浅野学秀の双子の妹がエンドのE組に入った話 作:あるふぁせんとーり
「はい皆さん、一人一冊ですよ」
「んだよこれ」
北の方の洞窟、「カルマの洞窟」に訪れたE組一行。そして到着するなり何か分厚い辞書のようなものを生徒達に回す魔王。「なにこれ?」と首を傾げながら重いそれを回す生徒に「ヌルフフフ」と魔王は笑った。
「攻略本です」
「攻略本?!」
「えカルマの洞窟に攻略本あるの?!」
「いえ、無かったので先生が作りました」
「???」
そして「なんせ徹夜で作りましたから」と魔王は随分と楽しそうにこだわりポイントやらなんやらについて語り始めた。モンスターの出現確率、倒し方、最適な回り方、美味しい報酬、回復ポイントetc……どうやら魔王は守るばかりで攻めるのは初めてだとウッキウキだったらしい。「『まとめろ!』」と志御は一蹴した。
「ああ、そんなメッセージウィンドウ掲げないで下さい志御さん!袋とじにはちょっとえっちな女モンスターの情報もあるんですから!」
「なんでそれで釣れると思ったんだよ」
「おい、聞いたか?」
「ちょっとえっちなモンスター、だと……?!」
「俄然燃えてきた……!」
メッセージウィンドウ片手に攻略本をパラパラと捲る志御。そしてダンジョンのボスのページ、すなわちカルマのページを見つけると「なんだ、良いのもあんじゃん」と呟いた。そして目に付く彼のバグ「うんのよさ異常」。どういうことだと彼女は首を傾げ、そしてカルマの幼馴染だという渚に声を掛けた。
「なあ、渚。カルマのバグってどういうことだ?下がんの?」
「そうそう。例えばケンカで勝って、負けた相手を馬鹿にしたりすると運がすごく悪くなって頭にタライが落ちてきたり、それでも見下し続けると壁が倒れてきてカルマ君を突き破ったりするんだ」
「ヤバいなそれ」
「うん。……にしても、バグってそんなに使いこなせるんだね」
「慣れだな慣れ」
「ヌルフフフ、その通りです志御さん。バグは使い道次第で強力な武器になります。きっと彼も人をナメる癖さえ直せば素晴らしい戦士になりますよ」
そのように緑のしましま、すなわち舐めきった顔でいう魔王。「『お前が言うな!』」と志御が掲げるメッセージウィンドウ。「鍛えるのが楽しみですねぇ」と魔王は悪い笑顔でニヤリとした。
◇◇◇
「にしてもトラップの量ヤバいな……」
「ホント、噂以上のドSって感じだわ……」
カルマの洞窟に足を踏み入れた一行を無数の罠が足止めする。振り子みたいな鎌、飛んでくる矢、火を吐くオブジェ、落とし穴etc……一発でも食らったらその場で脱落してしまいそうな罠の数々に、E組は気を張り詰めながら一つ一つをゆっくりと越えていく。ただ一人、魔王を除いては。
「ヌルフフフ、狙いは悪くないですがいかんせんどれも遅すぎますねぇ」
「そりゃ殺せんせー相手ならそうだろ」
そして魔王は避けるだけでは飽き足らず、勝手にオブジェを弄って火力を上げたり矢に毒を塗ったりしてカルマの洞窟をお手入れしている始末。「舐めてんのはどっちだよ」と志御は鼻で笑った。
「っていうかなんで志御さんは殺せんせーの方ついてってるの?!危ないって!」
「まあ見とけ」
そう言って志御は振り子鎌の前に立つ。そしてその刃が身体を両断しようと迫るが、彼女に近づいたタイミングでピタッと止まった。「?!」とクラスメイトが目を見張る。そして志御はドヤ顔でメッセージウィンドウを掲げた。
「くっそあいつメッセージウィンドウで当たったことにしてやがる!」
「いや使いこなしすぎじゃない?!」
「……あ、っていうかこうすればいいのか」
どうやら一度引っかかると止まる親切設計らしく、志御のバグによって台無しにされたカルマの洞窟。皆揃って無事に進んでいくE組一行であったが、罠地帯を抜けて今度はモンスターの群れに遭遇した。
「おい、あれモンスターじゃないか?!」
「えっちな女モンスターか?!」
「残念だな岡島」
「笑顔キノコって?」
「え待って食材なのこいつら?!」
「んなわけな……うわ食材じゃんこいつら」
「志御さんも把握してないんだ?!」
「待って、続き出す」
「睡眠の質改善できるの?!」
「すげえな甘い息!」
