浅野学秀の双子の妹がエンドのE組に入った話 作:あるふぁせんとーり
「おい、なにやってんだよお前等」
「あ、志御さん」
「『興味があります』」と恐ろしくバグへの適応が早い志御はメッセージウィンドウで意思表示しながら木陰に身を隠している渚と杉野に声を掛けた。しーっ、と杉野は口の前に人差し指を立てた。
「ほら、魔王がなんかコソコソやってんだけどよく見えなくてさ」
「えっと……あれは……」
「『志御は観察している!』」と手のひらサイズに縮小したメッセージウィンドウと共に彼女はじっと目を凝らす。「あー、なるほどな」と志御は苦笑いしながら呟いた。
「どうだ?棚とか壺壊しまくってんのは分かんだけど……」
「いや、棚とか壺壊しまくってるだけだな」
「?!」
「ほら、アレだ。給料日前だし
「いや勇者かよ?!」
「っていうか魔王なのに給料で暮らしてるんだ……」
「ま、無駄っぽいけどな」
「志御さんめちゃめちゃバグ使いこなしてんのな……」
「まだ出せるぜ?」と志御はどこからか「『志御は調子に乗っている!』」というメッセージウィンドウを量産している。そんな中で「二人共」と渚が声を掛けた。
「殺せんせー、何か見つけたみたいだよ」
「……?なんだあれ?」
「こん棒、だな。多分。何であんなに喜んでんだ?」
まるで宝物でも見つけたかのようにこん棒を抱きかかえる魔王。そんなもんじゃないだろそれ、と志御は首を傾げていたが、すぐにその様子がおかしいことに気がついた。
「おお……なんと美味しそうなチキンでしょうか……!」
「……チキン?」
「ありがたやありがたや!神様感謝します!」
「おいこん棒食べ出したぞ?!」
「嘘だろ化け物じゃんか?!」
「やっぱり魔王ヤバい!」
そして給料日前の魔王はよっぽど空腹だったらしく、その後も皮の盾を煮て食おうとしたり勝手にE組で飼っている魔物の餌を食べたりとめちゃめちゃしていた殺せんせー。そんな中で、多少の軽蔑も混ざりながら今日の授業が幕を開けた。
「さて、今日は勇者について話していこうと思います」
「魔王が?」
「はい。魔王がです」
なんてシュールな光景なんだろう、と生徒達の考えが一致する中、殺せんせーはそんなことはお構いなしに話していく。
「結論から言ってしまえば、今のところ皆さんの中に勇者たる者はいません」
「……あ、待てよ!磯貝とかすげー勇者っぽいじゃん!」
前原が抗議すると、魔王はヌルフフフと笑った。
「確かに磯貝君は皆に慕われていて素晴らしいリーダーシップを持っています。この中ではかなり勇者感のある生徒でしょう」
「なら……!」
「ですが後ろから見ると最も勇者感がないのもまた彼です」
「そうだった!」
槍玉に上げられた磯貝は「半分バグ」。装備が全て前半分だけになってしまうというかわいそうなバグの持ち主である。そんな後ろから見ればパン一の彼は「もし俺が勇者になったら伝説の鎧とか半分になっちゃって後の勇者が困っちゃうだろ」と彼は笑う。見知らぬ誰かの心配とは、精神性は立派な勇者であった。
「まあ磯貝が無理なら皆無理か……」
「強いて言うなら先生でしょうか」
「魔王が一番遠いんだよ!」
「……でも、E組に勇者がいないなら魔王を倒せなくない?」
「いや、1つ方法がある」
教室に入ってきた烏間が答えた。
「方法?」
「ああ。勇者をE組に転入させれば良い」
「は?それアリかよ」
「この際魔王を倒せるなら何でも良い」
「ヌルフフフ、先生としても強い生徒は大歓迎ですねぇ」
「なら決まりだな」
「でも、誰を引き入れるんですか?」と渚は烏間に問い掛ける。「君達でも「三戦士」の話を聞いたことくらいはあるだろう」と彼は答えた。
「三戦士……!この大陸でも屈指の実力を誇る三人か……!」
「ああ、「赤い悪魔」カルマに」
「「進化の魔術師」リツ」
「「銀の狂戦士」イトナ」
「いやあいつバグ使いこなすの早すぎだろ?!っていうかなんで皆北の洞窟なんだよ?!」
「メッセージウィンドウでディスんな!」
寺坂をからかって遊ぶ志御を尻目に、「ともかく」と烏間は続けた。
「彼等の内、一人でもE組に加わってもらえればコイツを討伐できる確率はぐっと高まる!」
「……あ、でもバグがないと魔王に攻撃が効かないんじゃ?」
「カルマ君はバグ持ちだよ」
「マジか!」
「はっ、案外都合よく出来てるもんだな」
答えた渚に視線が集まる。カルマの幼馴染である彼の答えに「それはいいですねぇ」と魔王は笑った。
「では、皆さん!カルマ君のスカウトと参りましょう!」
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