE組が総ツッコミを入れる中で烏間は本題を切り出した。

 

「そこで君達へ頼みたい仕事がある。この魔王を君達に殺してほしい!」

「……は?!」

「いや無理ですって!」

「僕らスライムに唾吐かれるレベルですよ?!」

「どうやって騎士団長が倒せない相手を倒すんだっての。冗談過ぎるぜ」

志御は決めつけている!

 

 無理に決まってんだろと生徒達が声を上げる中で、烏間は「調査結果」と書かれた資料を見ながら口を開く。

 

「結論から言おう。コイツは君達でなければ倒せない。……というのも、こいつのこの素早さはおそらく「バグ」だ」

「バグ?」

「うわホントだ」

魔王のステータス:すばやさ 99999

「マジじゃんはみ出してる!」

「ああ。そしてその「バグ」を倒すのは同じくバグを持つ君達にしか出来ない仕事だ」

「はあ?!俺達がバグ?!」

「はい。君達は唯一魔王()を倒せるかもしれない、落ちこぼれなんかじゃない特別な人間なんです。……例えば磯貝君、君が装備を前半分だけ買えるのもバグです」

「ええっ?!俺が貧乏だからじゃなくて?!」

「はい。それはどんな大金持ちにも許されない君だけの特権です」

「いや普通に買いたいんだけど?!」

「そうですね、あと寺坂君の魔法が汁状で出たり菅谷君の持ち物だけやたら写実的になったり中村さんがやたら他人と入れ替わるのもバグです」

「そうだったの?!」

「じゃあ私の胸がやたら小さいのも……?」

「拾ったエロ本が捨てられないのも……!」

「面白い連載に限って休載してるのも……?!」

「いえそれは知りません」

 

 「という訳で」と話題を戻し、魔王は国との契約書を取り出した。生徒に一切の危害を加えないのならE組を育てても良い、とそこには書いてあった。「おいおい死にたがりかよ」と志御は頬杖を突きながら笑った。左手で掲げたメッセージウィンドウには「『理由を話せ!』」と書かれていて、早速応用をキメているのが分かる。

 

「理由……そんなものは簡単です。……私は寂しいんです。だから圧倒的な力を持つが故に誰とも対等になれない孤独、それを癒やすために対等にやれる相手を育ててしまおうという訳です」

 

 「まあ、皆さんに出来るかは分かりませんがねぇ」と魔王はヌルフフフと笑う。人間というのは単純なもので、そう言われると反骨精神が燃えるもの。「やってくれるか?」と首を傾げた烏間に皆力強く答える。

 かくして落ちこぼれ達のバグまみれの魔王討伐が幕を開けたのだった。




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