浅野学秀の双子の妹がエンドのE組に入った話   作:あるふぁせんとーり

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第27話 兄弟の時間

「兄弟?!」

「兄弟?!」

「このタコと?!」

「どう見ても人間のこいつが?!」

「兄弟?!?!」

「兄弟。兄弟とは、父と母を同じくする男の子供達。そのうち年齢が上の方を「兄」と呼び、下の方を「弟」と呼ぶ。また父が異なる場合は「異父兄弟」、母が異なる場合は「異母兄弟」と……」

「うわ志御さんが壊れた?!」

「あいつバグるとああなるの?!」

 

 目の前で起きたあり得ない発言に志御は無数の?を浮かべながらも思わず辞書を諳んじて兄弟の定義を再確認した後に「あり得ねえだろ」と髪を掻き上げた。教室中が大体そんな雰囲気になる中で、イトナは殺せんせーに宣戦布告する。

 

「兄弟同士だ、小細工はいらないだろ?兄さん。放課後、舞台はこの教室で俺と勝負しろ。お前を倒して、俺は俺の強さを証明する」

「……ふむ」

「今日がお前の最後の授業だ、殺せんせー。別れの言葉でも考えておくんだな」

 

 そう言い残して先程ブチ抜いた壁から教室を去っていくイトナ。そして彼の姿が見えなくなると同時に殺せんせーを質問の嵐が襲った。

 

「あれと兄弟ってどういうこと殺せんせー?!」

「そ、それは……」

「いやいやいや明らかにおかしいでしょ!!」

「そもそも種族から違うだろ種族から!!」

「だから先生全く心当たりがないんです!」

「嘘つけ!!」

「あんなにあっちは知ってそうだったろ!!」

「それでもです!そもそも生まれも育ちも一人っ子ですし!」

「信じられるか!!」

「信じて下さい!それどころか両親に弟をねだったら食卓が気まずくなったんですから!」

「両親がいるとかさえ怪しいんだよ!!」

 

 そしてそのまま質問攻めになりホームルームの時間が溶けていく。十何分くらいしてようやく落ち着いたらしい志御は「しゃあねえな」と頭を抑えて席を立ち、自らのリュックを漁った。

 

「どうしたのさ志御さん」

「どうも何も、そこ直さないとだろ」

 

 そう言ってイトナが突き破った壁を指差す志御。リュックから出てきたのは工具一式。放置されていた板材なんかでトンテンカンカンと壁を修復していく志御に「器用万能ってやつか」とカルマは頬杖を突いた。

 

◇◇◇

 

 教員室。「しばらくはイトナを見守る」と言っていたシロはその一角に座ってジャンプコミックスを読んでいた。イリーナも少し気まずい雰囲気の中で殺せんせー、そして烏間を誘惑するためのファッション雑誌を読んでいる。そして、戻って来た烏間に気が付くとシロは口を開いた。

 

「いやあ、突然すいませんね烏間先生。なにせあの子は機密中の機密事項、現場のあなたには伝えられていなくても致し方のないことかと」

「いえ。……ですが、先程の話については?」

「イトナと殺せんせーの関係ですか。……ええ、私が保証します。あの子は確かに殺せんせーの「弟」だ。放課後には誰もがそれを理解しますよ」

 

◇◇◇

 

「くっそ、直したのにこいつまたブチ抜きやがった……!」

「徒労だったね、志御さん……」

「まだだ、ここの強度計算を……」

「この箇所の改善で約7%の強度改善が見られます」

「了解」

「……やっぱさ」

「うん、志御さんも案外変な子だよね」

 

 昼休み。再び貫かれた壁を背に、建築関連の資料やE組の旧校舎の解析を律に任せながらノートに計算式を奔らせる志御。そんな彼女に僅かに数奇や哀れみの目が向けられるも、やはり話題の大半は彼女の隣。山盛りの菓子を口に運ぶイトナがその中心であった。

 

「めちゃめちゃ甘いモン食ってんなあいつ……」

「ああ、甘党なところは殺せんせーとおんなじだ。表情も読みにくい」

「だな、本当に弟かもしれん」

 

 弁当を食べながらイトナと殺せんせーを比較する生徒達。確かに考えてみれば見た目以外の共通点はそれなりにある。「ま、金はあいつの方があるっぽいな」という誰かの発言を聞いて、殺せんせーは少しムッとした。

 

「兄弟疑惑で皆さんやたらと彼と私を比較してます。なんだかむずむずしますねぇ……ですが、そんな時こそ買ってきたグラビアです。あの見事なおっぱいを眺めて大人の気分転換と参りましょう」