そして彼等はE組を見つけると満面の笑みを浮かべた。そう、例えるのであれば居酒屋で生ビールが来たおじさんとか、たまたま巨乳の会社の後輩と二人きりで外回りすることになったおじさんとか、休日のゴルフでバーディーが決まったおじさんみたいな、そんな感じの笑顔。要はキモい。
「ヌルフフフ、恐れる必要はありませんよ皆さん。弱点はこのカサのてっぺんです」
「?!」
「俺等が優勢になったっぽいぞ!」
そうしてぞろぞろと出てきた笑顔キノコの群れにE組が攻撃しようとしたその瞬間、一体の笑顔キノコが魔王の腕を切り落とした。「『?!』」とE組と、そして魔王に衝撃が走る。「まさか……!」と渚は口を開いた。
「……はじめましてだねー」
「赤い悪魔……!」
「カルマ君……!」
そして彼はポッケに手を突っ込んだまま僅かに固まった魔王の方へ歩いていく。E組は、初めて魔王にダメージを与えた彼に対して戦慄を覚えていた。
「聞いたよ、魔王が魔法学校の先生やってるんだってね。殺せないから「殺せんせー」って聞いたんだけど……あッれェ、せんせーもしかしてチョロいひと?」
「人じゃねえだろまず」
そしてその瞬間、カルマの頭にどこからともなくタライが振ってきた。二人して馬鹿にしてるのに、カルマにだけ。さらにカルマにぶつかったタライは彼が掛けていた落とし穴のスイッチに引っかかる。その結果。
「マジで運悪っ?!」
「うんのよさ大事過ぎだろ!」
「いやー、うっかりうっかり」
しかしすぐさま落とし穴から復帰したカルマは、E組に混ざった渚の姿に気がついて声を掛けた。「いやー、魔王チョロすぎてさ」なんて馬鹿にしながらのせいでまたタライが何個か落ちてきていた。
「ひっさしぶりだねー、渚君。魔王なんて連れてきて何の用さ?」
「……実は、カルマ君に僕達の仲間になってほしいんだ!魔王を倒すために!カルマ君ならきっと……」
「ふーん……」
「でもさ」とカルマは口を開き、手元の「超すごいトラップ」と書かれたボタンを押した。「俺一人でも殺せるんじゃない?」と。仕込んでいた網が魔王を捕らえ、そして「もらった!」とカルマは斬りかかった。
「はっ、馬鹿じゃん」
「なっ……?!じゃああいつは……」
「ヌルフフフ、遅いですよカルマ君」
「?!」
そこにいるはずなのに、どこかに消えていた魔王。カルマが振り返ると、そこにはバスタオル一枚でドライヤーをかける魔王の姿があった「髪ないだろ」と志御がツッコんだ。
「では説明してあげましょう。志御さんお願いします」
「しゃーねえな」
「……というわけです。ありがとうございました志御さん」
「クソッ、こうなったら……!」
そして再びバスタオル姿の魔王にナイフで斬りかかるカルマ。だが彼は振りかぶった瞬間に服を脱がされ、素早さ99999で運ばれ、気がつけば魔王とともに回復の泉に浸かっていた。
「カルマ君、君は強い」
「?!」
「さらには機転も利くし、頭もいい」
「?!」
急いで追いついてきた志御がメッセージウィンドウを掲げる。そしてそれについてきたE組も魔王によるスカウト活動の行く末を固唾を呑んで見守っていた。
「チッ!」
「?!」
「でも君はまだまだ強くなれる。勇者は皆で強くなるものなのです。君のさっきの作戦はとても素晴らしかった。あれを、今度はE組でやりませんか?」
「ふーん、そっか。魔王直々に……悪くないね」
そしてカルマはタオルをアレが見えないように腰に巻くと、「少し考えとくよ」と悪くなさ気な返事をした。
「だから取り敢えず、俺の服返してくれない?」
「良いですよ、ほら」
「そうそう、これこ……は?!」
いつのまにかクヌギガオカ魔法学校の制服を着せられていたカルマ。魔王は姿見鏡をその場に立てて「よく似合ってるわ、かーくん……」と母親面で涙を拭っている。「入学式かよ」と志御はニヤケて笑い「『カルマは喜んでいる!』」と勝手にメッセージウィンドウを掲げた。
「わーい!」
「赤い悪魔だ!」
「ようこそE組へ!」
「志御!こっちも頼む!」
「任せろ」
「いやだから何なんだよそのメッセージウィンドウ?!」
そしてE組の生徒に連れ去られ、勝手に胴上げされるカルマ。彼の嘆きとともに、カルマの洞窟は攻略成功と相成った。
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