「ここ学校だぞ殺せんせー」

「いや、志御!それより……!」

 

 磯貝がイトナを指差すと、彼女は左に振り向き、そしてにわかに驚愕した。イトナが、殺せんせーと全く同じグラビア雑誌を開いていたのだ。「いやなんで買えてんだよ」と目を見張りながらも志御はツッコんだ。

 

「くっ、これはマジでマジかもしんねえぞ……!」

「そ、そうかな?岡島君」

「ああ、当たり前だ!!巨乳好きは皆兄弟だからな!!」

「3人目なの岡島君?!」

 

 僅かながらも着実に深まっていく兄弟疑惑。律に尋ねても何の情報も得られない現状に、「あー、なんか面倒なことになる気がすんなぁ」と志御はノコギリで板材を切り分けながら呟いた。

 

◇◇◇

 

 放課後。動かした机がまるでリングのように殺せんせーとイトナを囲み、そしてその外では生徒達やシロ、烏間やイリーナが観客として見守っている。壁をまたなんとか修復し終えて少し満足気な志御を含めた何人かの生徒は、そんなイトナによる「暗殺」の中でも隙を突いて自分が殺してやろうとナイフを隠し持っていた。

 

「っていうかこれ、暗殺っていうよりも……」

「……ああ、「試合」だ」

「こんな機会も中々ないし、普通の暗殺は殺せんせーも飽きてるでしょう。1つルールを決めないかい?」

「ルール、ですか」

「ああ。「リングの外に足がついたらその場で死刑」、どうだろう?」

「なんだそりゃ、別に守る必要なんて……」

「あるよ」

 

 「あいつは絶対に守る」、そうカルマが答えた。隣ので顎を手で抑え、そしてもう片手で律による多角解析のためにスマホを構えた志御は「そういうことか」と続けて呟く。

 

「私等の前で決めたルールを破るってことは、「生徒」の前で「先生」が約束を破るってことだ。殺せんせーがそんな生徒からの信用を落とすようなマネするはずがねえだろ」

「そういうことか……!」

「……あのシロってやつ、ちゃんと殺せんせーの扱いを理解してる」

 

 そして殺せんせーは「観客への危害も禁止にして下さい」と付け足し、それがシロ、イトナに承諾されると満を持して「受けて立ちます」と答える。そしてシロは審判のような佇まいで腕をおもむろに上げる。

 

「……暗殺、開始!」

 

 そして、その腕が振り下ろされたその瞬間、一つの風切り音とともに殺せんせーの左触手は斬り落とされていた。

 

「……」

「……まさか」

「……マジ?」

 

 真っ先に気がついたのは、斬り落とされた当事者である殺せんせー。次に律が、そして志御が。そこから一瞬遅れて、クラス中が。だが、その誰もの視線がただ一点に注がれた。斬り落とされた触手ではなく、それを斬り落としたものに。

 

「……嘘だろ、なんであいつにあるんだよ……「触手」が!!」

「……そらそうだ、雨でも濡れるはずない。頭に触手生えてんなら」

「殺せんせーと兄弟って……そういうことかよ」

「解析結果出ました。殺せんせーと同型の確率96%です」

 

 殺せんせーは、静かにうつむいていた。だが、リングの外の生徒からは、その丸くて黄色い頭の後ろから、徐々に頭に青筋が奔っていく様子が見えた。

 

「……こだ」

「先生……」

「どこで触手(それ)を手に入れたッ!!それをッ!!どこでッ!!」

「君に言う必要はあるかい?殺せんせー。もう十分理解できただろう。どれだけ見た目も、育ちも、生まれも違っていても、イトナと君は兄弟なんだ。……それとも、何か嫌なことでも思い出したのかい?」

「……どうやら、あなたにも話を聞く必要がありそうだ」

 

 そう言って殺せんせーは触手を再生する。だが、「残念だな、君に話す機会はなさそうだ」とシロはそれを嘲笑い、そして白装束の袖から何かライトのような機械を取り出した。

 

「君はここで死ぬからね」

「……っ?!」

 

 そしてそこから光線が発射されると、殺せんせーの身体がピタッと固まった。ダイラタンシー現象みたいなものだ、とシロは説明した。その圧力光線を照射すると、殺せんせーの全身が一瞬硬直する、と。

 

「これで分かったかい?全部分かっているんだ。君の弱点はね」

「死ね、兄さん」

 

 そして殺せんせーを殺さんと、イトナの触手が猛撃した。




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